先々週にオープンしたばかりの ヴァージンホテル。先週のこのコーナーでは経営環境などが異色であることを取り上げたが、今週はこのホテルのカジノなど館内の様子についてレポートしてみたい。
ユーザーフレンドリーなホテル
結論から先に書くならば、カジノのルールに関してはルーレットの「トリプルゼロ台」(くわしくは こちら に関連記事)が無いなど総じて利用者側にやさしい設定になっており、さらに先週もふれた駐車場が無料であることや悪名高きリゾートフィー(くわしくは こちら に関連記事)が無いことなどを含めると、全体として好感が持てるユーザーフレンドリーなホテルと言ってよいだろう。
ただ、まだラスベガスのカジノ業界においては新参者なので、現時点では利用者寄りの方針を打ち出してはいるものの、今後は当地の多くのホテルが採用している悪しき習慣に迎合しないとも限らず、ルールの改悪などをしないか注意深く見守る必要がありそうだ。
ヒルトンとのコラボレーション
さて無料駐車場に車を置き館内に入ると、まずはマスク着用や手の消毒が求められる。これはもはや業界全体のプロトコルとなっているので在ベガスの他のホテルと大きな違いはない。
それよりもここで注目したいのは先週も少しふれたが、このヴァージンホテルはヒルトンとのコラボレーションとして運営されているという部分で、そのことはこの写真内の一番下の記述からも見て取れる。
客室内の取材はまだしていないが、一般的なカジノホテルにはないヒルトンの上質なサービスや客室ライフを期待してよいのではないか。
テーマは砂漠、ただしサボテンは…
インテリアデザインとしてのテーマは「砂漠」や「砂漠地方の文化」。ロビーの周辺にサボテンを飾るなどテーマに沿ったそれなりの工夫がなされており、ベガスのホテルとしてはやや小規模感は否めないが、印象は決して悪くない。
むしろストリップ地区の大型カジノホテルで見られるようなこれ見よがし的な豪華な演出よりも、このようなギラギラ感を抑えたさりげない簡素な装飾のほうが日本人受けするかもしれない。
なおロビーや館内に点在しているサボテンの多くは天然ではなく人工物だが、そのへんのところはご愛嬌といったところか。
トリプルゼロが存在しないルーレット台
さて今回の取材のメインであるカジノに関してだが、冒頭部分でもふれたとおり総じてユーザーにとってはうれしいルール設定になっている。
まずはルーレット。ラスベガスリピーターが多いと思われるここの読者やハウスエッジ(控除率)に敏感なヘビーギャンブラーがルーレットを好んでプレーするとは考えにくいのでどうでもいいことかもしれないが、トリプルゼロ台が無いことはこのカジノの経営方針という意味において非常に喜ばしいことで歓迎したい。ここ2~3年でベガスのほとんどのカジノがトリプルゼロ台を導入していることを考えると高く評価すべきだろう。
この差は大きい 94.74% と 92.31%
ちなみにカジノ側の数学的な控除率はダブルゼロ台の場合 5.26%、トリプルゼロ台だと 7.69%。これは1回賭けるごとに毎回平均して賭金の 5.26% もしくは 7.69% がカジノ側に吸い上げられてしまうことを意味し、プレーヤー側から見た場合の払い戻し額の期待値(カジノ側の控除率を差し引いたあとの払戻率)としては、それぞれ 94.74% と 92.31% ということになる。
この期待値の意味は 100ドル賭けた場合、1回のプレーごとにダブルゼロ台では平均 94.74ドルが払い戻され、トリプルゼロ台では 92.31ドルが払い戻されることになり、数回程度のプレーであれば無視できる差かも知れないが、100回もプレーすれば大きな違いとなってくることはだれにでも容易に想像がつくはずだ。
そんな不親切なトリプルゼロ台を設置していないということは素直に喜ぶべきことではあるが、ダブルゼロ台といえども期待値的にはブラックジャックなどと比べると大きく見劣りしているので、勝って帰れる確率を少しでも高めたいのであれば、ルーレットには近づかないことに限る。
良心的なブラックジャックルール
さてここの読者にとってはルーレットよりも期待値的に有利なブラックジャックのほうが気になるところだろう。こちらも良心的になっているからありがたい。
すべての台において(ただし最低賭金が10ドルなど低く設定されている台の場合は例外もある)、ブラックジャック完成時の払い戻し金の倍率が「3 to 2」、つまり 1.5倍 に設定されているから驚きだ。
近年のラスベガスのブラックジャックルールを知らない読者にとっては「1.5倍は当たり前のはず。なぜ驚きなのか?」と思うかも知れないが、最近(特にコロナ後)は大半のカジノにおいて、最低賭金が25ドルや100ドルの高額の台でも 1.2倍ルールが採用されており、もはやそれがラスベガスのスタンダードとなりつつあるので驚きというわけだ。
といっても今だけの出血大サービスなのかも知れない。1.2倍はカジノにとって儲かる美味しいルール。近隣のホテルに毒されて今後ルールの改悪に走らないことを祈るばかりだ。
