話題沸騰のホワイトキャッスル、味は賛否両論

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 先月末、熱狂的ファンが長蛇の列を作るなか、アメリカ人ならだれもが知るハンバーガーチェーン店「ホワイトキャッスル」Casino Royale 内に鳴り物入りでオープンした。(下の写真は店内の様子)


 年中無休 24時間営業の店としてスタートしたものの、1時間当たり 4000個が売れるというあまりの大混雑で、材料の補給、清掃、スタッフの休憩などのために数時間の一時閉鎖を余儀なくされるなど、その活況ぶりに地元メディアの間でも話題が沸騰。
 今週は、西海岸地域に初めて進出して注目を浴びているこのホワイトキャッスルを紹介してみたい。

 なぜこの店がそれほど有名で、またそんな騒ぎになっているのか。
 それにはいくつか理由がある。まずはなんといっても「first fast food」(最初のファーストフード店)と称される歴史と伝統だろう。
 創業は驚くことなかれ 1921年。日本でいえば大正10年、安政3年生まれの原敬が東京駅で暗殺された年で、関東大震災の2年前だ。
 現代の形のハンバーガーが広く知られるようになる前の時代とのことなので、まさにハンバーガーチェーン店のパイオニアといってよい。

 参考までにアメリカの代表的なハンバーガーチェーンであるマクドナルド、バーガーキング、ジャックインザボックス、ウェンディーズの創業はそれぞれ 1940年、1953年、1951年、1969年。ホワイトキャッスルの突出ぶりがうかがえる。

 もう一つの理由としては、名前の通り店舗が城の形だったということも、人々から注目される要因になったことはいうまでもない。(写真はストリップ大通り側から見た外観。クリック・タップで拡大してみると、城の形になっていることがわかる)
 さらに形といえば、2インチ x 2インチ、つまり約5センチ四方という小さなサイズや形状も(創業当時はもう少し大きかったらしいが)、今となっては珍しい存在で、結果的に他のハンバーガーチェーンとの差別化に成功している。
(下の写真のように、一つ一つが小さな箱の中に入っている。それが4箱とポテト1箱、そしてソフトドリンクがセットになったものが標準メニューで $7.99)

 そしてその小さなサイズこそが、近年流行している「スライダー」のコンセプトの元祖とされ、そんなこともこの店に対する敬愛の念や熱狂的信者を増やす要因となっているらしい。
 ちなみにスライダーとは、一口サイズのハンバーガーのことで、その語源はのどをスライド、つまりのどを簡単にすべるように落ちていくほどサイズが小さいということから、そのように呼ばれるようになったとされている。
(スライダーを食べることができる店に関しては、この週刊ラスベガスニュースのバックナンバー 614号で特集)

 その程度の特徴だけで長蛇の列ができているわけではない。実は西海岸地域に住む者、すなわちラスベガスの住民はもとより、ベガスへの観光客の中で一番多いロサンゼルスやサンフランシスコからの訪問者にとって、今回の出店は歴史的な大ニュースなのである。
 というのも、冒頭でふれた通り西海岸では初めての店舗で、これまでは生の(冷凍ではない) ホワイトキャッスルを食べる機会がまったくなかったからだ。この「生の」という部分に意味がある。

 創業 94年のチェーン店が西海岸に店舗を一軒も持っていなかったというのは意外かもしれないが、カンザス州創業で(現在の本社はオハイオ州)ファミリー経営に徹していたホワイトキャッスルにとって西海岸は目が届かない遠い存在で、既存の約400店もすべてがロッキー山脈より東側に位置しており、今でもビジネス展開の場はシカゴなど五大湖地方およびその周辺、そして東海岸の一部に限定している。
 したがって、これまではラスベガスから一番近い店とされるミズーリ州にある店舗でも約2500km も離れており、西海岸に住む者にとって冷凍ではないホワイトキャッスルのバーガーを食べることは一種のあこがれであった。

 ではなぜ西海岸の住民は、北海道から九州よりも遠いような地域の食べ物に興味を示したり、その存在を知っていたりするのか。
 実は、ホワイトキャッスルのバーガーは、冷凍モノ(写真)であれば全米50州のスーパーマーケットで売られているのである。つまり西海岸においてもだれもが知る有名な商品で、毎日のように食べる熱狂的ファンも少なくない。ただ生のモノ(店頭モノ)だけは 2500km 離れたところに行かなければならず、そういった事情が今回の騒動の背景にある。

 開業後約1ヶ月が経過し、長蛇の列ができるようなことは少なくなってきたが、気になる味のほうはどうか。
 これに関しては地元メディアも「冷凍モノ 対 店頭モノの味比べ」など、あれこれ報じており、やはり「店のほうがおいしい」という意見が目立っているようだが、「大差ない」、「冷凍のほうがおいしい」といった意見も聞かれる。
 実際に両方を食べ比べてみたところ、大差ないというのが正直な印象だ。
 ちなみに店舗での調理方法は Steam-Grilled をウリにしており、しっとり感があるバンが特徴だが、冷凍モノも解凍方法によってはいくらでもしっとり感を出せるので、そのへんの評価は微妙だ。

 ここの読者の大部分は、冷凍モノも店頭モノも食べたことがないはずなので、その比較論よりも、バーガー自体の内容を知りたいところだろうが、どちらも食べ物としては極めて平凡と言わざるをえない。(写真はこの店で買ったバーガー)
 くわしい内容に関しては各サイトなどで調べてもらえばわかることだが、とにかく非常にシンプルなのが特徴で、トマト、レタスなどは入っていない(チーズは選択可能)。
 味付けに関してもシンプルで、ソース系でもケチャップ系でもマヨネーズ系でもなく、かすかな塩味が付いているだけだ。
 つまり味付けは自分であとからケチャップなどで調整するのがこのバーガーを食べる際の流儀で、これを個性がまったく無いとマイナスに評価するか、好きなように味を変えられるとプラスに捉えるかは意見が分かれるところだろう。

 いずれにせよ、あまりにもシンプルなため、他のブランドのハンバーガー以上に賛否両論、意見が大きく分かれているのがこのホワイトキャッスルの特徴で、これだけ有名かつ伝統あるバーガーであることを考えると、とりあえずバーガーファンは食べてみるしかないだろうというのがここでの結論だ。

 場所は、ミラージュホテルの火山の位置から見てストリップ大通りを挟んだ向かい側。入口は外からでも見えるが、店自体は Casino Royale の中にある。年中無休の 24時間営業。

 値段は前述の通り、バーガー4個の標準セットメニューが $7.99、それをチーズ入りにすると $8.99、バーガーだけは 10個 $11.99、30個入りボックスが $34.99、100個入り巨大ボックスが $109.99、ビールは $3.99 で、グラスの底から注入してくれる特殊な注ぎ方法 “Bottoms Up” がおもしろい。

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