先週のこのコーナーでも書いたばかりだが、ラスベガスを有するここネバダ州では新型コロナの新規感染者数が急増中だ。
そんな厳しい現状を受け、州知事のスティーブ・シソラック氏は 11月22日に行われたオンラインによるプレスコンファレンスで、コロナ対策に関するルールを厳しくすると発表した。
知事も感染、新ルールは今日から3週間
新ルールが適用される期間は 11月24日から3週間とのことなので、すでに本日から施行されたことになる。
ちなみにシソラック知事は、コロナ対策には積極的とされる民主党で、みずからもコロナに感染していることを2週間ほど前に公表。現在は体調に異常はなく、隔離された場所から公務にあたっている。
定員の25%、1テーブルにつき4人まで
気になるその新ルールの内容だが、レストランやカジノホテルなど、ビジネスを運営する側にとっては非常に厳しいものになっており、コロナ不況から脱して景気回復を目指したいラスベガスにとっては再び大きな試練に直面することになりそうだ。
新ルールの中で最も影響が大きいと懸念されているのが、カジノ、レストラン、バー、スポーツジム、フィットネスクラブなどに対する人数制限で、これまでの 50% から 25% に変更された。
この数字は、それぞれの店などにあらかじめ設定されている定員(最大収容人数)に対するもので、たとえば 100人が定員の飲食店の場合、25人までしか客を受け入れられないことになる。
さらに「1つのテーブルには4人まで」という条件も付いているので、大きな円形テーブルを持つ中華料理店などにとってはもちろんのこと、一般のレストランにとっても経営効率のさらなる悪化が懸念され、はたしてこの条件でどれだけの店が生き残れるのか心配される。
窮地に追い込まれた飲食店などが最終的に閉店という選択肢を選べば失業者も増えることになり、ラスべガス全体にとって経済的にも治安的にも好ましい事態ではない。
「50人まで」は事実上の公演禁止令
もう一つ地元経済にインパクトを与えそうなのが、ナイトショー、コンサート、集会、会議など、人が集まるイベントに対する人数制限で、こちらも影響は計り知れない。これまでの 250人から 50人までに減らされた。
10月1日にそれまでの 50人から 250人に緩和されたばかりだったので、2ヶ月もたたずして逆戻りしてしまったことになる。
50人という人数制限ではナイトショーやコンサートなどの開催は現実的ではなく、事実上の公演禁止令とも解釈できるルール変更だ。
ちなみにその 10月1日から施行された 250人への緩和を受け、今月に入ってから小規模ながら公演を再開し始めたナイトショーもいくつかある。そんなショーの関係者にとって、この 50人への逆戻りはまさに出鼻をくじかれたかたちとなってしまい本当に気の毒でならない。
10人以内、なおかつ2組の家族まで
上記2つの新ルールほどは影響が大きくないかもしれないが、その他にも気になるルールが発表されている。
たとえば家族や仲間同士で集まって食事をする際の人数制限もそのひとつ。「10人まで」とのことなので人数的には特に問題はないようにも思えるが、10人以内であればなんでもよいというわけではなく、「10人以内、なおかつ2組の家族まで」という条件付きだ。
これだと 5人家族が2組集まるパーティーは大丈夫だが、たった6人でも3組のカップルの場合はアウトということになる。
サンクスギビングなどパーティーシーズンを迎える時期なだけに、地元の一般市民にとっては聞き捨てならない不便なルールとなるはずで、今後見直しが迫られる可能性があるなど物議を醸しそうだ。
ナイトクラブは引き続き禁止
地元民といえば一般観光客にはあまり関係無さそうだが、美術館、博物館、水族館、図書館、動物園、ボウリング場なども収容人数の 25% までに制限される。
また、50,000平方フィート(約4600平方メートル、または約1400坪)以上の施設や大型店は、施設内が混雑しないよう入口などで常に状況を監視しながら人数をコントロールしなければならない。
一方、ヘアサロン、ネイルサロン、SPA などは今回発表されたルール変更には含まれておらず、またナイトクラブやストリップ劇場などは人数に関わらず営業自体が以前から認められていないので、今回の新ルールによる変更はない。
全米2位の失業率、期待はやはりワクチンか
以上が今回発表された新ルールの主な内容だが、とりあえずこれで3週間やってみるとのこと。
その後のことは何も決まっていないようだが、3週間やってみて、もし感染の拡大がさらに続くようであれば、今年の3月にやったようなカジノホテルの完全閉鎖も検討せざるを得ないということらしい。
すでにネバダ州は全米50州の中でハワイ州に次いで失業率が2番目に高い州とされる。これ以上失業者を増やさないためにも完全閉鎖だけはなんとしてでも避けたいところだ。
日本で、Go To トラベルが必ずしも感染拡大の原因となっているわけではないとの議論があるように、そもそも3月から6月のカジノホテルの完全閉鎖がコロナの封じ込めに役立った証拠はないとの意見が共和党の政治家などから出ているわけだが、実際のところどうだったのかの検証は非常に難しく簡単にできることではない。
日本でもアメリカでも、健康や安全を優先すべきか、経済や雇用を優先すべきか、その議論は終わりを見ないだろうが、やはり最後はワクチンや治療法の確立に期待するしか無いように思える。とりあえず今のラスべガスにおいては新ルールによる良い結果を待つこととしたい。
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コメント(1件)
毎週、タイムリーに、状況を伝えていただきありがとうございます。だんだん状況は良くなってくるのでは、と思っていた矢先の、厳戒態勢となり、残念です。ホテルも週末のみでは残念ながら予定たちません。
閑散としたベガスを日常として毎日見ている方は、それこそつらいと思います。早く元通りになって欲しい。