ラスベガスが属するネバダ州は全米50州で第3位! 何が?

この街に能登半島地震レベルの大きな地震が来る可能性はあるのか。(ラスベガスのストリップ大通り)

この街に能登半島地震レベルの大きな地震が来る可能性はあるのか。(ラスベガスのストリップ大通り)

  • URLコピー

 今週は、今ラスベガスを不在にしている関係で日本からの発信。といっても「ラスベガス大全」と称したままで日本の話題というわけにもいかないので強引にラスベガス関連の話をしてみたい。

 現在日本では年明け以降どこのマスコミも能登の震災の話題で持ちきりで、実際に被災地ではまだインフラがほとんど復旧していないなど悲惨な状態が続いているようだ。
 そんな状況の日本から、被災地で不便や苦労を強いられている方々へのねぎらいにもならない地震関連情報では何とも心苦しい限りだが、今週はラスベガスにおける地震の現状について書いてみたい。(犠牲になられた方々や被災された方々には心よりお悔やみとお見舞い申し上げます)

 ご存じのようにアメリカには50の州が存在している。そんな中、ラスベガスが所属するネバダ州は地震大国ならぬ地震大州といったら多くの人が驚くに違いない。特にひんぱんにラスベガスを訪れているラスベガスフリークにとっては聞き捨てならない話だろう。

 ではどの程度の地震大州なのか。なんと驚くことなかれ、アラスカ州、カリフォルニア州に続く全米第3位の地震多発州なのである。
 とはいえラスベガス旅行を計画中の人も心配するのはまだ早い。その理由は以下の3つだ。
(なお年度や統計期間の幅によってはハワイ州が3位になったりすることも。また集計する地震の規模によっては順位が入れ替わったりすることもある)

 まず最初の理由は、第3位といっても1位と2位が飛び抜けて地震が多いというだけで、ネバダ州は2位から大きく引き離されての第3位。つまり順位のわりには心配するほどのことではないということ。

 もう一つの理由は震源からの距離。ネバダ州内で発生している地震(サンアンドレアス断層で発生している地震ではない地震)の多くはラスベガスから100kmほど西方向もしくは南西方向に離れたカリフォルニア州とネバダ州の州境付近(この地図内の点線が州境。カリフォルニア州内を縦断しているサンアンドレアス断層の200kmほど東側)で発生しているため、距離的に離れていることから強い揺れがラスベガスにまで伝わってくることはほとんどない。

図の中の左端に書き加えた水色の線がサンアンドレアス断層。ピンクの★印がラスベガス。点線は州境。(USGS のサイトから)

図の中の左端に書き加えた水色の線がサンアンドレアス断層。ピンクの★印がラスベガス。点線は州境。(USGS のサイトから)

 3つ目の理由は地震の規模だ。そのネバダ州側を震源域とする地震は内陸型、つまり海洋プレートの境界面などで発生するいわゆる海溝型の巨大地震(東日本大震災などがそれに該当)ではないため、地震の規模を表すマグニチュード(アメリカでは「リクタースケール」という単位が使われることもあるが、マグニチュードとほぼ同意)が総じて小さい。
(サンアンドレアス断層そのものは陸地にあるが、太平洋プレートと北米プレート境界面という意味では海溝型に近いメカニズムの地震が発生している。ただしそれらの地震はすべてカリフォルニア州側で発生。ネバダ州内ではない)

 以上の現状を、約25年間ラスベガスに住んでみた経験値として一般的な言葉で表現するならば、「日本でいうところの震度2くらいまでの小さな揺れを数年に一度感じる程度」といったところか。

 さらなる詳しい具体的なデータを知りたい場合は、約1万人が働いているとされるアメリカ内務省の巨大な科学研究機関 USGS(米国地質調査所などと訳されることが多い)の公式サイトの地震のページ(←クリックまたはタップ)へ行ってみるよい。
 このサイトでは全地球規模で地震のデータをリアルタイムで収集しており、その詳細なデータを無料で広く公開している。
 地震大国である日本の学術機関なども密に情報交換するほど世界的に権威がある機関のサイトなのでぜひ参照してほしい。
 当然のことながら今回の元日の能登の地震もその後の余震も日本の気象庁に負けず劣らず詳しいデータを提供してくれているので、地震の学術的な部分に関心がある者にとっては興味が尽きないはずだ。
(ただし巨大なサイトのため、目的の情報にたどり着くまでに時間を要することも)

 ちなみに USGSのこのページ(←クリックまたはタップ)で能登半島地震を特集しており(いつまで掲載されるかは不明)、そのページの左側にある各リンク(スマホではなくPC利用をおすすめ)からはさらなる膨大なデータにアクセスすることが可能となっている。

USGS の能登半島地震の特集ページ。

USGS の能登半島地震の特集ページ。

 日本ほどは地震が身近な存在ではないように見受けられるアメリカの政府機関がここまで力を入れているのは不思議のようにも思えるが、よく考えてみれば地震多発のカリフォルニア州にはロサンゼルスやサンフランシスコなどの大都市が存在しているわけで、無関心でいられないのは当然か。それでも全世界に観測網を張り巡らせているのは立派としか言いようがない。ちなみにこの USGS のスローガンは science for a changing world というから意気込みが伝わってくる。

