日射量が最大になる夏至、砂漠都市ベガスには SPF100の日焼け止めも

アメリカでは SPF値が100 の日焼け止めもごく普通に売られている。

アメリカでは SPF値が100 の日焼け止めもごく普通に売られている。

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 先週から連日40度以上の猛暑に見舞われている砂漠都市ラスベガス。そして今年も早いもので来週はもう夏至だ。

 「それがどうした」と言われそうだが、夏至といえば気になるのが日焼け。もちろん夏至の日だけが日焼けに注意というわけではないが、1年のうちで最も日射が強い時期であることは間違いない。
 ちなみにその日の太陽の南中時の仰角は77.3度。ほぼ真上から太陽が照らして来る感じだ。

 日本と比べるとどうか。実は東京の夏至の太陽仰角は 77.8度なので、ラスベガスよりも真上感がさらに強いことになる。
 その理由は東京のほうが赤道に近いからだが、参考までにラスベガスの緯度は北緯36度07分。これは日本でいえば埼玉県熊谷市に相当する。

ラスベガス国際空港。この付近の標高は約650m ほどで、緯度は埼玉県熊谷市とほぼ同じ。(球形に輝く物体は多目的アリーナ「スフィア」)

ラスベガス国際空港。この付近の標高は約650m ほどで、緯度は埼玉県熊谷市とほぼ同じ。(球形に輝く物体は多目的アリーナ「スフィア」)

 というわけでラスベガスの緯度が日本と比べて特に高いわけでも低いわけでもないが、それでも東京よりもはるかに日焼け要因が多いことは知っておいて損はないだろう。なぜか。
 それはまず第一に標高だ。ラスベガス国際空港や多くの観光客が滞在するラスベガスのホテル街の標高は約650メートル。大して高くないようにも思えるが、意外なことにこのレベルの標高の都市は日本ではそれほど多くない。山岳地方の印象が強い長野県の塩尻市でもやっと700メートルだ。

 東京、大阪、名古屋など日本の主要都市圏のほとんどは平野部にあり、その大部分は標高50メートル以下。つまりラスベガスは一般的な日本人が住むエリアよりも600メートル以上高いことになる。
 たった600メートルと侮ることなかれ。気圧差は約65ヘクトパスカルにもなり、体感以上に空気が薄く日焼けしやすい環境が整っている。
 太陽光線は大気の層を横切って地表に届くまでに大きく減衰する性質があるため(波長により減衰差はあるが)、空気が薄ければ当然のことながら減衰しにくく、また標高が高ければ横切る距離も短くなるので減衰量が少ない。日焼けに対して標高差の影響は想像以上に大きいのである。
(参考までに、乾燥地帯にあるラスベガスは湿度が低い。そのことが大気中の紫外線の吸収に関係してくる可能性もあるが、水蒸気は赤外線など赤色方向のスペクトルに作用する傾向にあるため、日焼け要因となる紫外線にはあまり影響を及ぼさないとされている)

ラスベガスがあるネバダ州の上空。大部分が砂漠で、ほぼ毎日晴天。

ラスベガスがあるネバダ州の上空。大部分が砂漠で、ほぼ毎日晴天。

 そして日本と比較するという意味では標高差ばかりか天候の差も無視できない。
 日本における夏至の今の時期は雨や曇りが多いが、ラスベガスではほとんど毎日が晴天。考えるまでもなく日焼けしやすい。
 さらに当地には標高や天候以外にも日焼けリスクを高める気づきにくい要因がある。

 今の時期にラスベガスを訪れる旅行者の多くは宿泊ホテルのプールを利用するはずだ(宿泊客は無料で利用可)。
 日本のホテルにもプールはあるが、ラスベガスの大型カジノホテルのプール施設は非常に巨大でゴージャスなこともあり、ついつい現場に長居してしまいがち。
 もちろん日本のホテルのプールにおいても同じようなことが言えるかもしれないが、ベガスでは構造的に状況が異なっている。
 というのも、ラスベガスの大型カジノホテルのプール施設は、その背後(おもに北側)に巨大な客室棟が建っていることが多く、その外壁面からの照り返しが非常に強いのである。

ベラージオホテルのプール。すぐ北側に超高層の客室棟が迫っている。

ベラージオホテルのプール。すぐ北側に超高層の客室棟が迫っている。

 その照り返しの影響がどれほどのものなのか、良い例がある。外壁面が曲面になっている Vdara ホテル(日本人に人気のベラージオホテルのとなり)では、その外壁面がプール側から見て凹面鏡のようになっていることから太陽光線が収束してビーチチェアなどプール施設の一部が熱で溶けてしまう騒動が起こっている。曲面でなくても照り返しの影響は無視できないことが想像できるのではないか。

