ラスベガスにやたらと多い消費者金融の現状と日本のカジノ解禁論

ラスベガスの場末の寂れた場所にある怪しげな消費者金融。

ラスベガスの場末の寂れた場所にある怪しげな消費者金融。

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 まず始めにこの記事は、大阪などで計画が進められているIR(Integrated Resort: ホテル、コンベンション施設、カジノなどを含む統合型リゾート)に対して間接的に反対するためのものではない。あくまでも当地ラスベガスにおける消費者金融の現状に関するレポートである。

州によって法律がまったく異なる

 アメリカにおける法律は、その多くが州やそれ以下の自治体レベルで決められているため全米共通のルールは非常に少ない。
 広大な国土の中に50もの州が存在しており(日本よりも大きい州が4つもある)、気候、風土、文化などが多種多様であることを考えると地域によって法律が異なるのはむしろ当然の成り行きといってよいだろう。

死刑の有無すら州ごとに異なる

 もちろん日本にも地域レベルの条例がないわけではないが、殺人罪など大きな犯罪はもちろんのこと身近な民法などに関しても全国で統一されている。
 一方アメリカでは死刑の有無すら州ごとに異なっており、ましてや消費税率交通ルールなどに至っては州や地域によって完全にバラバラだ。
 昨今にわかに話題となっている人工妊娠中絶やマリファナの合法化などに対しても州によって判断が分かれていることは多くの人が知るところだろう。

 前置き長くなってしまったが、本題の消費者金融に関しても同様で、以下の記述はすべて当地ラスベガスでの現状であって、他州でも同じと考えてはいけない。

日本でいうサラ金がアメリカにも

 日本でもアメリカの各州においてもローンといえば、自動車ローン住宅ローンが頭に浮かぶ。それらは数年や数十年の長期ローンであることが普通だ。
 その一方で少額(おおむね数百ドル程度まで)の短期ローンもある。
 日本ではかつてサラ金(サラリーマン金融)と呼ばれていた消費者金融で、アメリカではペイデイローン(Payday Loan)タイトルローン(Title Loan)などと呼ばれている。ローン期間は比較的短く30日前後が一般的だ。

 ついでにもう一つ短期のローンをあえて取り上げるならば、日本でいうところの質屋(Pawn Shop)もあるが、これに関しては日本とほぼ同様な仕組と考えて差し支えないので、ここでの説明は割愛する。

家電製品や貴金属などを持ち込み金を借りる質屋(PAWN SHOP)。

家電製品や貴金属などを持ち込み金を借りる質屋。

「先日付小切手」を担保に借金

 ペイデイローンとは、貸し手(金融機関)によっていろいろな形態があるが、大ざっぱに言ってしまえば給料日(Payday)の収入をあてにしてカネを借りるローンのこと。
 たとえば、いま自分の銀行口座に十分な残高がなくても、給料日以降の日付を書いた小切手(いわゆる「先日付小切手」)を貸し手に発行して借金をする。
 貸し手は、借り手が本当に就職していて給料を受け取れる環境にあるかどうかを確認することはいうまでもない。

自動車の権利書を担保に借金

 タイトルローンとは自動車などのタイトル(所有権を示した権利書みたいなもの)を担保に入れて借金するローンのこと。
 高級車だからといって高額を借りられるとは限らない(そもそもタイトルローンも普通は少額が対象)。なぜなら自動車購入時に組んだローンの返済が終わっていなければ、銀行などが設定した担保が残っているからだ。
 ちなみに多くの場合、同じ店舗でペイデイローンとタイトルローンの両方を取り扱っている。

タイトルローンも扱う店舗。左奥にストラットホテルのタワーが見える。

タイトルローンも扱う店舗。左奥にストラットホテルのタワーが見える。

銀行をイメージしてはいけない

 くどいようだが、以下はもちろんラスベガスを擁するネバダ州の現状であって、他州はその限りではない。
 ペイデイローンやタイトルローンなどの短期ローンが、住宅ローンや自動車購入時のローンと比べて大きく違うところは「少額であること」「ローン期間」だけではない。貸し手の業態もかなり異なっている。

 したがって前項で「貸し手(金融機関)」と書いてしまったが、金融機関であることに違いはないものの、一般の銀行などをイメージしてはいけない。
 日本の現在の消費者金融は大手銀行の傘下で運営されているようだが(かつてのサラ金はちがったが)、ラスベガスの短期ローン業者は銀行とは似ても似つかぬまったく別の業態と考えるべきだろう。

店構えもロケーションも怪しい?