 さてここまで ラスベガスは全米3位の地震多発州 といって不安をあおったり、その一方で 心配無用 と言ったり、「どっちなんだよ!」と言われてしまいそうだが、じつはカリフォルニア州とネバダ州の州境付近のみならず、さらに内陸のラスベガスの生活圏にも断層が複数あることがわかって来ているので発生頻度は少ないとは言え油断は禁物かもしれない。

 その証拠というか、内陸の断層といえば、このたびの能登半島の地震も、そして熊本地震、中越地震、阪神淡路大震災なども専門家のほとんどだれも予期していなかったいわばノーマーク地帯で発生しており、まさかの場所で起こるのが内陸型地震の特徴だ。
(能登の地震は海中が震源だったようだが海溝型ではない。海溝型の巨大地震は百年から数百年といった比較的短い間隔で発生しているため警戒や監視の対象となりやすく一般市民の関心も高いが、内陸型は場所も時期も予測がほぼ不可能なことから無防備になりがちだ)

 そんな内陸の断層による地震はマグニチュードが小さくても(7前後までが普通)市街地に近かったり(いわゆる直下型)震源が浅かったりするため被害が大きくなりやすい。P波の到着からS波の到着までの時間が短いことも緊急避難速報を有効に使えず被害を大きくしがちだ(ラスベガスに緊急避難速報があるかどうかは未確認)。
 そんな危険な個々の断層による内陸型地震の発生周期や頻度は数千年、数万年に一度などと言われたりしているが、その断層がその地域に十ヶ所存在していれば、そのどこかの断層で地震が発生する確率は数千年、数万年に1回よりも10倍ほど高まる。ちなみにラスベガス周辺ではすでに10本ほどの断層が確認されているというから直下型地震の確率はゼロではない。

赤い線がラスベガスで確認されている断層。(Las Vegas Review-Journal のサイトより)

赤い線がラスベガスで確認されている断層。(Las Vegas Review-Journal のサイトより)

 参考までに日本にはその種の断層が大小約2000もあると言われており、仮に個々の断層が1万年に1度動くとしても、2000もあれば数年に一度は日本のどこかで大きな地震が起こっても不思議ではないことになる。まさにそれが今回の能登であったり熊本や神戸であったりするというわけだ。

 ラスベガスに話を戻すと、カジノ街に林立している高層ホテルの耐震性能は日本のそれよりも弱いのではないかと勝手に想像しているが、震度6以上の揺れや、たとえば 2000ガル以上などの大きな最大加速度に対してどの程度たえられるのか。能登での建造物の倒壊の映像などを見ていると気になってきたりもする。
(ちなみに今回の能登は2000ガル以上、熊本は1500前後、神戸は1000未満)

 余談になるが、1990年代以降に建設されたラスベガスの大型カジノホテルの建設現場を見てきた限りでは、ベネチアンとパラッツォがS造(鉄骨造)、その他のカジノホテルはほとんどがRC造(鉄筋コンクリート造)かSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)だったような気がするが(記憶ちがいの可能性も)、どの工法が地震に強いかはいろいろな条件によって変わってくるようなので、興味がある人は各自で研究して頂ければ幸いだ。

 話が長くなってしまったが、ラスベガスでの地震は発生頻度的にも地震の規模的にもそれほど大きくないと予想されてはいるものの、やはりあなどらないほうがよいだろう。
 といっても一般観光客にとって滞在中の大地震にそなえた具体的な対応策などあるわけもなく、そんなことを考えても意味がない。
 スロットマシンで何百万ドルものジャックポットが的中する場面を想像したりするほうが、大地震との遭遇を心配するよりも楽しいし確率論的にも現実的かもしれない。
 ここまで読んで頂いた読者が存命の間はカジノホテルが損傷するほどの地震は来ないだろうと楽観的に決めて今週の記事を終わりとしたい。

関連カテゴリー
  • URLコピー

コメント(2件)

  1. 澳男 より:

    ベネチアンはRC構造で建てられてて、パラッツォがラスベガスでは珍しいS構造となってるんではないですかね?
    パラッツォは建築工事期間の短縮の必要性から、S構造を採用したと聞いています。 
    パラッツォが建ったお陰でWynnのストリップビューは遮られてしまい、アデルソンがスティーブ・ウィンとの犬猿の関係から、わざとWynnのストリップビューを遮るような位置にパラッツォを建てるよう指示したんだとか、、、

  2. ノブノブオ より:

    ベガスで地震と言えばオーシャンズ13を思い出しますね
    爽快シーンです

コメントをお寄せください!

ご意見、ご感想、記事内情報の誤りの訂正など、以下のコメント欄にお寄せいただければ幸いです。なお、ご質問は [フォーラム] のほうが返事をもらえる可能性が高いです。

※ メールアドレスが公開されることはありません。
※ 以下に表示されているひらがな4文字は、悪質な全自動プログラムによる大量の書き込みなどを防ぐためのアクセス・コードです。全角ひらがなで入力してください。
※ 送信いただいたコメントが実際の画面に表示されるまで15分程度の時間を要することがございます。

CAPTCHA