障害物が少ないラスベガスは熱気球ライドの最適地

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 ラスベガスでの楽しみはカジノやナイトショーだけではない。
 大自然に囲まれたこの地ではアウトドア系のアクティビティーも盛んで、ラフティング、スカイダイビング、ロッククライミング、乗馬、雪上スキー、湖上スキー、フィッシング、ジップラインなど、数え出したらキリがないほどいろいろある。

 そんな中、意外と知られていないのがバルーンライド、つまり気球だ。
 気球といっても、退屈きわまりない「係留フライト」ではない。

 バルーンライドは、飛行スタイルによって大きく2つに分かれており、ひとつはその係留フライト、もうひとつがフリーフライトだ。
 前者は、気球がロープによって大地につながれており、現場の上空に浮上したあとはその場に静止しているだけで、変化に乏しく退屈しやすい。
 一方、フリーフライトは文字通り自由に風に流され飛んでいく爽快なライドで、スリルも楽しさも係留型の比ではないが、費用が高いのが難点。

 気球は、もうひとつ浮上原理によっても大きく2種類に分けることができる。
 ヘリウムなど外気よりも軽い気体を充満させて浮上するガス気球と、空気を熱し膨張させ外気よりも密度を軽くして浮上する熱気球だ。

 今回紹介するのは熱気球によるフリーフライトで、バルーンライドの中では最も正統派かつ人気のスタイルといえるだろう。

 そんな熱気球のフリーフライトがラスベガスで楽しめるようになったのは、なにも最近のことではなく、以前からあった。
 ただ、運営側において費用が非常にかかることから一般の人を乗せるビジネスとしては成り立ちにくいのか、オーナーが採算性を度外視し趣味の延長でやっているようなケースが多く、業者もひんぱんに入れ替わってきたのが現状だ。

 機材などは年々進化してきているようではあるが、その高コスト体質のビジネス環境は今になっても特に大きな変化はない。
 バルーン自体の高価な球皮が消耗品であるのと(設営時や片付ける際に地面にこすれて傷みやすいばかりか、飛行している間にも劣化する)、毎回とてつもない量の燃料(プロパンガスが一般的)を消費し、それをわずか数人の利用客で負担しなければならず、このコストの問題はどうにもならないようだ。

 そのため常に参加者が少なく、結果的に毎日確実に催行されるとは限らないことから、集客において旅行代理店などのサポートを得にくい環境にあり、一般の観光客にとっては身近な存在になり得ていない。

 そのような特殊な状況におかれていることは事実だが、敬遠する必要はまったくない。
 参加する側が積極的にアクションを起こせば、だれでも簡単に楽しめるのもバルーンライドの特徴だ。肉体的なトレーニングや知識などはまったく必要としない。

 積極的にアクションの意味は、旅行代理店などに頼らずに、自ら業者をネットなどで探して予約し、また、参加日なども業者側が決める催行日に自分の日程を合わせるぐらいの柔軟性を持ちながら、なおかつ現場までレンタカーで行くぐらいの積極性が必要ということだ。
 もちろん日本人スタッフや日本語通訳の存在など、手厚いサービスを期待してはいけない。

 なにやら敷居が高いようにも思えるが、興味がある者は以下の体験談を参考に、ぜひ参加してみるとよいだろう。
 とにかく日本では、一般の人たちがいきなり体験できるような場所はほとんどないと聞く。ラスベガス旅行はまたとないチャンスになるのではないか。

 まず最初に気になる料金についてだが、大ざっぱにいうと $150~300 といったところか。
 その日の参加人数などによって柔軟に対応してもらえることもあるので、予約時に確認してみるとよいだろう。

 次に催行の時間帯についてだが、今の季節は圧倒的に早朝が多い。つまり、日の出の前に所定の場所に集合し、日の出の頃に浮上、1時間ほど大空をさまよい、その後どこかの空き地に静かに着陸、といった感じの時間配分だ。
 日没の時間帯に催行されることもまったくないわけではないが、夏期は気温が高すぎるため、やはり早朝が一般的。

 空気を温めて飛ぶことから、気温が高いほうが条件が良いようにも思えるがそれはまちがいで、熱して軽くなった気球内の空気と、外の空気の温度の違いによる比重差を利用して浮上するため、外気は冷たくて重いほうが浮力を得やすい。

 つまり浮力という意味では夏期はシーズンではないことになるが、冬期は上空が寒すぎるので、参加者にとっては心地よい気温の時期がベストシーズンということになる。
 今の時期は早朝でもやや暑いが、それでも日の出直前の空気はひんやりしており、まだ街の中が活動を始めていない静かな下界を見下ろしながらの御来光は、暑さや日頃の悩みや邪念を忘れさせてくれる格別なひとときだ。

 催行日に関しては前述の通り、すべての業者が毎日必ず催行しているわけではない。参加者が一人や二人では採算が合わないため、ある程度人数がそろってから催行を決定するというパターンが多い。