 ラスベガスでの短期ローンの業者はなにやら怪しいビジネスのようにも見えてしまう。
 そのように書くとその業界や利用者から批判を浴びそうなので「怪しいビジネス」という表現は撤回し、「怪しい店構えであることが多い」と訂正したい。
 ついでに言わせてもらうならば、大半の店舗は怪しいエリアにある。
 もちろん合法的に運営されているビジネスなのでどこに店舗を出そうが何ら批判されるべきではないが、とにかく場末の寂れたイメージが拭えないのは事実だ。

サハラ通りの東寄りの場所にある短期ローンの店舗。

サハラ通りの東寄りの場所にある短期ローンの店舗。

限られたエリアに集中

 ペイデイローンやタイトルローンの店舗が集中しているエリアは、高級カジノホテルがひしめくストリップ地区の繁華街から見るとかなり北側で、なおかつダウンタウン地区の少し手前。
 道路名でいうならば、チャールストン通りサハラ通り沿いのやや東寄りの場所ということになる。

 その一帯はラスベガスとしては比較的古いエリアで、新しく開発された南東部のグリーンバレー地区や西に位置するサマリン地区と比べると道路や街の景観が明らかに異なっており、物騒な雰囲気すら漂っている区画も少なくない。
 ここの読者がその地域に住んでいたら申しわけないが、住民の平均所得が低い地域でもある。

ここはデザートイン通りの東地区。決して環境は良くない。

ここはデザートイン通りの東地区。決して環境は良くない。

人口あたりの店舗数がめっぽう多い

 短期ローンの店舗はその物騒なエリアのみならずグリーンバレー地区やサマリン地区にも少なからず存在しており、ネバダ州は人口あたりの店舗数において他の州を圧倒しているというのが定説だ。
 州ごとの具体的なデータがないので数値で比較することができないのが残念だが、その定説はほぼ間違いないだろう。

 店舗数がめっぽう多い理由はもちろんカジノの存在に他ならない。
 カジノで散財してしまいペイデイローンなどに頼るしかないという者があとを絶たないというわけだ。つまりギャンブル中毒、いわゆるギャンブル依存症の者が多いということ。

あまり環境の良くないチャールストン通り沿いにあるペイデイローンの店舗。

あまり環境の良くないチャールストン通り沿いにあるペイデイローンの店舗。

地元民もカジノに行くのか?

 ラスベガスを訪れる一般の観光客からしてみれば「地元民もカジノに行くの?」と思うかもしれないが、その答えは「イエス」だ。
 もちろんまったく行かない人もいれば、ひんぱんに行く人もいるのは当たり前のことだが、カジノ運営企業が地元民に頼っていることは疑いのない事実で、ラスベガス全体のカジノ産業の売上構成は大ざっぱに言って、地元民3分の1、数時間のドライブでアクセス可能なロサンゼルス地区からの訪問者3分の1、それ以外の全米各地や海外からの訪問者3分の1となっている。

 実際に一般の観光客の視野には入らない郊外の住宅街に大型カジノが多数存在しており、地元民にとっては日本人が駅前のパチンコ店にサンダルを突っかけて行くような環境が整っている。

高学歴者もギャンブル中毒に

 地元民の中にギャンブル中毒者が多そうであることは理解できたと思うが、短期ローンの業者が比較的貧しいエリアに集中していることはどのように解釈すべきか。
 所得の低い者ほどギャンブルにハマりやすいと考えるべきか。それともギャンブルにハマって生活が苦しくなったから生活費が安いエリアに引っ越すしかなかったのか。

