超一等地に出現したラーメン店をみんなで応援しよう!

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 日本を離れてしばらく時間が経過すると、無性に和食系のものが食べたくなったりするもの。そんなときに真っ先に脳裏に浮かんでくるのがラーメン

Ramen-Ya  最近ではラーメンブームにあやかり、ストリップ地区のホテル街でもフードコートやカフェなどでラーメンを出す店が増えてきているが、内容が伴っていないことが多いのも事実。ましてや専門店となると、郊外でこそ無数に存在しているものの、ホテル街で見かけることはほとんどない。
 ちなみに、かつてシーザーズパレスの高級和食店 NOBU で、かなりまともなラーメンを扱っていたことがあったが(この週刊ラスベガスニュース第897号で紹介)、高級店としては採算に合わなかったのか、今はメニューから外されてしまっている。また第903号で取り上げた YUSHO のラーメンも、サイズ的、値段的に今ひとつで、結局ラーメンブームとはいえ、ホテル街ではまともなラーメンにありつけないのが現状だ。

Ramen-Ya  そんな中、このたび待望のラーメン店、その名も Ramen-Ya が、ラスベガスの繁華街のど真ん中ともいえるバリーズ・ホテルの「グランドバザール・ショップス」(写真。第945号で紹介)内にオープンした。
 運営しているのは、サンフランシスコの日系コミュニティーでは知らない人がいないほどの超有名店 Katana-YA(刀屋)。サンフランシスコの中心地「ユニオンスクエア」の近くということもあり、日本人ばかりか地元アメリカ人、さらには世界中からの観光客の間でも口コミで話題となっている人気の店だ。

Ramen-Ya  それだけ人気がある店ならこのベガス店も前途洋々で安泰だろうと思われがちだが、なかなかそうでもなさそうなところがむずかしい。
 せっかくベガスに進出した Katana-Ya が「味は悪くないのにすぐに撤退」ということになってしまっては、今後ラスベガスを訪れるラーメン・ファンにとって大変不幸なことなので、この記事は「みんなで応援しよう!」という主旨で書いている。決して有料の記事広告やステルス・マーケティングではない。

Ramen-Ya  では何が経営をむずかしくしているのか。それはずばり家賃だ。
 なんと驚くことなかれ、現場の責任者で元力士の Makiyama 氏(写真)、および Muneyasu 氏いわく、一ヶ月の家賃は約 35,000ドルとのこと。
 いくら超一等地とはいえ、そして光熱費込みの家賃とはいえ、貴金属店など高額商品を扱う業種ならいざ知らず、ラーメン店にとってこの高額な家賃は途方も無く重い負担であることはまちがいない。
 家賃が高いとすべては悪循環で、広いスペースを借りることが困難になり、店内に十分なダイニング・スペースを確保することがむずかしくなる。その結果、この店には奥まったところに、わずか 11席のカウンター席があるだけで非常に狭い。
 悪循環はさらに続く。席の数が十分でないことから、すぐに店内で食べることができず、空席の順番を待ちきれない客は持ち帰りを選択することになる。その比率、半数以上というから驚きだ。
 たぶんバリーズなど宿泊ホテルの客室内で食べるのだろうが、麺はコシが命。出来たてを食べるのが当たり前の日本人の感覚では、持ち帰りなどあり得ないが、そのまま食べずに去ってしまう客よりも、店にとってはありがたい存在であることはまちがいない。

Ramen-Ya  結局、持ち帰り客の利便性にも配慮せざるを得なくなり、現在この店ではカップ型の容器にラーメンを入れて販売している (写真)。
 伝統的なラーメンのドンブリとはほど遠い形状で、一般の日本人にとっては馴染みにくいわけだが、今ここの読者の多くは、「自分は持ち帰らないから関係ない」と思っているにちがいない。
 しかしその考えは甘い。店内で食べる場合もその容器だ。ここにも家賃が影響している。
 たとえスペースを十分に確保できなくても、味の部分では妥協するわけにはいかない、というのが Katana-Ya の魂を引き継ぐ Ramen-Ya の経営哲学で、調理場のスペースを削ることだけは選択肢になかったようだ。
 結局、省くことができるのは洗い場ということになり、その結果が、「店内で食べる場合もすべての食器は使い捨て」になっている。(大規模な洗い場などの設置に関しては排水施設などに対する衛生管理当局の認可が複雑になるという理由もあったようだ)
 そのようなわけで、見かけはかなり変則的なラーメンになってしまっているが、日清のカップヌードルに代表されるタテ型カップ麺の容器が一回り大きくなっただけと考えれば、馴染みがない容器ではないはず。ここはひとつ、容器の形状には寛容になり、高額家賃による不便や苦労を店側と一緒に分かち合うという気持ちが必要なのではないか。

