室内外の気温差 20度! 各ホテルの空調温度比較

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 40度超えは当たり前。今週は、そんな当地の夏を不快に思うのではなく、日本ではあり得ない貴重な自然環境や猛暑文化を体験しながら、ついでにトリビア的な猛暑関連の「理科」も楽しんでしまおう、という話。

 アメリカ全土で見たら西海岸地域ということになるが、それでも海から 400km も離れた内陸にあるラスベガス。
 温度変化が少ない海水に守られていないばかりか、砂漠の大地には水分がほとんど含まれていないため、日射量の増加がすぐに地表温度の上昇に直結。気温も連動して急上昇しやすい。
 そして来週6月21日(日本では22日)は一年で最も日射量が多い夏至。天気予報によると、これからの一週間の日中の最高気温は43度前後になるという。まさに本格的な猛暑シーズンの到来だ。(下の写真は16日午後3時頃に撮影)

 そんなことを書くとベガス旅行を躊躇してしまう読者もいるかもしれないが、それほど心配する必要はない。カラカラに乾燥しているため、蒸し暑い日本の夏ほど不快ではないからだ。
 ちなみにこの時期の湿度は 5~15%。東京の夏のそれが 70%前後であることを考えると、いかに超低湿度であるかがわかる。
 出た汗はすぐに乾き、衣服が肌にベタつく感じもほとんど無い。そんなこともあってか、「日差しは暑いというよりも痛い」と表現されることが多いベガスの夏。何やら恐ろしい感じがしないでもないが、この時期に訪問する限りそれを避けて通ることはできない。ならばそれも旅の貴重な体験として楽しまない手はないだろう。

 初めてベガスの夏を体験する者にとって、驚くのは超高温超低湿度だけではない。外気温と室内気温の差も多くの人にとって未体験ゾーンのはずだ。
 日本では節電などの理由で室内の空調温度を 28度に設定するように奨励されていると聞くが、ベガスに限らずアメリカではそんな高い温度設定はありえない。では何度なのか。実際に6ヶ所のカジノホテルの館内の気温を調べてみた。

 というわけで、約22度前後に設定されていることがわかった。
 「省エネに無頓着だ!」といった議論は別にして、とにかくかなり低めの設定であることは間違いなく、外気温が42度だった場合、その差はなんと 20度ということになる。日本でこの数値が10度を超えることはほとんどないと思われるので、多くの日本人にとって、この気温差20度は初体験となるにちがいない。
(冬の内外気温差ならば日本でも寒冷地で 20度を超えることがあり得そうだが、冬は顔以外、衣服を着込んでいるため温度差を瞬間的に肌で感じにくく、またエアコンと汗による急激な気化熱の発散がないため、夏ほどは温度差を体感しにくいはずだ)

 猛暑の炎天下を歩いたあと館内に入った瞬間のこの温度差の快感はなんともいえない。ぜひベガスならではの風物詩として体験していただきたい。
 といっても冷房が苦手な者は、その快感もすぐに苦痛となってしまうこと間違いなし。日頃から 22度前後の気温を寒いと感じるようであれば、何か羽織るものは必携だ。
 ちなみにナイトショーなどの劇場の気温はカジノフロアよりもさらに 1~2度低いとされる。その理由として、ステージ上で激しく動く役者にとって 22度では暑すぎるから、煙などの演出においては低温のほうが効果を出しやすいから、といった噂をときどき耳にするが、事実関係を確認していないので都市伝説の可能性もある。いずれにせよ劇場の気温が低いことはたしかなので、寒さ対策は忘れないようにしたい

 夏のベガスにおいて空調温度と並んで気になるのは紫外線
 「ベガスの紫外線は半端ではない」といった言葉をしばしば聞かされるが、それは必ずしも正しいとはいえない。湿度や気温とは異なり、日本と大差ない可能性があるからだ。

 ここからはかなり理科っぽくなってしまうが、紫外線量を左右するおもな要因は天候と緯度、そして標高。(大気が太陽光を遮断したり吸収したりするため、空気が薄い高い場所では紫外線が強い)
 したがって、晴れの日が多いという意味では「ベガスは紫外線が強い都市」といえるが、日本の都市でも晴れていれば、緯度と標高の条件次第でベガスと同じような紫外線量になり得るわけで、紫外線の強さをベガス独自の特徴として語ることは適切ではないだろう