 どちらにせよ、あるいはどちらも正しいにせよ確実に言えることがある。それは高額所得者や高学歴の者でもギャンブル中毒になり得るということ。
 東大卒の大王製紙の元会長が世界各地のカジノで100億円以上の会社のカネを使い込んでしまったというスキャンダルは記憶に新しい。
 だれでも中毒になり得るということだけは知っておいて損はなさそうだ。

チャールストン通り沿いにある短期ローンの店舗。

チャールストン通り沿いにあるローンショップ。

短期ローンに対するネバダ州の法律

 ついでなのでペイデイローンやタイトルローンなどの短期ローンの業界に対するネバダ州の法律についてふれておきたい。
 どこの州でも金利の上限、貸出金の最高額、借り手の収入条件などを決めており、当然のことながら州によって大きなばらつきがあるわけだが(18の州ではペイデイローン自体が禁止されている)、ネバダ州における現時点でのルールは以下のようになっている。

◎ 金利の上限: 無制限
◎ 貸出最高額: 借手の月収の25%まで
◎ 最長貸出期間: 35日

念のため他の2州との比較

 参考までに日本人に馴染みがあるロサンゼルスやサンフランシスコのカリフォルニア州と、そしてシアトルのワシントン州のルールを以下に示してみた。(ニューヨーク州はペイデイローン禁止)

【カリフォルニア州】
金利の上限: 年利460%
貸出最高額: $300
最長貸出期間: 31日

【ワシントン州】
金利の上限: 年利391%
貸出最高額: $700
最長貸出期間: 45日

 なお「金利の上限」はあくまでも上限であり、実際にはローン業者間での競争が働いているため実効金利はそれよりも低いのが普通だ。

グリーンバレー地区に出店しているペイデイローン店。

グリーンバレー地区に出店しているペイデイローン。

ベガスは全米で2番目に高い金利

 一般的にどこの州においても、法律というものは消費者保護を優先した「消費者寄り」か、逆に業界の意見を重視した「業界寄り」かのどちらかになるのが普通でネバダ州では「業界寄り」になっている。
 それもかなり極端な業界寄りで、結果的に貸出金利の平均値は、短期ローンが認められている32州のうちで2番目に高いらしい。

 金利の上限は無しということなので市場原理に任せて自由に決められることになり店舗ごとに異なっているわけだが、その平均値は年利換算で約600%。1位のアイダホ州の平均値は約650%
 すさまじい金利ではあるが、これらはあくまでも年利換算。借入金そのものが少額であるばかりかローン期間が約1ヶ月程度と非常に短期なため何千ドルもの金利を取られるわけではない。

 とはいえ「消費者寄り」コロラド、オハイオ、バージニアなどの州では年利50%以下に抑えられているというからネバダやアイダホが異常に高く、州による差がとてつもなく大きいことがわかる。

フラミンゴ通りにあるペイデイ&タイトルローンの店舗。

フラミンゴ通りにあるペイデイ&タイトルローンの店舗。

大阪のIRではどうすべきか

 さて、大阪IRは 2022年末までに結論を出すような方向で話が進んでいるようだが、もし大阪にカジノができた場合はどうなるのか。
 シンガポールのカジノのように地元民の入場に何らかの制限を加えない限りギャンブル依存症が増える可能性は十分にあるが、その一方で、すでにパチンコ店の存在があるので依存症になる者はもうとっくになっているはず、という考え方もあったりする。
 ただその議論で注意すべきは、パチンコは単位時間あたりに打てる玉の数に限界があるため1日で百万円負けることは考えにくいが、カジノではそれが簡単に起こり得るということ。

 その一方で競馬競輪ではカジノと同様、一瞬にして大金を失う可能性がある。
 そう考えるとIR反対派が問題視するギャンブル依存症の議論は、すでに競馬や競輪が存在している日本ではあまり意味をなさないようにも思えてしまうが、「カジノとちがって競馬や競輪は毎日開催されているわけではない」という反論が聞こえてきそうだ。

