今週は、直近の統計によると当地のラスベガス国際空港がロサンゼルスの空港も抜いて世界第5位の巨大空港に躍り出たという話。
「ラスベガスが世界第5位?」と意外に思う読者も多いと思われるのでこの話題を掘り下げてみたい。
(ちなみにこの空港の正式名称は1年半ほど前に「マッカラン国際空港」から「ハリーリード国際空港」に変更になったが、今回の話題と名称は特に関係ないのでこの記事内では通称の「ラスベガス国際空港」に統一)
ラスベガスの人口は周辺地域を含めて約200万人。世界には遥かに巨大な都市がいくつもあるにもかかわらず、わずか200万人程度の都市の空港が世界第5位とは信じ難いのではないか。
「コロナの影響か何か特別な理由でランクが急上昇したのではないかと」と思う読者もいるだろうが、実はコロナ前からも世界第8位という堂々の順位だった。
つまりもともとすごい空港だったものが、さらにコロナの影響で順位を上げたことになる。
では何を基準にした世界ランキングなのか。一般的に空港ランキングは乗降客数か離着陸回数で比較されることが多いが、今回の世界第5位は後者の離着陸回数だ。
ちなみにランキングを発表したのはカナダのモントリオールに本部を置き世界各地の行政機関や航空会社などと連携しながらデータを収集している Airports Council International(通称 ACI)で、航空業界ではそれなりに権威ある組織として知られている。
以下がその ACI がこのたび発表した統計だ。
北京(中国)、アムステルダム(オランダ)、フランクフルト(ドイツ)がトップ10から姿を消すなどコロナ前の2019年と 2022年ではランキングがかなり変化していることが読み取れる。
ちなみに 2022年のランキングでは 10位のイスタンブール(トルコ)以外はすべてアメリカの空港となっていることに注目したい。
これはアメリカがコロナによる移動制限の撤廃を他国よりも早くおこなった結果と考えてよいだろう。
ではコロナ以前からも大都市でもないラスベガスの空港が世界第8位にランキングされているのはなぜか。
2019年の統計でラスベガス国際空港よりも下位にランクされているアムステルダムのスキポール空港やフランクフルト空港は何十年も前からヨーロッパを代表する巨大空港として知られており、それら空港を利用したことがある者にとっては「えっ、なぜラスベガスが上なの?」と違和感を覚えるに違いない。
理由はラスベガスが世界に冠たる観光都市であることは言うまでもないが、他にもいくつかある。
その前に、離着陸回数ではなく乗降客数のランキングも示しておきたい。以下のとおりラスベガスはトップ10 に入っていない。
ちなみにこの表では見ることができないが、コロナ前の統計のほうが平常時の実態がわかるので 2019年の順位でいうならば、ラスベガスは乗降客数では世界第30位に甘んじている。
フライトの本数では世界屈指の空港でありながら乗降客数では世界第30位というのはどういうことか。その理由は2つ考えられる。
ひとつは、座席数が多くなりがちな大型機による国際線の比率が相対的に低いため(コロナ前も国際線の利用者数は国内線の利用者数のわずか 10%程度)、国際線が相対的に多いロンドン、パリ、ニューヨークなどの空港よりも 1機あたりの搭乗者数が少ないことが起因している(写真は中型機 ボーイング737型機)。
それともうひとつの理由は、ラスベガスを最終目的地とする利用者が大部分、つまり乗り継ぎ空港としての利用者は少ないということ。
つまり巨大都市の空港では国際線などからの乗り継ぎ客が多く、それらも乗降客数にカウントされているため数字が大きくなりがちだが、ラスベガスの場合そうはならない。
以上のことからラスベガス国際空港の特徴を端的に表現するならば、「全米各都市からの国内路線が集結している巨大空港ではあるが、大多数の利用者にとって最終目的地であるため、乗り継ぎ需要が多い国際ハブ空港とは状況が異なっている」ということになる。