Ramen-Ya  メニューはもちろんラーメンが中心だが、ちゃんとカレーも用意されているところがうれしい(写真はビーフカレー)。カレーは多くの人にとって、ラーメンと並び、日本を離れて恋しくなる食品の代表格のはずだ。
 また、「伸びてしまうラーメンの持ち帰りなど考えられない。でも何か持って帰って部屋で食べたい」という人のために、のり巻きメニューもいくつか用意されている。

 さて、気になる味に関してだが、すべてを食べたわけではなく、勝手なコメントをしてしまっては店に対しても利用者に対しても無責任かつ失礼になるので、それを知りたい人はサンフランシスコ店の評判などを各種サイトで参照して頂くとして、ここではコメントを割愛する。
 ちなみに味噌ラーメンを食べた限りでは、極めてオーソドックスなクセのない素直な味で、麺はやや太めの縮れ麺だった。なお容器は手に持ってもやけどしないように、下半分が断熱効果のある紙製のスリーブで覆われており、またそれが保温力も高めているので、見た目はあまり良くないが機能性は高い。
 値段は、味噌、しょう油、塩など、各種ラーメンが $8.88、カレーも、チキン、ビーフ、ベジタブル、すべて $8.88。のり巻きは $6.00 から $8.00 まで。鳥のから揚げと、揚げギョーザは $4.00。
 これらの価格設定を高いと感じるか安いと感じるかは人それぞれだろうが、これで1日 $1000 を超える家賃を賄わなければならないことを考えると、安いことはあっても高すぎることはないだろう。

Ramen-Ya  この価格設定では、よほどの数の人が利用しない限り採算を取るのがむずかしいのではないか。だからといって高くすると、客足が遠のいてしまう。また、運が悪いことに、超一等地であるにも関わらず、このショッピングモールの中、特にこの店が入居している列の通路は意外にも人通りが少ない。(上の写真は、ストリップ大通り側からバリーズホテル方向を見たときのメインの通路。Ramen-Ya はこれよりも1本左側の通路にある)
 したがって、店側としては、ぶらぶらと街を歩いている通行人が偶然気づいてくれるような場所ではないので、意識して来てもらう必要がある。
 当サイトはこの店となんら利害関係にないが、せっかくホテル街に誕生したラーメン店がすぐに消え去るのは(実際にすでに消え去っているテナントが少なくない)、日本人として非常に残念かつ悲しいことなので、ラーメン・ファンはぜひ足を運んで応援していただきたい。営業時間は午前11時から深夜12時まで。

 最後に、Makiyama 氏は幕下14枚目まで番付を上げた時津風部屋の元力士で、現役時代の四股名は松浦潟(まつうらがた)。
 一生懸命にラーメン作りに専念していた手を止め、キッチンの奥の引き出しに大切にしまってあった現役時代の土俵上の写真を取り出し、それを見せてくれながら、「いつかは相撲教室のようなものを開き、アメリカでも相撲を広めたい」と夢を語るその目は美しく輝いていた。
 氷川きよしのズンドコ節に、「♪ 向こう横丁のラーメン屋、赤いあの娘のチャイナ服、そっと目くばせチャーシューを、いつもおまけに2~3枚」という歌詞があるが、「松浦潟さん!」と声をかけ目くばせすれば(番付が十両以上ではなかったので 「松浦潟関!」と声をかけてはいけない)、本当にチャーシューをおまけしてくれそうなやさしい店長だった。
 今回の取材でおまけを約束してくれたわけではないが、店長がいたときにはぜひ声をかけてみるとよいだろう。きっと喜んでくれるはずだ。

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