 ちなみにベガスの緯度は北緯36度05分。これは日本の関東地方の北部、具体的には埼玉県熊谷市と同じ。ベガスの緯度が特別に高いわけでも低いわけでもないことがわかる。
 高度も 650メートル前後で、比較的高い場所ではあるものの、日本の都市に存在しない高度ではない。ちなみに長野県塩尻市(標高700m)が緯度も高度もラスベガスとほぼ同じだ。というわけで、紫外線に関しては、ベガス独自の特徴は見い出せない。
 なお、湿度が低いことが大気中の紫外線の吸収に関係してくる可能性はあるが、水蒸気は赤外線など赤色方向のスペクトルに作用する傾向にあり、紫外線にはあまり影響を及ぼさないとされている。

 観光情報とはほとんど関係ない硬い話ばかりを長々と書いてきたので、ここまで読み進めてくれた読者はあまりいないと思われるが、せっかくなので猛暑関連のトリビアをもう一つ。
 日本からの観光客が必ず使うマッキャラン・ラスベガス国際空港の 7L/25R(この数値の意味は後述)という滑走路は、全米でも屈指の長い滑走路で、軍用飛行場を除けば、これよりも長いものはデンバーニューヨークのケネディー空港などごくわずかしかない。

 この滑走路が長い理由は、猛暑高度(約660m)に関係がある。
 気温が高いと空気は膨張する。そして高い場所では空気が薄い。つまりラスベガスの夏は気温と標高のダブルパンチで空気が薄くなり、結果としてエンジンに取り込まれる酸素が減り燃焼効率が下がり出力の低下を招くばかりか、翼を下から押し上げる揚力の低下にもつながり、これまたダブルパンチで離陸の際に悪影響を及ぼすことになる。

 つまり安全な離陸速度を確保できるようにするために滑走路が長く作られているというわけで、標高 1650m にあるデンバー空港の滑走路が長いのも同じ理由だ。
 ちなみにラスベガスに近く、日本人観光客もよく利用するグランドキャニオン空港は標高が 2010m の位置にあるにも関わらず、滑走路の長さが 2743m しかないため、気温が高い日には離陸重量オーバーとなりやすく、しばしば乗客の何人かが強制的に降ろされることになる。これも猛暑に関わる「困った風物詩」といってよいだろう。

 猛暑のトリビアに飛行機があれば車もある。ずばり、エンジンの圧縮比が極めて高いよほどの特殊な車でない限り、年間を通じたデンバーや、夏期のラスベガスにハイオクガソリンは不要だ。
 今はそのことが書かれているかどうかわからないが、かつては日産自動車のオーナーズ・マニュアルに、デンバーなどの高地ではハイオク不要ときちんと書かれていた。(最近は、ハイオクがドル箱であるガソリン業界に配慮してか、あまりそういった記述を見かけなくなった)
 つまり高温と標高で空気が薄い条件下では、ターボなどを搭載していない自然吸気のエンジンである限り、吸気後のシリンダー内の圧力が低いため、ハイオクでなくてもノッキングを起こさないというわけだ。これなどは地元ならではのかなりのトリビアといってよいのではないか。

 なお蛇足ながら、先ほどの滑走路の名前 7L/25R の意味についてもふれておきたい。これら数字は飛行機が進入する際の方向を表しており、真北がゼロで東まわりに360度の角度が割り振られている。つまり真東が90、真南が180ということになるが、10分の1で表記することになっているので、真東は9、真南は18 と表現される。
 L と R は Left と Right の略で、2つの滑走路が平行して近接している場合、区別しやくするためのものだ。
 したがってたとえば東西に2本平行して存在する滑走路の北側の滑走路には 9L/27R という名称が付けられ、滑走路の西端の路面に 9L、東端に 27R がそれぞれ大きく白でペイントされることになる。
 なぜなら、西から進入する場合の方角は東向き、つまり北から右回りに90度(10分の1表記なので 9)、同様に東から進入する場合は西向き 270度なので 27 になるからだ。

 さてここでまた重要なトリビア。このラスベガス国際空港の最長滑走路はしっかり正確に東西に向かって伸びているにもかかわらず 9L/27R ではなく 7L/25R となっている。その様子はグーグルマップなどで滑走路の両端を超拡大してみると確認することができる。
(下の写真がまさにそれ。タップまたはクリックで拡大すると、左下に 25R の文字がかすかに見えるはずだ)

 なぜそうなっているのか。実は航空業界で使用されている東西南北は、地図上の幾何学的な東西南北ではなく、磁石の針が向く方向でさだめられているからだ。磁北極は、地球の地軸のいわゆる一般的な北極とはかなりずれた位置にあるためにこのようなことが起こってしまうのである。