参考までに、この 1.5倍と1.2倍の差はヘビーギャンブラーにとってはあまりにも大きく、その期待値は1.5倍の台の場合 99.4% であるのに対して、1.2倍の台になると 98.1% と大きく下がってしまう。もちろん 98.1% でもルーレットと比べるとかなり良い数値ではあるが、長時間プレーする者にとってこの差は無視できないはずだ。
4回まで可能な Ace の再スプリット
もう一つブラックジャックのルールに関して言えば、ありがたいことにエースの再スプリットも4回までできることも付け加えておきたい。
なおディーラーのソフト17 は上の写真からもわかるとおりヒットとなっている。ただしハイリミットセクションにおいてはヒットではなくスタンドで、またサレンダーも認められている。
(少々マニアックになってしまうが、上記の2つの期待値は 6-deck、Soft-17 hit、Any 2-card Double OK、Double after Split OK、Resplit Ace OK、No Surrender のルールが採用されているこのカジノの標準台における数値である)
クラップスは標準的
その他のゲームに関してだが、期待値的に非常に有利な賭け方があることで知られるクラップスのオッズ賭けのルールは、多くのカジノで広く採用されている 3-4-5倍。
また Field の 2 と 12 の払い戻し倍率もダブルなので、クラップスに関しては特に良心的というほどでもなく極めて標準的なルールと言ってよいだろう。
コロナ対策、どっちが主流になるか
マシンゲームはさまざまな機種が存在しているので個々のマシンごとの調査はしていないが、特徴的と思えたのはコロナ対策。
ストリップ地区の多くの大型カジノではソーシャルディスタンスを確保するために1台おきに使用停止にし、すぐとなりのマシンは使えないようにしてあるのが一般的だが、ここのカジノではすべての台を稼働させている代わりにそれぞれの台をアクリル板で区切っている。
どちらの方法がより安全なコロナ対策なのかはわからないが、この両者の違いを営業的な立ち位置から見るならば、稼働率の低下とアクリル板の設置費用の損得勘定ということになると思われ、今後どちらの方式が主流になっていくのか興味深い。
スポーツブックはまだ準備中
スポーツブックに関しては先週もふれたとおり英国の BETFRED 社に運営を委託しているわけだが、取材時においてはまだ準備ができておらず営業を開始していなかった。
したがって今後このベガスに新規参入することになった BETFRED社がどのような賭率を設定してくるのか、同一のスポーツイベントに対する賭率を他社と比べてみるなどして改めてレポートしてみたい。
レストランなどを写真で紹介
カジノ以外の部分、つまりレストラン、プール施設、SPA、ジム、そしてシアターなどは、まだホテル自体が開業したばかりということで多くの施設が準備中だったり営業していても利用者がほとんどいない開店休業状態なので、以下に写真で紹介するだけにとどめ今週の記事を終わりとしたい。
◎ The Kitchen At Commons Club
24時間営業のカフェ。24時間営業の飲食店を運営することは、フル規格のカジノ運営者に義務付けられており、どこのカジノにもこの種の店はある。多くの場合、メニューの中にラーメンなどもあったりして日本人もよく利用する形態の店となっているが、この店のメニュー内にラーメンは見当たらなかった。ただし枝豆はあったので、それをつまみにビールを楽しむことは可能。
◎ CASA CALAVERA
メキシカン料理のレストランではあるが、単なるレストランではない。ナイトクラブの運営で世界的に有名な Hakkasan Group が監修しているだけあって、かなり大規模なエンターテインメント施設にもなっており、今後の成り行きが注目される。ただしコロナが落ち着かないことには営業の範囲は限定的になりそう。
◎ KASSI Beach House
プール施設に直結したレストラン。料理のジャンルとしてはイタリア料理やギリシャ料理とのことだが、こちらも CASA CALAVERA と同様、単なるレストランではない。いわゆるラウンジとしてのエンターテインメント施設にもなっている。やはりこちらもコロナが落ち着いてこないことには予定通りの営業はむずかしそう。
◎ NIGHT + MARKET
ロサンゼルスで成功をおさめたタイ料理店がベガスに進出。メニューはもちろんタイ料理が中心だが、豊富なワインも自慢。
◎ NOBU
かの有名な和の料理人 Nobu Matsuhisa こと松久信幸氏が監修する人気店。すでに営業を開始している。寿司や天ぷらといった和食以外にもフュージョン系の料理も豊富。
◎ SPA & GYM
利用できる状態になっていたが、利用者はほとんどいなかった。
今週の記事は以上です。