毎年この時期は恒例のスーパーボウル(アメリカンフットボールのプロリーグ NFL の年間チャンピオン決定戦)の話題ということで、昨年とほぼ同じような内容になってしまうばかりか、日本の読者にとっては何の役にも立たない話題で恐縮だが、在米読者やベガスを訪問する予定の人たちに向けた情報としてラスベガスのスポーツブックにおけるスーパーボウルの最新オッズや賭け方などに関してレポートしてみたい。
スポーツブックとは、スポーツの試合結果などに賭けるための場所や胴元業者のこと。
当地ラスベガスのカジノホテルのほとんどがその施設を持っており、そこには世界各地のスポーツイベントを実況中継するための大小さまざまなテレビ画面や払い戻し倍率(オッズ)などを示す電光パネルが所せましと並んでいる。
ちなみに今回の取材で訪れたのは高級カジノホテルとしておなじみのシーザーズパレス、ベラージオ、コスモポリタン、そしてMGMグランド。

コスモポリタンホテルのスポーツブック。(2025年1月28日撮影、以下同様)
スーパーボウルは7試合制のメジャーリーグ野球のワールドシリーズとは異なり 1試合だけの一発勝負。そのためか注目度は半端ではなく、もはや冬の風物詩ともいえるほどのアメリカの国民的行事となっている。今年の開催は 2月9日。
特にギャンブルの街ここラスベガスでの過熱ぶりはすさまじく、日ごろ賭けごとやアメフトに縁がない者までもが、なぜかこの日ばかりはカジノで大金を賭けて友人宅などに集まりテレビ観戦パーティーを楽しんだりする。
カジノ側も元スター選手を招いてのサイン会や解説イベントを開催するなど、年に一度のビッグビジネスチャンスに余念がなく、チーム名すら知らない者や、ひいきチームを持たない者でも楽しめるようなさまざまな賭け(以下で紹介)もたくさん用意し、たっぷり散財してもらうもくろみだ。
今年の対戦カードは「カンザスシティ・チーフス 対 フィラデルフィア・イーグルス」。
ラスベガスのカジノではチーフスがやや優勢と見られており、その強さの度合いを示すポイントスプレッド(いわゆるハンデのこと)は 1.5点。
(この 1.5点は、当地ベガス時間の 2025年1月28日時点での数値であり、試合当日までに変動することもある)

ベラージオホテルのスポーツブックで電光表示されたオッズ。ここでは -1.5 に注目。それ以外の数字に関しては以下で説明。
ハンデ -1.5 が意味していることは「実際の試合結果のチーフスの得点から 1.5点を差し引いて勝敗を決める」という意味で、つまりチーフスに賭けた場合、チーフスが 2点差以上で試合に勝たなければカジノでの賭けは的中にならない。
そして逆にイーグルスに賭けた場合は、実際の試合でイーグルスが負けても 2点差以内であればカジノでは的中となり払戻金を受け取ることができる。
(上の写真の左側に見える赤い 103 や 110 は、現場での賭けの整理番号なのでここでは無視してかまわない)
このようなハンデ込みの賭けの場合、弱いチームに賭けても的中する可能性が高まることから、どちらのチームに賭けた場合も的中確率はほぼ半々になるので(半々になるようにカジノ側がハンデを設定しているので)、払い戻しの倍率はどちらのチームに賭けた場合も1倍(元金も含めれば2倍)になるべきだが、実際にはカジノ側が経費として手数料を取る必要があるので(その手数料の率は -115 や -105 といった数字で示されるのが普通。この -115 や -105 の意味は以下でくわしく説明)、100ドル賭けて的中しても 200ドル(元金も含めて)が戻ってくるわけではない。実際には 200ドルよりもやや少ない金額になる。
スーパーボウルの場合、以上のようなハンデ込みの賭け方(ポイントスプレッドによる賭け)が一般的ではあるが、ハンデ無しで賭けることもできる。それをマネーラインの賭け(しばしば ML と表記)と呼んだりしている(上の写真内の右端の -130 と +110 の部分がその ML)。
たとえばイーグルスのファンが、「弱いと見られているようだがハンデなどいらない。とにかく実際の試合に勝つことしか考えていない」という場合は、ハンデなしでイーグルスに賭けることも可能というわけだ。
その場合、今回のイーグルスのマネーラインは +110 となっており、同様にハンデなしでチーフスの勝ちに賭ける場合のマネーラインは -130。
このマネーラインとは、「得点によるハンデではなく、賭け金の増減で実力差を調整しているようなもの」と考えればわかりやすい。
(数字の前の + と – は、数学におけるプラスやマイナスの意味とはまったく関係がないので単なる記号と考えるべき)
ではここでプラス、マイナスの意味について。
+110 の意味は、「100ドル賭けて的中すると 110ドル受け取れますよ」ということ。これはわかりやすい(自分が払った賭けの元金も含めれば 210ドル受け取れる)。
一方の -130 は非常にわかりにくい。これは「100ドル勝ちたい人は 130ドル賭けてください」という意味。つまりチーフスに 130ドル賭けて的中すると 100ドルの利益で、元金も含めれば 230ドルが払い戻される。(予算が少ない人は 130ドルも賭ける必要はない。13ドル賭けて10ドルの利益を目指しても何ら問題なし)
なお、これらマネーラインの賭けの場合、すでにその数値自体にカジノ側の手数料が組み込まれているのでそれ以上差し引かれたりすることはない。
それにしても + が付く数字の場合はともかく、– はなんともわかりにくい。慣れていない者にとっては「この表示方式はバカげている。単純な倍率で表記すべき!」と言いたくもなるだろうが、ラスベガスの伝統というか昔からの習慣なのでこればかりは受け入れるしかない。
参考までにマネーラインにおいてマイナスで表示される数値の絶対値 A から、その賭けの払い戻し倍率 B を求める計算式は以下のようになる。
B = (100 / A)+ 1
さてここで、その他の賭け方も紹介しておきたい。
その他の賭け方として代表的なのが Over か Under か という賭けだ。これは、どちらのチームが強いのか、もしくはどちらのチームが好きか嫌いかなどにまったく興味がない人たちに人気がある賭けで、両チームの合計得点を予想する賭け と考えればわかりやすい。
上の写真内の 49.5 の部分がその賭けで、Over つまり合計得点が 49.5点よりも多く点が入るほうに賭けて的中した場合の払い戻しは -110、一方の Under つまり 49.5点よりも少ないほうに賭けて的中した場合も -110 ということになる。
上の写真のベラージオホテルのオッズに限らず、その他の多くのカジノにおいても Over や Under の賭けの払い戻し倍率は -110 が一般的で、100ドル勝ちたければ 110ドル賭けなければならないわけだが、-115 や -105 になったりすることもある。
たとえば以下の写真がその典型で、これはシーザーズパレスにおける前半終了のハーフタイム時点における試合経過を当てる賭けのオッズ表だ。