 もうここまで来ると、読み続けてくれている読者はほとんどいないと思われるので、うんざりされたついでにもう一つ。冒頭でふれた夏至の話題
 日射量が最大といっても夏至の今の時期、日本では7月、8月ほどは暑くない。梅雨で天気が悪いだけでなく、温度が上がるのに時間がかかる海に囲まれているためだ。
 一方、ベガスの夏の到来は早い。6月は完全に真夏で、6、7、8月の3ヶ月間は似たような気温となっている(厳密には7月が一番暑い)。したがって、6月に訪問を予定している者は、すでに完全な真夏の猛暑であることを覚悟しておくべきだろう。
 それはともかく夏至について勘違いしている人が多い。「一年のうちで日照時間が一番長い日」というのは正しいが、「日の出の時刻が一番早い日」というわけではない。「日の入り時刻が一番遅い日」でもない。
 日の出から日の入り時刻までの日照時間が一番長いというだけのことで、一番日の出時刻が早い日は、日本もアメリカも今年であれば 6月13日前後だ。同様に日の入りが一番遅いのは 6月29日ごろだ。
(「今年であれば」、「ごろ」と書いた理由は、日米の時差もさることながら、地球の公転軌道が楕円であることから太陽と地球の位置関係が毎年微妙に変わるため)
 12月22日前後の冬至も同様で、最も日の出が遅い日は冬至ではなく 1月8日前後、そして最も早い日の入りは 12月6日ごろだ。
 そうなってしまう理由は、むずかしい三角関数などを知らなくても、地軸が 23度ほど傾いている地球儀を、太陽に見立てた物のまわりで回して(公転と自転させて)見るとなんとなくわかるのではないか。
 また、実生活の中でも体感しているはずだ。たとえば夏至よりも早い6月初旬にたまたま早起きすると驚くほど早い時間帯から夜が明けていることに気づいたり、冬至前の晩秋の日暮れが非常に早かったり、1月の朝、出勤の支度をしているときにまだ外が暗かったりすることなどは多くの人が体験していることだろう。

 周囲が山で囲まれているラスベガス。日の出、日の入りという言葉が出たのでその定義にもふれておく必要がありそうだ。
 太陽が沈む方向に高い山があった場合の日の入り時刻はどのように決められるのだろうか。ない場合よりも早まるのか。
 じつは山があってもなくても関係ない。日の入り時刻とは、その土地がまっ平らだと仮定した場合の地平線(あるいは水平線)に太陽が沈んで見えなくなった瞬間の時刻のことで、山の端に沈んで見えなくなった瞬間ではない。
 もし山の端で定義するならば、少し場所がずれただけで山がじゃまにならない位置があったりするわけで(細くとんがっている山ならなおさらそのようなことになりやすい)、日没時刻をいくつ用意してもたりなくなってしまう。
 また、高い山の東側にへばりついている町では、午後すぐに日陰になるので日没時刻が午後3時などといったことが起こり得るわけだが、それではまずい。
 そもそも太陽が山にかくれただけならば、その町はただ単に日陰になるだけで、その上空は青空のままでほとんど暗くならない。
 というわけで、ラスベガスの周囲は山だらけなので、当地の日の入り時刻は、太陽が実際に山にかくれる時刻よりもかなりあと、ということを覚えておいていただきたい。もちろん日の出も同様だ。

 日没といえば、ラスベガスで夜景を撮影するのは意外とむずかしい。空の明るさと、ネオンや建物などの撮りたい被写体の明るさが大きく異なってしまいがちだからだ。つまりコントラスト差が大きく、よほどダイナミックレンジが広いカメラでないとまともに撮れない。いや、そういうカメラでもまともに撮れることはまずない。
 そのようなときは当然のことながらマジックアワーに撮るのがベストがということになるわけだが(マジックアワーに関しては各自で検索していただきたい)、マジックアワーはその街の照明や空などの環境で微妙に異なってくるものだ。
 ではベガスの場合はいつがいいのかということになるが、ベラージオの噴水ショーなどを撮影する際のベストのマジックアワーは日の入り時刻から 20分後ぐらいがちょうど良いように思える。タイミングよくその時間帯に噴水ショーが行われるかどうかはわからないが、常にマジックアワーを意識して撮るようにするとよいだろう。
 もうだれも読んでいそうもないので、ゴルフコースの猛暑割引の話はまたの機会とすることとし、このへんで終わりにしたい。

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