地元民の入場制限は収益が低下

 ギャンブル依存症の議論の先に必ずあるのが 地元民の入場制限ということになる。
 具体的には入場料の徴収入場回数の制限などが検討されているようだが、これはカジノ運営側にとって大きく収益が低下する要因となるので導入には慎重になるべきだろう。

 すでにマカオシンガポール、さらには韓国にもカジノがあるわけで、アジア諸国のギャンブラーがわざわざ大阪にやって来る理由はあまり見当たらず、カジノ運営側としては地元民に頼らざるをえない。
 そのような状況下で地元民の入場制限を導入するとなると、カジノ運営側が「大阪IRから撤退したい」と言い出す可能性も出てくる。

画面左奥に車両の査定をする場所が見える。

画面左奥に車両の査定をする場所が見える。

ハイローラーの扱いで手こずるかも

 では地元民の入場制限をやらなければ収益に問題がないのかというと、必ずしもそうとは限らない。
 それはハイローラー(高額な賭け金でプレーするギャンブラー)の誘致で手こずる可能性があるからだ。

 前述の大王製紙の元会長も指摘していたことだが、何ごとにおいても平等を好む日本においては、ハイローラーだけを特別優遇するようなことは風土や文化になじまず、結果としてアジアのハイローラーにとって大阪のカジノはさほど居心地の良いものとはならないかもしれない。(豪華な部屋や食事の無料提供や超高級車による送迎など、海外のカジノでは特別優遇するのが当たり前)
 また与信管理(カジノ側がハイローラーにプレー費用を貸し出したりする際の信用調査など)のノウハウがあまりないので、その部分でも問題に直面する可能性がある。

 ハイローラー無しではカジノ経営がうまくいかないことはすでに世界各地のカジノで立証済みで、また中国からのハイローラ向けの与信管理はアメリカ系のカジノ企業といえども難しく、中国人のジャンケット(ハイローラーと独自のコネクションを持ち、カジノにハイローラーを送り込むエージェントのような人物)に頼るしかないが、大阪IRがジャンケットの存在を認めるかどうかは不明だ。

大阪IRには反対ではない

 以上のようにカジノの収益に不安はあるものの、それでもとりあえず大阪IRはやってみたほうが良いと考えたい。地元に対する経済効果はもちろんのこと、カジノが倒産しない限り税収が期待できるからだ。

 税金はどんな人にとっても払わなくてよいものなら払いたくない。好き好んで払う納税者などほとんどいないだろう。
 しかしカジノの売上が税収につながるのであれば、カジノに足を運ぶギャンブラーは自分から積極的に好き好んで支払う納税者ということになる。
 競馬や競輪などの公営ギャンブルや宝くじなどの売上が地方自治体の収入につながったりしているのと同様、カジノも少なからず公共のためになるのであれば、やってみるのも悪くはないのではないか。

 IR反対派からしてみれば、今回取り上げたベガスのペイデイローンの実態などは「それ見たことか。日本でも必ずそうなる!」とマイナス要因の絶好の材料にしたいところだろうが、どんなことにもマイナス要因プラス要因があるもの。
 賛成派はもちろんのこと反対派も税収や地元経済といったプラス要因も一緒に合わせて総合的に検討して大阪IRの今後を決めてくれることを願うばかりだ。

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コメント(1件)

  1. WAKI より:

    大阪IRを心待ちにしている老人ですが、計画が立ち上がって以来、紆余屈曲結局出来上がるのは
    早くて2029年末らしいです、その頃まで生きている自信もないですし、大阪維新も最近元気がなくなって
    きましたし、どうなりますことやら。
    大阪IRのカジノにはマイナンバーカードの呈示や入場料6000円とかは早々に決まっており、
    シンガポールと同じような運用になるようですが、MGMさんもどうなっていることやら、
    モタモタしている間にアジア各国では立派なカジノが軒並み完成したようで、カジノのない
    国は日本、台湾、北朝鮮だけでは、などと年寄りの独り言。

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