以前このコーナーでオーバーツーリズム問題について取り上げた。
オーバーツーリズムとは、もちろん観光客の殺到などによる諸問題のことで、観光公害と呼ばれたりもしている。
(オーバーツーリズムは和製英語ではなく、国連世界観光機関も「overtourism」と表記している1ワードの英単語)
オーバーツーリズムはイタリアのベネチアやフィレンツェ、スペインのバルセロナ、日本では京都、浅草、夏期の富士山などが話題になったりすることが多いが、すでに世界各国の観光地が直面している地球規模での問題だ。
(そうなってしまった理由などオーバーツーリズムに関する分析記事へのリンクは文末に)
オーバーツーリズムは交通渋滞やゴミ問題など地元民の生活に悪影響を及ぼすばかりか、訪問者自身にとっても混雑に巻き込まれてしまい静かな環境で観光を楽しめないという問題を抱えている。
対策としては人数制限、季節や時間帯などによる制限、入場料の値上げなど、さまざまな方法が導入、検討されているようだが、どこも根本的な問題解決に至っているようには思えない。
そんなオーバーツーリズム問題を以前このコーナーで取り上げたわけだが、その際に「ラスベガスだけはオーバーツーリズムとは無縁」というようなことを書いてしまった。
その根拠などは文末のリンクから過去記事を読んで頂くとして、このたびラスベガス近郊の観光地でもオーバーツーリズム問題に直面していることを知り本記事を書いている次第。
そのラスベガス近郊の観光地とは、赤い岩肌として知られる「レッドロックキャニオン」だ(実際には赤というよりもオレンジ色)。
ラスベガスの中心街から道路が混んでいなければわずか40分ほどで行ける大自然の景勝地で、絶景を見ながら優雅にのんびり走行できる一周約20km のドライブコース「シーニックドライブ」や、数々のトレイル、さらにはロッククライミングの絶好スポットとしても人気が高い。
たまたま来月、大自然観光が好きという友人が日本から訪れることになっており、先週その下見も兼ねてレッドロックキャニオンに行ってみて驚いたのである。
なんと10月からの入場はオーバーツーリズム対策として予約制とのこと。
実はこの予約制、昨年から始まっていたらしいが、昨年は現場に一度も行っていなかったため、恥ずかしながらそのことにまったく気づいていなかった。
猛暑で訪問者が少ない 6月から9月は予約不要だが、トップシーズンである10月から5月は予約が必要という入場ルールが昨年から導入されていたのである。
その程度のことになぜ驚いたのか。かつては訪問者がほとんどいない場所だったからだ。
ではどれほど訪問者が少なかったのか? 実は時効ということで白状してしまうと、25年ほど前、仮免許しか持っていない日本からやって来た友人に、一周20km の「シーニックドライブ」を練習のため運転させたことがある。
そのドライブコースは一方通行のため(今でも一方通行)対向車が来ないことは当然として、時速20km ほどの低速で一周している間、一度も後続車両に追いつかれたり追い越された記憶がない。それほどまでにすいていたということだ。
その後は徐々に人気が出始め、十数年ほど前からは訪問者を多く見かけるようになったが、それでもまさか予約制になるとは驚きを隠せない。
ラスベガスの中心街からわずか40分ほどのエリアに位置する絶景の観光スポットという恵まれた条件を考えると、予約制になるほど注目されても何ら不思議ではないが、その変貌ぶりの原因はやはりSNSの影響だろう。
つまり今まで人気がなかったのは、グランドキャニオン、デスバレー、モニュメントバレー、ザイオンといった世界的に知られる景勝地(それらはすべてラスベガスから数百キロメートルも離れているが、ラスベガスからの長時間ツアーなどで行くのが一般的)の影に隠れてしまい知られていなかっただけで、ひとたびブロガーや Youtuber たちがネットで取り上げたらレッドロックキャニオンがオーバーツーリズムになるのは自然な流れといってよいだろう。良い意味でも悪い意味でもネットの影響力は絶大だ。
ちなみにラスベガス市内はオーバーツーリズムと無縁だが、グランドキャニオンなど上に列挙した世界的な景勝地や、観光エリアが比較的せまいアンテロープキャニオン、ホースシューベンドなどはすでにオーバーツーリズム問題に直面しており、自家用車での入場規制や入場料の値上げなどさらなる対策が検討されているようだ。
最後に蛇足になるが、ここ数年、ラスベガスのカジノホテル内の食べ放題バフェ(日本で言うところのバイキングやビュッフェ)の人気店は、事前に予約しておかないと長時間待たされるなどスムーズに入店できないことが多いので、もし利用する予定の場合は予約を忘れずに。
ラスベガスにおけるオーバーツーリズム問題を取り上げた週刊ラスベガスニュース第1378号は こちら。
コメント(3件)
いつも拝見しています。レッドロックキャニオンの予約の情報、ありがとうございます。私も過去に訪問したこともあるのですが、ガラガラでした。丁度11月にF1観戦の際に久々に訪問しようと検討していたので、今回の情報は本当に助かりました。ありがとうございます。合わせてご存知なら教えて頂きたいのですが、LAS滞在はMGM系のホテルでコンプで宿泊をしていますが、マリオットのエリート資格を持っているのでマリオットのHPでLASのストリップで検索するとMGM系列のホテルの予約が可能でした。(F1の時期も)いつ頃からその様になったのでしょうか?ラスベガス大全でもその様な情報を伝えた事があるのでしょうか?
Camp-K 様
ラスベガス大全をご閲覧いただき誠にありがとうございます。
11月にレッドロックキャニオンを訪問予定とのこと、天気などに恵まれるといいですね。なお、レッドロックキャニオンは、シーニックドライブと岩肌などの位置関係で、午後からは逆光になりやすいので(西側に位置している岩が午後からは日陰になってしまいます)、午前中の訪問が断然おすすめです。
さてご質問のマリオットの件、いつ頃からその様になったのかの情報は、恥ずかしながらあいにく持ち合わせておりません。お役に立てず申しわけございません。
なおラスベガス大全フォーラムに同じ質問をご投稿されると、どなたかが的確な情報を返答してくれるかもしれませんので、よろしければそちらをご利用ください。
2023年の8月に、ここのフォーラムにレッドロックキャニオンは最近すごく混んでいること、駐車場に入る列がひどくて断念したことがあることを書き込んだことがあります。断念したのは、コロナ禍の前なので、もう5年ぐらい前の時点ですでに激混み状態だったので、予約制も当然でしょうねという感じ。