ブルーマン、ダウンサイジングで臨場感アップに成功

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 11月11日、かつて東京でも公演していたことから日本でも知られるコミカルなショー「ブルーマン・グループ」が、10年ぶりに、”ラスベガスでの故郷” ともいえるルクソール・ホテルに帰ってきた。
 といっても過去10年間、ツアーのチームによる公演のように他の都市を転々としていたわけではない。15年前の 2000年3月、このホテルのシアターでラスベガス・デビューを果たしたあと、2005年にベネチアン・ホテルに移籍。さらに 2012年、モンテカルロ・ホテルの元ランスバートン・シアターに会場を移したのち(マジシャン、ランスバートンのショーは 2010年に終演)、このたび古巣のルクソールに戻ってきた。

Blue Man  これまでの移籍の理由は営業的な部分にあったようだが、今回はそうではない。会場が消滅してしまうという物理的な理由だ。モンテカルロのシアターが、5000席規模のコンサートホールに建て替えられることになり、やむを得ず出ることになったというわけだ。
 気の毒な理由ではあるが、今回の移動では、もっと気の毒なショーがある。ルクソールから追い出される形となってしまった「ジャバウォッキーズ」(JABBAWOCKEEZ、写真下)だ。つまり、ブルーマンは、これまでジャバウォッキーズが使っていたルクソールのシアターに引っ越したのである。

JABBAWOCKEEZ  その程度の連鎖的な移動はよくありそうな話ではあるが、ジャバウォッキーズがブルーマンに追い出されたのは今回が初めてではない。
 なんと、ブルーマンが 2012年にベネチアンからモンテカルロに移動した際も、それまでモンテカルロで公演していたのはジャバウォッキーズだった。つまりブルーマンはジャバウォッキーズを2度連続で追い出して公演場所を確保したことになる。
 といっても追い出されたジャバウォッキーズの新たな移転先が格上の場所であれば「ご栄転」といえなくもないわけだが、そうではないから気の毒だ。
 移転先は MGMグランド・ホテルなのでホテルの格としては申しぶんないが、なんと会場はわずか 350席ほどのミニ劇場。今までのルクソールの劇場が 800席であったことを考えると栄転どころか左遷ということになる。

Blue Man  ではブルーマンにとってのこの 800席の劇場はどうかというと、これまた規模的にはかなりの格下で、とても栄転とはいえない。
 じつはこの会場は、2000年にベガス・デビューを果たした際のルクソールのメインのシアターではなく、ピラミッド館の2階のアトラクション・フロアにある中規模な施設だ。
 ちなみにメインのシアターは現在シルク・ドゥ・ソレイユがクリス・エンジェルのショーとして使っている。さすがにそれを追い出すことはできず、したがって、冒頭で「古巣に戻ってきた」と書いたばかりだが、それはホテルの話であって会場のことではない。
 そしてそのメインのシアターも含めて、これまでの3ヶ所の会場はどれも 1500席規模の大型施設だったことを考えると、今回の移動により会場サイズは大幅に縮小したことになる。今どきの言葉でいうならば、大胆なダウンサイジングだ。

 さて会場の規模など、どうでもいいことばかりを長々と書いてきたが、そのようなわけで、今回の移動はダウンサイジングという意味で過去2回の移動とは趣を大きく異にしており、その部分に注目する必要がある。
 一般的に会場規模の縮小は興行規模の縮小でもあり、不人気、格下げ、ジリ貧といったネガティブなイメージが付きまとうが、今回の場合、決してそうではない。
 そもそもこのブルーマンのルーツはニューヨークのオフ・ブロードウェイなので 500席以下の劇場での公演が本来の姿。そういう意味では格下げなどではなく、むしろ改善や原点回帰と考えるべきだろう。
 実際に現場での臨場感などは大幅にアップしており、地元メディアなどの評判も上々だ。会場が大きくないため一番後方の席からでもブルーマンの顔の表情までよく見え、また満席になりやすく空席が目立たないことから会場内の雰囲気もよい。
 ちなみに移籍後はチケット完売状態が続いているという。今までの3ヶ所の会場におけるブルーマンは座席数が多すぎ空席が目立つことが少なくなかったので、今回の移籍は大幅な改善といってよいのではないか。

Blue Man  演目の内容にも改善が見られる。ネタバレになってしまうので新しい演目の具体的な部分にまではあえてふれないが、モンテカルロ時代のコンセプトであった「ボール」に関する出し物は完全になくなっており、かなりの部分が刷新された。
 もちろんブルーマンの代表演目とされるパイプをつなぎ合わせた楽器による演奏や、絵の具が飛び散る打楽器など、いわゆるお家芸的な出し物はほぼ今までどおりの形で引き継がれており、その部分の消滅を心配する必要はない。
 なお、このショーのクライマックスともいえるラストシーンの大騒動は、会場の天井が低くなったぶんだけ、演出に多少の変化は見られるものの、基本的には従来通りの雰囲気を楽しめると考えてよいだろう。

Blue Man  良いことばかり書いてきたので、気になる部分も書いておくと、会場の形があまりよくない。奥行きのわりに左右の幅が広すぎる。最後部でもステージから遠くないことは歓迎できるが、左右の端の席からの視界は劣悪だ。したがってチケットを買う際はステージからの距離よりも、中心からの左右のズレを気にしたほうがよい。
 なお、最前列から3列目付近までは演出で使う塗料などが飛んで来ることも。ポンチョのような雨ガッパを渡されるが、衣服が汚れる可能性があるので、できれば避けたい。
 フロアの傾斜が弱いため、前の人の頭がじゃまになりやすい部分も気になるところだ。座高が低い人はタオルなどを椅子に敷くとよいかもしれない。
 ブルーマン自体は一切しゃべらないので英語のヒヤリング能力はまったく必要ないが、電光表示で流れる英文のメッセージを使った演目が増えているところもやや気になる。

 チケット料金は $64~$125。会場は前述のとおりピラミッド館の2階にあるアトラクション・フロアのほぼ中央付近。チケット購入窓口であるボックスオフィスも同じ場所にある。
 公演は原則として毎日 7:00pm と 9:30pm。休演曜日は特に設けられていないが、予定が変わることもあるのでそのつど確認したほうがよい。

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