シーザーズパレスでのオッズ。これはタイトルに示されているとおり 1st Half、つまり試合の前半終了のハーフタイム時点における試合経過を当てる賭けのオッズ表。
この写真からもわかるとおり、ハーフタイム時の両チームの合計得点が 24点よりも Over に賭けた場合の払い戻し倍率は -115、一方 Under に賭けた場合は -105。カジノ側としては Over になる確率のほうがやや高いと予想していることがうかがえる。
Over、Under どちらに賭けるにせよ、テレビ観戦などでの応援スタイルは、「どっちのチームでもいいから、とにかく早くたくさん点を取ってくれ~!」、もしくはその逆に「点を取るな~!」といったカタチで応援することになり、これはこれで試合観戦としては盛り上がること請け合いだ。
なお、ここまでに説明した賭け、つまりハンデあり、ハンデなし、合計得点などはどこのカジノにもある一般的な賭け方だが、それ以外にも各カジノのスポーツブックでは独自のユニークな賭け方がたくさん用意されている。
たとえば、「先攻後攻を決めるコイン・トスで表が出るか裏が出るか」、「どっちのチームが先に得点するか」、「最初に反則をするチームはどっちか」といった当てやすい(半々の確率で当たる)賭けから、「最終的な得点差はいくつか」、「両チームのタッチダウンの回数の合計はいくつか」といった当てにくい賭けまで(当てにくい賭けは当然のことながら配当倍率も高い)、ありとあらゆるユニークな賭けが用意されているので、応援しているチームがないといった人たちはこの種の賭けに参加してみるのも面白いかもしれない。
ちなみに特殊な賭けは現場の電光表示板に示されていないことが多いが、以下の写真のような紙の印刷物で用意されているのでそれらの中から選んで賭けることも可能だ。

さまざまな賭けと、その払い戻し倍率が示されている印刷物。
なお実際に賭ける際、窓口でしゃべらなければならないので英語が不安だ、という人も心配する必要はない。各スポーツブックにはいわゆるキオスク、つまりATMのような投票マシンが用意されてるので、それを使って賭ければ会話は不要だ。ちなみに以下はシーザーズパレスにおけるそのマシンの画面の一部。

シーザーズパレスの投票マシンの画面。これらの数字の意味はもうわかるはずだ。

シーザーズパレスのスポーツブックに設置されている投票マシン。
最後に念のため。ハンデ(ポイントスプレッド)にしろマネーラインにしろ合計得点にしろ、その数値はファンの賭け方の偏りに応じて、どのような試合結果になってもカジノ側が損をしないように日々刻々と変化し得るものなので、ここまでに書いてきた数値は固定的なものではないことをあらかじめ知っておいて頂きたい。
(余談: カジノ側がハンデの設定をしくじったり、ハンデに対して想定外の微妙な試合結果になってしまった場合など、たまにカジノ側が損をすることもある)
したがって今の時期にラスベガスに滞在予定の人でこれから賭けに参加する場合は、必ず電光パネルや窓口、もしくは投票マシンの画面などでそのつど最新の数値を確認するようにしないと希望した結果にならないこともあるので注意したい。
スーパーボウルの日にラスベガスに滞在予定の読者は年に一度のこの国民的イベントに賭けで参加というのも悪くないのではないか。観戦中の盛り上がりと興奮は賭けていない場合とは比べ物にならず、ラスベガスならではの貴重な体験と思い出になることまちがいなしだ。
(近年オンラインアプリを通じて賭けられるようになってきているが、ネバダ州の法律などの関係で地元民しかアカウントを作れなかったり、アカウントを作る際に窓口に出向いての身分証明の提示が必要だったりするなど、残念ながら日本からの一時的な旅行者にとっては現実的ではない)
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