約2年半続いたコロナ騒動もすっかり落ち着きを見せており、当地ラスベガスの観光業界は完全に復活。
街の中は世界中からの訪問者であふれ、もはやマスク着用者を見かけることなどほとんどない。
一方、日本からの観光客の数は限定的で、コロナ前の水準に戻るにはまだまだしばらく時間がかかりそうだ。
というわけで、今週も観光情報ではなくトリビア的な話題を写真を多用しながら紹介してみたい。
単語からでも日米の違いを連想
日本とアメリカの違いは何か? と問われたら、だれもが簡単にいろいろ思いつくはずだ。
国土の広さ、道路の広さ、住宅の広さといったアメリカが圧倒している部分も数多くあれば、料理のうまさ、犯罪の少なさ、きめ細かなサービスなど日本のいいところもたくさんある。
日米の違いはそのような目に見える形での実態や現実にとどまらない。言葉が持つ印象においても日米でハッキリ分かれたりする。
たとえば、謙虚、協調、集団、清潔、慎重といえば日本を連想するだろうし、楽観、自立、主張、豪快、犯罪といった単語にはだれもがアメリカをイメージするにちがいない。
性悪説社会における防犯対策
前置きが長くなってしまったが、その豪快、犯罪といった部分はイメージだけではなく現場の対応においても日米で大きく異なっているように思える。
たとえばアメリカの窃盗団はフォークリフトなどを使って大型店のドアや壁をぶち破り、トラックで商品を盗んでいったりするというから豪快きわまりない。
日本でも大胆な窃盗がまったくないわけではないだろうが、アメリカの大型店などはそういった犯罪を常に意識しながら本気で防犯対策に取り組んでいるところがなんともこの国らしい。
その実態を現場で見ていると、性悪説を前提とした価値観の中で社会が回っていることを改めて実感させられたりする。
窃盗団からの防衛策は障害物の設置
では上記の大型店のフォークリフトの例における防犯対策とは具体的にどのようなものなのか。それはボラード(bollard)と称される障害物の設置だ。
このボラードは、サイズ、形、強度など多種多様で専門のメーカーも複数存在しているが、どのメーカーもユーザー(設置する店舗など)に対して設置を奨励している理由の一つに、駐車場からの誤発進事故からの防御、つまりブレーキとアクセルの踏み間違い事故などから店内の顧客や商品を守ることをあげている。
しかし店舗側の本当の設置理由は別にある。もちろんそれは窃盗団からの防衛だ。それは20数年前に複数の大型チエーン店の広報担当者から聞いたことなので間違いない。以下、話は少し横道にそれるが昔の話に飛ぶ。
日本からの流通業界視察ツアー
今ではほとんどなくなってきているが、かつては日本からの流通業界視察ツアーというものがやたらと多かった。
1995年前後から2000年ごろまでの話で、日本のビジネスマン、ビジネスウーマンのアメリカ出張といえば、その多くが流通業界の視察だった。
訪問都市としてはロサンゼルスでもニューヨークでもどこでもよかったが、たまたま当地ラスベガスには狭い範囲内に大型専門店が集中しているショッピング環境が整っており、結果的に移動時間が少なくて済むばかりか、業界関連のコンベンションも多数あったりしたため視察団にとっては都合の良い都市だった。
そのような状況に置かれていたため、当社は視察団の受け入れやガイド役を毎月のようにやる機会に恵まれていた。今となっては非常に懐かしい思い出だ。
視察先としての人気大型店ベスト5
視察団にとっての訪問先の一番人気は世界最大のスーパーマーケット Walmart、2番人気が世界最大のホームセンター HOME DEPOT、あとは倉庫型ストア Costco、家電量販店の BEST BUY、玩具販売の Toys R Us と続いた。
当時日本では食品の大型スーパーマーケットや百貨店こそ存在していたものの大型専門店はほとんどなかったためか、視察団にとってはかなり貴重かつ有益な体験だったようで参加者からは感謝の言葉をたくさん頂いたりしたものだ。
日本に大型店が存在しなかった理由
若い世代には想像しにくいかもしれないが、前述の通り 2000年ごろまで日本には大型専門店がほとんど存在しなかった。
