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驚異の急成長ホテル OYO が、ついにラスベガスに進出

OYO ホテルの正面玄関前。後方は MGM Grand。

 最近ラスベガスのホテル業界では、ホテルそのものの売買が盛んだ。つまりホテルの所有権の移転が活発におこなわれているということ。
 ベラージオ、トレジャーアイランド、リオ、サーカスサーカスなどがその実例だが、これらの売買はどれもオーナー企業が入れ替わっただけで、ホテル名に変更はない。
 ホテル名どころか、サーカスサーカス以外は運営会社すら変わらないとされている。結局、利用者にとって目に見えるような変化はほとんどない。
 今週は、そんな売買とは大きく異なる、名前も運営も、そして経営コンセプトまでも変わろうとしているホテル買収の話をしてみたい。

 ベラージオなどの「所有権が変わったのに運営は変わらない」とはどういうことか。
 それは不動産としてのホテルを所有している企業と、そのホテルの日々の運営を担当している企業が別ということ。つまり所有企業は運営企業から家賃収入を得ることが、そして運営企業は文字通りホテルの運営で利益を出すことが本業となる。

 このビジネス形態は決して珍しいことではなく、むしろ世界全体で見たらそのほうが多数派といってよいだろう。もしくはフランチャイズ形式も多いといえるが、いずれにせよホテルブランドを持つ企業が物件まで所有するケースは少ない。(ラスベガスではまだその形態のホテルが多いが)
 たとえば、ヒルトン、シェラトン、マリオットなどの世界的なブランドはもちろんのこと、アパホテル、東横インといった日本のビジネスホテルでも、すべての物件をそれらの会社が所有しているわけではない。

 その背景には「ホテル会社はホテル運営のプロであるべきで、不動産会社ではない」という発想がある。
 その結果、個人経営のような小規模な宿泊施設を除けば、所有と運営の分離は日本でも海外でもホテル業界における一般的なビジネス形態で、日本のホテル御三家といわれている帝国、オークラ、ニューオータニなどのような、土地や物件を売却せずに「オーナー直営」に固執している伝統的なホテルは、もはや少数派といってよい。そもそもその御三家ですら、本店以外では直営ではないホテル事業を手掛けている。

 「土地や建物を持っているが、ホテル経営の経験がない」といった個人や企業は世界中に無数に存在しているわけで、客室需要の高まりとともに、所有と運営の分業は今後ますますホテル業界のスタンダードとなるに違いない。

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OYO ホテルの広告塔、右側に見える建物は駐車場。

 さて前置きが長くなってしまったが、その分業方式の効率を最大限に高めるべく、IT技術やスマホアプリなどの積極導入により運営システムを高度に進化させたビジネスモデルを構築し、創業わずか6年ほどで世界的なホテルブランドに急成長したのが、インド発のベンチャー企業 OYO だ。
 アジア諸国を中心に、中小規模の不動産所有者などと提携(物件の改装のサポートや予約システムの提供など)をしながら、現在進行系で拡大中のこの OYO、すでに供給客室数は 50万を超えているとのことで(100万を超えているとの噂も)、約130万室で世界一の客室数を誇るマリオットグループを抜くのは時間の問題とされている。

OYO ホテルの顧客を送迎するための車両

 ITやアプリ、それに中小規模の宿泊施設と聞けば、民泊仲介大手の Airbnb がライバル企業として思い浮かんでくるが、なんとその Airbnb が OYO の急成長を恐れたのか期待したのか、OYO に出資してしまったというから、OYO の業界に与えるインパクトは半端ではなさそうだ。今後も OYO はさらなる業界再編などの仕掛け人的な存在になるかもしれない。

 ちなみに創業者は知る人ぞ知るインドの若き実業家 Ritesh Agarwal氏。年齢を聞いて驚くことなかれ。この11月でやっと26歳になるとのこと。
 創業6年の世界的企業の最高経営責任者が 26歳とはまさにあっぱれだが、そんな彼に注目しているのは Airbnb だけではないようだ。あの孫正義氏が率いるソフトバンクのファンドも、そのビジネスモデルに惚れ込み巨額の出資をしたというから、Agarwal氏の経営手腕はいかほどか。

OYO ホテルの広告塔、後方は MGM Grand ホテル。

 OYO は出資される立場だけではない。出資するほうでも注目されている。
 今年の始め、耐火や遮音のための壁材の使用において建築基準法違反があったとして話題となった日本のレオパレス21 の不祥事は記憶に新しいが、そのレオパレス21 に OYO が出資、あるいは会社のすべてを買い取ってしまうのではないかとの噂が絶えない。
 というのも OYO が目指す事業とレオパレス21 の事業には共通点が多いからだ。また、すでに日本法人を設立している OYO の日本での活動に、ソフトバンクヤフーがからんでいることも、その噂に拍車をかけている。たしかに、ヤフーによって ZOZO が買収されたことを思えば、同様なことが起こっても不思議ではない。
 そんな憶測を見込んだ投資家が買い注文を入れているのか、レオパレス21 の株価は不祥事直後の約200円から50%ほど上昇し、現在は300円前後で推移している。

OYO に買い取られる前の HOOTERS HOTEL

 やっとここでラスベガスの話になるが、そんな OYO が今年の8月末、「所有」という形でラスベガスのカジノホテル「フーターズ」を買い取った。そして早くも看板などを取り替え OYO の名称で営業を開始している。
 なお、その館内にあるカジノの「運営」に関しては、ノウハウを持っていないばかりか経営ライセンスなどの問題もあり、カジノ運営企業 Paragon Gaming 社に委託しているとのことで、OYO はカジノに直接的にはかかわっていない。ちなみにカジノ内のスポーツブック部門は William Hill 社に委託している。