 また、一度催行が決まってから当日になって中止となることもある。この種の中止はおもに強風が理由なので、その場合はだれが悪いというわけではなく、あきらめるよりほかない。水平方向の推進力を持たない気球は、強風時はコントロールを失ってしまうからだ。

 そのような事情があるため、予約が受理されていても、直前まで催行が決まらないことがしばしばある。つまり催行業者側から、前日の夜になって参加予定者の滞在ホテルに電話があり、催行か中止かの最終決定が告げられることは珍しいことではない。
 したがって、自分の日程に余裕が無いとバルーンライドというアトラクションには参加しづらいことになる。

 離着陸の地理的な場所は、多くの場合、新興住宅街のサマリン地区が選ばれる。
 ストリップ地区のホテル街から西に直線距離で約20kmほどの場所で、このエリアには広い空き地や、未開拓の荒野が多く、気球の離着陸に適しているからだ。

 なお、ホテル街の上空を飛行したいという希望も多いようだが、残念ながら航空管制の理由からそれはできない。 気球は自由勝手に飛べるわけではなく、そのつど事前に航空管制当局の許可を得る必要があり、飛行範囲も高度も細かく指定される。

 ここまでに書かれた各種状況を理解し納得していれば、深い知識がないままいきなり参加しても、特に大きな問題に直面することはなく十分に楽しめるだろう。あとは予約をして、指示される所定の場所に行くだけだ。

 そしていよいよ本番ということになるわけだが、バルーンライドが初めての大多数の人にとって、現場で目にするすべての光景は新鮮に映ることだろう。
 ペシャンコに折りたたまれたバルーン内にどうやって空気を送り込むのか、見るまではだれもわからないのではないか。その答えは、巨大な送風機で風を送り込むということになる。(上の写真)

 ある程度ふくらむまでは、ガスバーナーの炎が球皮にふれて燃えてしまうので、最初はひたすら送風機で空気を送り込むことになるわけだが、だんだん膨らんでいく過程が見ていて面白いというか飽きない。
 その後に登場するガスバーナーも興味深い。音と放射熱が半端ではなく、そのパワーにはだれもが驚くことだろう。

 あとは籐(とう)で作られたゴンドラ(写真)に乗り込めば出発の準備は完了となる。
 ゆっくりと地面を離れる瞬間は、初体験者にとっては最も緊張かつ感動する場面ではあるが、あまりにも静かに離陸するのでその瞬間がわかりにくい

 なお、ゴンドラの材質が、原始的とも思える籐である理由は、軽くて丈夫な上、さらに着陸時に衝撃を和らげてくれるからとのこと。
 これはここの業者のゴンドラだけのことではなく世界標準らしい。天然素材がこのように生かされていると、なんとなくほのぼのした嬉しい気分になるので不思議だ。

 飛行中は常にバーナーに点火しているわけではない。上昇する必要が生じたときに秒単位で点火するだけだ。
 点火時の音はすさまじいが、点火していないときは、エンジン音が常にうるさい飛行機とは異なり、気球周辺はまったく音がしない世界だ。

 少々風が吹いていても、自分もその風と一緒に動いているのでほぼ完全な静寂
 そんな静かな空間に力強く放たれるバーナーの音は豪快であると同時に一種独特な情緒的な雰囲気の演出に役立っている。

 さて気になる進行方向、つまり操舵に関してだが、もちろん風に流されるしかない。しかしそれでは目的地へ行けないので困ってしまう。

 そこで重要になってくるのがパイロットの技量ということになるが、希望した方向に飛行できるカラクリは、その方向に流れている風の層を探すという極めて単純な原理。
 つまり、高度が異なれば流れている風の向きも違うというわけだ。自分は北に行きたいが風は南向きという状況でも、探せばどこかにきっと北向きの風はある、と信じてその高度を探す。

 ではどうやって、各層における風向きを知ることができるのか。実はこれもまた原始的な方法なので驚く。
 必要に応じてパイロットが風船を飛ばし、その上昇中の微妙な動きを目視でチェックするという方法だ。単純であるがゆえに奥が深いらしい。

 そんなことを繰り返しながら、約1時間ほどで目的地に着陸することになる。
 ちなみに目的地は固定的なものではなく、風の状況などに応じて毎回変わるのが普通とのことだが、変則的な風で例外的な場所になってしまう場合を除けば、おおむねサマリン地区内に着陸しているようだ。

 さて最後は予約に関して。催行業者自体が予約を受け付けている場合と、予約を専門としている業者が取り次ぐ場合などいろいろあるが、ひんぱんに業者が入れ替わっているので、特定の業者をここで示すことができない。
 ちなみに、実際に今回体験ライドしたパイロットも、ラスベガスに引っ越して来てから一ヵ月しか経っていないと言っていた。

 過去にもいくつもの業者が現れては消えている。この業界の人たちは気球同様、フワフワ移動する傾向にあるようにも思えるが、気のせいだろうか。
 というわけで、参加を考えている場合、各自でそのつど「Las Vegas balloon ride」で検索していただくしかない。

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