画面中央の建物が Vdara。この写真ではわかりづらいが、建物の外壁が曲面になっているため、時間帯などによって反射光がプール施設に収束する。

画面中央の建物が Vdara。この写真ではわかりづらいが、建物の外壁が曲面になっているため、時間帯などによって反射光がプール施設に収束する。

 というわけで話が長くなってしまったが、日射量が年間で最大レベルの今の時期雨の季節の日本からラスベガスを訪れる際は、日焼けの条件や環境が日本とは大きく異なっていることを頭に入れておくようにしたい。

SPF値が 60、70 のニュートロジーナの日焼け止め。

SPF値が 60、70 のニュートロジーナの日焼け止め。

 さて、ここで話を終わりにしてしまってはつまらないので、ついでに日焼け止めの話をしてみたい。
 アメリカで売られている日焼け止めには日本の日焼け止めにはない特徴がある。その特徴とは SPF値だ。
 日本では SPF値の多くが 50前後になっており、それ以上のSPF値の日焼け止めは、輸入品などがネットで販売されたりしている例外を除けば、一般の店舗ではほとんど流通していないらしい。
 一方アメリカではさまざまな SPF値が存在しており、60、70、80、100 などバラエティーに富んでいる。
 そんな事情もあってか、日本では珍しい SPF値100 の日焼け止めがアメリカ旅行の人気のみやげになっているというからおもしろい。

バナナボートブランドの日焼け止め。SPF値 100 も売られていることがわかる。

バナナボートブランドの日焼け止め。SPF値 100 も売られていることがわかる。

 では SPF値が高いアメリカの日焼け止めが本当にみやげモノとして意味があり喜ばれるのかというと、それはなんとも言えない。
 というのも、SPF値が高いほうが効果も高いような気がしてしまうが、「SPF値は50も100も効果に大きな違いはない」との話もあったりするからだ。
 したがって SPF値100の商品などに対してはさまざまな意見がありそうだが、日本では珍しいものであることはまちがいなく、人気の土産物となっていても不思議ではない。実際に大量に買っていく日本人観光客を店頭で何度か見たことがある。

スプレータイプのニュートロジーナの日焼け止め。

スプレータイプのニュートロジーナの日焼け止め。

 というわけで、この商品に対する賛否はともかく、多くの日本人観光客が滞在するストリップ地区のホテル街で買い求めることができる店と、現時点での価格の相場を写真で紹介して今週の記事を終わりとしたい。

 買える場所は、ホテルの館内にある売店も含め多数存在しているが、品揃えという意味では ABC Stores、Walgreens、CVS の3店に絞って考えて差し支えないだろう。どの店もホテル街で多店舗展開しているので探すのに苦労はしないはずだ。
 ちなみに ABC Stores はハワイを拠点とするコンビニを兼ねたギフトショップ、Walgreens と CVS は全米規模のドラッグストアだ。

SPF値が低い商品もないわけではない。

SPF値が低い商品もないわけではない。

 日焼け止めにはさまざまなブランドがあるばかりか(それでもニュートロジーナバナナボートが圧倒的に目立つ)、同じブランドでもクリームタイプやスプレータイプなどいろいろあるため、どの店が安いかの判断はむずかしいが、日本人向けの土産物が充実しているという意味では ABC Stores がベストと思われる。価格に関してはこのページに掲載されている各写真などから各自で相場感などを把握して頂ければ。

 なおこれは余談になるが、ニュートロジーナの親会社ジョンソン・エンド・ジョンソン社は、アメリカを代表する巨大優良企業としてたった30社しか選ばれないダウ平均の構成銘柄でもある。
 またバナナボートの親会社エッジウェル社もヒゲ剃りの「シック」ブランドを持つ優良中堅企業として S&P600 の構成銘柄となっている。
 新NISAなどで株式投資が奨励されているこのご時世、アメリカ株にも興味がある人はこれら企業に注目してみるのもよいかもしれない。

 最後に、アメリカ英語で「日焼け止め」のことは「サンスクリーン」(sunscreen)が一般的。サンブロック(sunblock)と呼ばれることもあるようだが、あまり多く聞かない感じなので、店員などに日焼け止めの場所を聞いたりする際はサンスクリーンのほうがよいだろう。

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