OYO ホテルのカジノのブラックジャックテーブル

 フーターズの客室数は約700。一般的には十分すぎるほど大きなホテルの部類に入るが、3000部屋を超える巨大ホテルが林立するラスベガスにおいては決して目立った存在ではなく、フーターズから OYO への所有権の移転そのものは大した話題になっていない。
 それでも業界関係者は無関心を装いながらも大いに注目しているように見受けられる。というのも、今回の OYO のラスベガス進出は、これまでの同社の歴史(といっても創業まだ6年)の中における所有と運営の立場が逆転しており、なにやら新たな戦略が秘められているようで興味深い買収劇だからだ。
 またそれは、同社がアメリカ市場に直営で本格参入する第一歩であることから、このあと何をしでかしてくれるのかまったく読めず、平穏を乱されたくない業界関係者などは戦々恐々としており、期待のみならず不安という意味でも関心は高いようだ。

 「運営」に軸足を置いてきた OYO が、今回「所有」という行動に出たことの意味や意図は現時点ではわからないが、それはネット空間で生きるアマゾンが、実店舗を持つスーパーマーケット大手のホールフーズ社を買収したことと、どことなく似ているような気がしないでもないが、それは考えすぎか。

OYO の館内にあるフーターズレストラン

 それはともかく OYO 側は、客室を含む館内のリフォームに 2000万ドル(約22億円)を注ぎ込むとしている。だが現時点では工事などが始まっている様子は見られない。
 また、現在の同ホテルのメインダイニングとなっているハンバーガー店「Steak’n Shake」、それにスパイシーなチキンとセクシーなウェイトレスで有名な「Hooters Restaurant」はそのまま残すとしているので、飲食関連の施設における大きな変化は今後もないと予想される。

ホテルの外から見たハンバーガー専門店 Steak’n Shake

 とはいえ、業界の風雲児的な存在の OYO が、普通にホテルを買収し、普通に客室をリフォームしておしまい、というようなことは考えにくい。何か突拍子もないことを企てていると考えるべきだろう。
 たぶんそれはハード的な部分ではなくソフト的な部分で、やはり注目すべきは OYO 社自慢の予約システムなどに関する分野になるのではないか。
 他社のものよりも洗練された人工知能AIによるダイナミック・プライシング(需給バランスを予測し、刻々と価格を変化させながら利益を最大限にまで高める価格設定)を導入したこのシステムは世界中の加盟ホテルのオーナーから好評のようで、既存のライバルホテルにとって脅威になる可能性は十分にある。

 ちなみに試しに、一般的なホテル予約サイトの代表格であるエクスペディアと、その OYO の専用アプリで実際に予約画面を比較してみたところ、同じ日の同じ部屋の料金が微妙に違っていたりする。
 OYO アプリのほうが、わずかではあるが総じて安いことが多いが、それはともかく宿泊料金のみならず、リゾートフィーまでもが異なっているところが興味深い(エクスペディア $42、OYO アプリ $37)。
 このリゾートフィーの価格差が意味するものは何なのか。これもダイナミック・プライシングのしわざということか。まさかそんなことはあるまい。(そもそもエクスペディアのルートを通じて OYO の客室を販売し続けるのかどうかも不明)

 まだ正式オープンではなく仮オープンとのことなので(正式オープンの時期は「年内」としか公表されていない)、今の段階でこの予約システムやこの企業の動きについてあれこれ語るのは時期尚早かもしれないが、きっと今回のフーターズの買収を機会に、アメリカで何かしでかしてくれるにちがいない。やり手の若き経営者がフーターズの入手だけを最終目的と考えているとは到底思えないからだ。
 たぶん中小規模のホテル業界などに画期的な旋風を巻き起こすようなことを企てているような気がするが、どうだろう。それともただ単にカジノ業界に参入したかっただけなのか。
 いずれにせよ、たった6年でここまで巨大化した風雲児的なこの企業、いい意味で5年後、10年後が末恐ろしい。いや1年後すら読めない。今後の動きに注目したい。

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コメント(2件)

  1. より:

    大全様
    いつも鮮度の高い情報、ありがとうございます。
    感想です。今日ラスベガス行きの航空券を調べていまして、
    経由地で、成田、羽田、関空、中部と例を出されている中で、
    NGO-DTW-LASが遠すぎて現実的ではないとありますが、私、使っております。
    理由として、安い!確かに大韓航空もいいですが、値段が半額以下の時もあります。
    その分カジノや買い物、宿泊費などに回しております。
    次に、1回乗り換えで現地着は体に負担が少ない。
    2回乗り換えもありますが、慣れていても疲れる物があります。
    最後にデトロイト空港は(アメリカの空港の中でも)分かりやすく、日本語案内も多い。
    入国案内も、荷物の預け替えも分かりやすく、(もちろん慣れていない方は別ですが)
    アメリカに行った事ある方はかえって楽かもしれません。
    デトロイト空港の回し者みたいになってしまいましたね。
    これは個人的な感想なので、気分を悪くされたら大変申し訳ありません。
    これからもますますのご活躍、お祈りいたします。

    • より:

      ごめんなさい。場所を間違えてコメントしてしまいました。
      大変失礼しました。

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