あとこれは機材のサイズや乗り継ぎ空港かどうかとは関係ないが、都市圏内の空港の数という部分においてもラスベガス国際空港が相対的に巨大空港になりやすいことも付け加えておきたい。
どういうことかというと、ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスなどの大都市では複数の空港、つまり羽田空港に対して成田空港が存在しているように、いくつかの空港が並行利用されているため利用者が分散してしまいがちだが、ラスベガスには主要空港が一つしかないためフライトが集中しやすい。(自家用飛行機や軽飛行機用などのための小さな空港はラスベガス国際空港以外にもいくつか存在している)
それにしても乗降客数ではなく離着陸回数での比較にせよ、空港が一つしかないにせよ、人口わずか200万人程度の中規模都市の空港が世界第5位とは驚くべき順位で、それは人口のわりに来訪者が非常に多いことの何よりの証拠といってよいのではないか。
今後アメリカ以外の都市でもコロナの影響が薄れてくるにつれ順位も大きく変動する可能性はあるが、離着陸回数においてラスベガスがトップ10から姿を消すことは今後10年はたぶんないだろう。(中国の都市が台頭してくるかもしれないが)
最後に追加情報として付け加えておきたい。このたび ACIが発表した統計によると、2022年に離着陸回数がコロナ前のレベル(2019年の数値)に戻っている世界の主要空港はラスベガスとマイアミとイスタンブールしかない。
2022年のラスベガス国際空港の離着陸回数はすでにコロナ前を 5.1% も上回っているというから恐れ入る。世界に冠たる観光都市の面目躍如といったところか。
それにしても当地はすでにコロナから完全復活を果たしているというのに、なぜか日本からのラスベガス訪問者数はあまり回復していない。
なぜなのか。その理由は ACI に問い合わせてもわからないだろう。わかる人は以下のコメント欄にご意見を投稿して頂けたら幸いだ。
コメント(7件)
物価高・為替の影響ではないでしょうかねえ。
のっけからレートが不利では勝つものも勝てないので。。。
寂しい限りです。
航空運賃がコロナ前と比べて上がっているからだと思います。3-5割り増しくらいの印象です。
4年ぶりに行きたいけど、行かなくてもいいやという気分になっています。
日本は猛暑にもかかわらず、まだ殆どの人がマスクをしていることからも
分かるようにコロナから脱してないので、海外に行く気分になってないのでしょう。
アメリカに限らず、今夏も海外旅行をする人は多くないとニュースで言っておりました。
為替、インフレ、航空券の高さが原因かと思います。
先週ラスベガスから帰りましたがコロナ前と比べると、
航空券は3-5倍、円安やチップ高もあり物価は2倍程度に感じました。カジノもテーブルゲームのミニマムは10ドルで5ドルは見なくなりました。
航空運賃がコロナ前と比べて倍になっています。更に燃料サーチャージに円安とトリプルパンチです。
今年の2月、3年半ぶりにラスベガスに行きましたが、2019年に比べたら、ほぼ倍でした。今年の9月も予約しましたが、2月と変わらずの価格でした。来年ぐらいには下がるのではないかと思ってる方が多いようです。
航空運賃高いですよね。
行ってしまえば現地で使う分はそれほど気にしませんが、日本で航空会社のサイト開けて
夫婦二人で往復50万……と出てくると行く前にめげてしまいます。
あと、勤務先に「アメリカ行くので1週間休み取ります」はまだ少し言いづらいかも。
ラスベガスの5位は全米4位で750機を保有するサウスウエストのハブというのが大きいと思います。JAL ANAは230機程度。そして日本はお金を落とす国から落とされる国に変わりました。
かつてのラスベガスのようにホテル代が安くてカジノで儲かるスタイルが変わってホテル代も高騰し、日本人の賃金は上がらず。 20年前ならフリーターでもベラッジオに泊まれましたが、今のラスベガスのストリップの価格は高収入の人でも手出しが難しいです。