たまたまスロットマシンに関する調査の仕事があったため、久しぶりに当地ラスベガスのカジノに行ってみたら驚いた。数年前のこのコーナーでも取り上げた話題ではあるが、カジノに設置されているスロットマシンの「チャイニーズ化」が激しさを増していたのである。
カジノフロアのスロットマシンのセクションに足を踏み入れると、右を見ても左を見てもチャイニーズ系のギャンブラーを意識したようなマシンばかり。
ちなみにそれらマシンの多くには PANDA もしくは DRAGON といった名称が付けられている。
その光景、残念という気持ちもあるが、それよりも寂しさを感じずにはいられない。
そう感じてしまうのは、チャイニーズ系のギャンブラーに媚びを売るカジノ側の経営方針や、スロットマシンの製造メーカーに対する反感とかではない。チャイニーズ系のギャンブラーそのものに対する嫉妬とかでもない。
アメリカにおける日本および日本文化の存在感の低さや、疎外感のような寂しさだ。
ようするに、アメリカ社会の中で中国は良くも悪しくも身近な目立つ存在となっているが、日本はまったく存在感がない。特にここラスベガスのカジノにいるとそう感じてしまう。
というわけで数年前のこのコーナーで書いたことと似たような内容になってしまうが、日本と中国の存在感の違いを書いたあとに、現在のカジノにおけるスロットマシンの現実を複数の写真で紹介してみたい。
まずは日本の存在感の低さに対する嘆きから。
中国の人口は日本の10倍以上もあるばかりか、世界中にチャイニーズ系の民族が住みチャイナタウンなどを形成していることを考えると、世界各国で中国文化が浸透していることはある程度はやむを得ないし理解できる。
それでもそういった人口差を考慮しても日本は存在感が低すぎるように思えてならない。
もちろん必ずしも目立つことが良いとは限らないが、「気にかけてもらえていない」ことへの寂しさは、アメリカに来た多くの日本人が感じるのではないか。最近のスロットマシンを見ていると特にそう感じてしまう。
初対面のアメリカ人に自己紹介する際や、ベガスでタクシーなどに乗った際など、ドライバーから「どこから来た?」ときかれ「日本だ」というと、「トヨタ、ソニー!」といった企業名の話を振られることが少なくないが、最近はそれらの企業の存在感も相対的に低下してきているように思える。
スシ、ラーメン、ワサビ、エダマメなどの食文化に関する言葉はそこそこ定着してきているものの、人名となったらまったくダメで、野球に興味がある人たちの間でのオオタニは有名だが、総理大臣の名前など知っている者はまずいない。
「日本に関する知識なんてその程度なんだ」となげいてみても、日本人だって諸外国に対する知識は同じようなレベルだろう。
中国の習近平、アメリカのバイデンやトランプ、そしてロシアのプーチンの名前は知っていても、その他の国のリーダーの名前なんて知らない人がほとんどのはずだ。
人名に限らず他国の文化などに対しても同様で、一般の日本人にとってドイツといえば ベンツ、ビール、ソーセージ、ベートーベン、そしてイタリアならフェラーリ、ランボルギーニ、スパゲティ、ピザといった程度だろう。
フランスだって大統領の名前よりもルイヴィトンやシャネル、それにワイン、フォアグラ、エスカルゴのほうが先に頭に浮かんで来るのではないか。
結局アメリカ人にとってのトヨタ、ソニー、スシ、ラーメンと大差ない。
さように、どこの国においても他国のことなどあまり詳しくないのが現実で、アメリカにおいて日本のことが知られていないのは仕方がないことだし、中国のことだって大して知らないはずだ。
だが中国がすごいところは他国において自国の文化を現地に根付かせていること。たとえばいわゆる「チャイニーズニューイヤー」と称される旧正月の文化などは完全にアメリカに定着しており、アメリカの郵政公社が十二支にまつわる記念切手を毎年発行したりしているほど根付いている。
フランスでも同様な切手が発行されたことがあるというからチャイニーズパワーを感じずにはいられない。
人口差を考慮してもこの日中のプレゼンスの差は大きすぎるように思えるが、その原因は何か。
チャイニーズ系の人たちは総じて自己主張が強いとされるが、たぶんそれ以上に日本人がおとなしすぎることに原因があるように思えてならない。
日本において「謙虚」という言葉はどちらかというと良い意味で使われる。つまり目立たないこと、つつましいこと、控えめにしていることが美徳とされるわけだが、令和の時代になった今でもその価値観が多くの人たちの間で脈々と引き継がれているのは良いことなのか悪いことなのか。
さて嘆きが長くなってしまったが、ここからが本題というか現在のカジノの現状の報告だ。
とにかくスロットマシンの「チャイニーズ化」が半端ではない。
一般のスロットマシンとチャイニーズ系のスロットマシンの設置台数の比率を正確に調査したわけでは無いが、体感的には全設置台数の半数程度かそれ以上がチャイニーズ系になってしまっているように感じてしまう。
実際には半数に満たないのかもしれないが、チャイニーズ系のマシンは総じて大型のタイプが多いので視覚的に目立っていることは確かだ。
チャイニーズ系の人たちはギャンブル好きが多いとされるので、カジノ側の営業的な戦略でそうなっているのかもしれないが、彼らはバカラは好きだがスロットマシンはあまりやらない。
実際にスロットマシンのセクションでチャイニーズ系の人たちを多く見かけることはあまりない。
ということは、ただ単にアメリカ人、特にカジノ業界にいる人たちにとって、無意識のうちに中国文化の存在を感じ、そういったマシンを作りたくなってしまうということだろうか。
いずれにせよ、日本よりも中国の存在感のほうが圧倒的に高いことは疑いのない事実として受け入れるしかない。
スロットマシンの「チャイニーズ化」は日本人としては看過しがたい現実だが、だからといって日本テーマのマシンが増えれば日本人観光客などに何か良いことがあるかというと、そんなことはないだろう。
とはいえ、このままでは日本のプレゼンスの低さに寂しさというか疎外感がつのるばかりだ。
以下の写真に示すように KONAMI、ARUZE、SEGASammy などの日系メーカーもチャイニーズテーマのスロットマシンを製造し、ラスベガスのカジノへの売り込みに成功している。
そのマシンをカジノ内で見るにつけ、日系企業の活躍を喜ばしく思うと同時に、日本をテーマにしたマシンではないことには残念な気持ちになってしまう。
そろそろ日本も伝統的な美徳である謙虚さを忘れて少々図々しいぐらいに振る舞ったほうがよい時代なのかもしれない。
以下、チャイニーズテーマの各種マシンの写真を紹介して今週のレポートを終わりとしたい。
コメント(1件)
確かに中華柄のマシンは多くなりましたねぇ。 で、これを遊んでいる連中はとゆうと必ずしもアジア系ではないとゆう事。
正にラスベガスのスロットマシンは中華柄マシンが闊歩していて、対抗してるのはバッファローくらいなもんしかありませんね。和風スロットは極少数派であり情けないくらいに少なくて、面白くもないのか誰も遊んでいません。
本格的に普及させるにはやはり日本のアニメ文化を取り入れたものになるのかなと思います。 著作権料問題とかもあり、中々導入は難しいのでしょうが、若い世代は日本のアニメで育ってきた事もあり、有望でしょうね。
ちなみに獣王とか海シリーズのコンセプトに基づいて開発されたパチンコ、パチスロ風味が溢れるスロットマシンが、ソウルのカジノに設置されていますが日本のパチ、パチスロ厨にはウケても世界的に見ればマイナーキャラなんで、殆ど見向きもされていません。w