今週は、3月8日に LINQ 内にオープンした「ブルックリン・ボウル」を紹介してみたい。
LINQ とは、フラミンゴ・ホテルとクアド・ホテルの間の道路に沿って再開発された全長約370メートルほどのエンターテインメント & ショッピング・プロムナードのことで(下の写真)、起点はストリップ大通り、終点は世界最大を誇る観覧車 “High Roller” となっている。ちなみにその観覧車は、現在まだ試運転中のため乗ることはできないが、開業は限りなく近い。
LINQ 自体もまだ完全に工事が終わったわけではないが、すでに多くのショップやレストランが開業もしくは開業の準備をしており、ほぼ完成と考えてよい状態で、そんな中、LINQ 最大のテナントとして注目され、鳴り物入りでオープンしたのがブルックリン・ボウルだ。
「ブルックリン」とは、もちろんニューヨークにある地区の名称なので、特に説明の必要はないだろう。
「ボウル」という限り、ボウリング場であることに違いはないが、ただのボウリング場ではない。ナイトクラブ、コンサート会場、レストラン、酒場がすべて一ヶ所に合体したような独創的な施設で、ニューヨークでは知る人ぞ知る話題のエンターテインメント・スポットだ。
今回オープンしたのは、そのラスベガス店ということになる。レーン数は32(2フロア)。
意外にも歴史は浅く、そのニューヨーク本店がオープンしたのは 2009年。本店があれば支店もたくさんありそうだが、なんとこのラスベガス店はまだ3店目。ロンドンにある2号店も、つい先日オープンしたばかりというから、ニューヨーク以外には歴史も実績もまったくないに等しい。
したがって、これまでニューヨークにしか存在しなかったローカル・ビジネスが、地元での成功に自信をつけ、いよいよ今年から世界展開を始めたという状況だ。
ニューヨークで成功を収めたのは、クラブや酒場との「合体」が珍しかったからではない。地球環境に配慮した企業哲学も話題集めに一役買ったようだ。
壁や床はすべて廃材やリサイクル材、テーブルやイスや家具なども中古品や廃品の再利用、トイレは節水設計、照明はすべてLED などなど、とことんエコロジーを意識したその経営方針はさまざまな方面から注目され、結果的に大いなる宣伝になったことは想像に難くない。
もちろんその逆に、「大音量のナイトクラブを深夜や早朝まで営業していることがエコなのか!」といった指摘もあるようだが、しょせんはビジネス、そんなことはどうでもよいだろう。
利益を出せなければ従業員の給料も税金も払えないわけで、「エコはあくまでもパフォーマンス、本音は利益」であったとしても誰も批難はできまい。
今回オープンしたラスベガス店も、ニューヨーク本店ほどは徹底されていないものの、かなりそのエコのポリシーを全面に押し出しており、廃材やリサイクル品が目立つ (写真はラスベガス店の壁)。照明も本当にすべてが省電力型かどうかは確認できないが、たしかに LEDと思われる光が多い。ボウリングのピンをセットするマシンも省電力型を導入したという。
そんな涙ぐましい節電努力の一方で、ほとんど客がいない午前中の時間帯、入口から上層階へ通じる長いエスカレーターが、黙々と動き続け大量の電力を消費しているさまはご愛嬌といったところか。日本なら、利用者が接近したときにだけ動くエスカレーターを導入していることだろう。
さてここはボウリング場、その説明をしなければならないわけだが、純粋にボウリングを楽しみたい者にはまったく向いていない。そもそも始めから通常のボウリング場を目指して運営されているわけではないので、それはそれでいいとして、ではどんな人を対象とした施設なのか。(上の写真は公式サイトから)
それはずばりパーティーだ。「ボウリングをやりながらパーティー気分も楽しむ」というよりも、「パーティー会場の横にたまたまボウリング施設もあった」と考えたほうがよいほど、パーティーに軸足をおいた施設となっている。
そのことは、物理的なハード面でも運用的なソフト面でも見ることができ、たとえば一般的なボウリング場でイスが設置されている部分にはゴージャスな革製の大型ソファーとテーブルが置かれ、料金体系はゲーム数ではなく時間制が採用されている。
ここまでの説明なら、通常のボウリング場とさほど変わらないようにも思えるが、それだけで終わらないのがこのブルックリン・ボウルのすごいところ。
パーティーをコンセプトとしているからにはアルコールと食べ物も欠かせないわけだが、そのための担当スタッフが各レーンに付く。
つまり彼らにオーダーすることによって、通常のレストランのように飲食が可能となる。
「しょせんはボウリング場、味など期待できない」と思うなかれ。調理しているのは、ニューヨークで屈指の人気を誇るシーフードレストラン「Blue Ribbon」監修のキッチンだ。
ちなみに Blue Ribbon 自体はシーフードで有名だが、このボウリング場内では、手軽に食べられるフィンガーフードが人気で、なかでもチキン料理が名物となっている。
アメリカでチキンといえばメニュー内で「Dark」(もも肉)と「White」(胸肉)に区別されていることが多く、この店でもそうなっているが、価格設定はありがたいことに、日本人に人気の Dark のほうが2割ほど安い。伝統的に Dark のほうが精肉業者からの卸値が安いので驚くべきことではないが、ここ数年、アメリカ人の間でもパサパサした White よりもジューシーな Dark の人気が高まっており、需給バランスの変化で卸値の価格差がなくなってきていることを考えると、Dark ファンにとって 2割安は朗報だろう。
ボウリングだけの利用も可能だが、ここで飲食しない者はまずいない。特に夜の時間帯はほぼ全レーンがパーティーモードで盛り上がり、ボウリングなどそっちのけといった感じのグループがほとんどだ。
そもそも、とてもエコとは思えない大画面のスクリーンが正面にずらりと並び(写真上)、そこでスポーツ番組などを流しているので、仲間が投げたボールのゆくえやスコアなどを気にしている者はもともと少ない。とにかくワイワイ飲み食いしながら楽しむのがこのボウリング場のスタイルだ。(下は隣接する Blue Ribbon 監修のレストラン。昼の時間帯は利用者が少ない)
というわけで、もし一般の日本人観光客が利用する場合も人数は多いほうがいい。
ちなみに料金体系は人数に関係なく(ただし 8人まで)、1レーン 30分 $30(6pm よりも前は $25)。時間をあけずにきちんとプレーすれば 1時間に6ゲーム投げることができるので、1ゲーム $10 という計算になる。
それにレンタルシューズ($5)、飲食代、および担当スタッフへのチップが必要になるので、決して安いボウリングではないが、特殊な環境の場所代と考えればリーズナブルといってよいのではないか。
営業時間は日曜日から木曜日が 11am~2am、金曜日と土曜日が 11am ~4am。なお、コンサートが行われる場合や、ナイトクラブ (ダンスフロアのサイズは約10m x 15m) が運営される日は、営業時間が変わったり、別途入場料が必要になることもある。8pm 以降、21歳未満の入場は不可(パスポートなど、年齢を証明するIDの提示が必要)。場所はストリップ大通りから観覧車に向かって4分の3ほど進んだ地点の右側。
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