その理由はいわゆる「大規模小売店舗法」(通称「大店法」)による出店規制だ。この法律は個人商店など小規模な店を保護するための出店規制で、大型店の新規出店に対しては店舗面積、営業日、営業時間などが厳しく制限された。
そんな状況下、アメリカの玩具販売大手のトイザらスが日本に出店しようとした際、当然のことながら大店法の存在を理由に地元商店街から反発を受けることになり、それがきっかけで「非関税障壁」ではないかとアメリカ政府からの圧力を受け、大店法は段階的に規制が少なくなり 2000年には完全になくなった。
広報スタッフが理由をハッキリ明言
さて話は現在に戻る。以下に複数掲載した写真は現在ラスベガスで営業展開している大型専門店の入口の様子だ(ほとんどの店は全国展開のチエーン店)。多くの店の入口にボラードが立っていることが見て取れる。
これらのボラードは 20数年前の視察訪問の際にも同じように存在しており、視察団から「何のためにあるのか?」との質問をよく受けたものだ。
すると各店の本社から派遣されて現場に来ていた広報スタッフがハッキリと「強引な窃盗団の突入を防ぐため」と答えてくれた。(多くの大企業においては、各店舗の店長や現場の一般スタッフが視察団の案内や応対をすることはまずない。事前にアポイントを取っておくと本社から広報担当者が派遣されてくる)
毎回それぞれの視察団を受け入れるたびに同様な質問がなされ、結局どこの大型店でもボラードの設置は防犯を理由としていることがわかった。
ボラードが無い店も、その理由は?
ボラードの存在理由を意識しながら各店の入口を見ていると、ボラードがない店も散見されることがわかるが、その理由に気づくのに時間はかからなかった。
家電量販店など総じて高価な商品を扱っている店にはボラードがあり、食品などを売る店にはない。キャベツ、牛乳、卵などを盗んでも金額が張らないばかりか賞味期限もあるので窃盗団が興味を示さないのは当然と言えば当然だ。
もちろん例外もある。つまり安い商品を扱う店にボラードがあったり、その逆もしかり。それは企業のポリシーであったり、入居前からその物件にボラードが存在していたり、さまざまな理由が考えられるが、それでも総じて高価な商品を扱っているかどうかでボラードの有無が決まってくる。
長くなってしまったが、そんなことを知った上で写真を見ていると、性悪説社会におけるアメリカの防犯対策の実態から何かを感じ取ることができるのではないか。ぜひじっくり見て頂ければ幸いだ。
いつの日か性善説社会の日本でも同じような光景が見られるようになるとしたら、それは犯罪が増えていることの証であり残念極まりないが、時代の流れとしてはそうなるような気がしてならない。
写真で見る大型専門店の入口の様子
以下、どのような店にボラードがあり、どのような店に無いのか、そういった部分に注目。
コメント(3件)
ストリップ通りの両サイドに設置しているポールも交通事故、ホテル、店舗への侵入等を防ぐ対策として数十年前から実施してますね、デザインも統一していいですね
そんなに前からあったのですか?何年か前に大全のニュースで扱われたのを見た記憶があったと思い探してみると5年前の暮れのNo.1090が見つかりました。
ストリップ大通りで、歩行者保護のための工事が始まる 2017/12/13
https://www.lvtaizen.com/1090
これによると、長年切望されていたにもかかわらずこの頃ようやく設置工事が始まったとありますが…。
日本でも一時期この手のポールが盛んに設置されていましたが最近はガードレールに任せている感じですね。駐停車車両への乗り降りなどを考えるとこういったポールも便利なのですが。
それは車を止めるためのものでしょうか? 駐車場から店頭への道路怒りを防ぎ、無謀な運転や怒りに満ちた運転から市民を守ることができると思います。 映画やソーシャルメディアが世界に信じさせているにもかかわらず、それはアメリカではあまり一般的ではありません。 むしろ、再発する前に一度あったことなので、安全機能だと思います。