必ずスタンディングオベーションになる奇抜なショー

※公演終了

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 エクスカリバーホテルの東側駐車場(ストリップ大通り側)で奇抜ナイトショー「FUERZA BRUTA」フエルサ・ブルータ)が 3月7日から始まったので紹介してみたい。

 あまりにも変則的な部分が多く、実際の様子や会場内の雰囲気を的確に説明することはむずかしいので、まずはこのショーの特異な部分や特徴などを箇条書きにして書き出してみたい。

会場は屋内の劇場ではなく屋外テント
座席は一切なし(全員が立ち見)
役者は原則としてしゃべらない
音楽や照明はナイトクラブっぽい
固定的なステージはなく可変式
中心的なステージは観客の頭上
頭上からの役者と観客のふれあい
観客の頭上に可動式プール
ひんぱんに吹き荒れる猛烈な風
おびただしい数の紙吹雪
ルーツはアルゼンチン

 これらの条件で、このショーの内容を的確にイメージできるかどうかは、人それぞれの想像力によりそうだが、それはともかく、観るべきショーなのかどうか、あるいは観る価値があるのかどうかに関して結論を先に書いてしまうならば、「ぜひ観ていただきたい価値あるショー」というのが結論だ。
(ただし年齢が高い層からは「どこがいいのかサッパリわからない」といった批判的な意見も)

 見出しタイトルの「必ずスタンディングオベーション」は、座席がないので当たり前といってしまえばそれまでだが、実際に大多数の観客が、座席があったとしても立ち上がって拍手を送りたくなるほど感動していたように見受けられたことだけはたしかで、雰囲気についていけずに呆然としている観客はかなり少数派だった。(下の写真: 終演後、白いジャケットを着た役者が観客とハイタッチ)

 ひとつひとつの演目の形態は多種多様で、それぞれが意味不明であったり、抽象的な表現であったり、奇抜すぎたりなど、どうにも説明がむずかしいので個々の詳細は省くが、そんな中、数ある演目の中の一つに、このショーを象徴する人気の「空中プール」があり(下の写真)、それについては説明しておいたほうがよいと思われるので簡単にふれておきたい。

 それまでの大音響、そして激しい光や風を伴う派手な出し物が終わると、会場内は突如暗く静かになり、観客の頭上、つまり会場の天井から 10m x 8m ほどの長方形のプールが出現する。
 そのプールの底は柔軟性のある透明な樹脂製で、観客側からプール内がよく見えるようになっている。
 プールといっても水深はわずか数センチ程度、泳げるような環境ではない。そこに数人の水着姿の女性が乱入すると、意味不明な奇妙な動きを始める。

 役者の体重がかかった部分はプールの底がへこむため、そこには水が集まりある程度の水深ができ、観客から見上げる景色は刻々と変化。
 それだけでも十分に奇抜な演出で、観ている者を飽きさせないが、そこで終わってしまわないところがこのショーの真骨頂。なんとそのプールは徐々に高度を下げ、観客の頭にぶつかるような位置まで降りて来る。

 観客は手を伸ばせばセクシーなポーズを取る女性にタッチが可能で、当然のことながら多くの男性客は手を伸ばす。といっても、もちろん樹脂製の底があるので直接さわれるわけではないが、少々悩殺的な光景になったりすることがあるのも事実。
 バカバカしい演出といってしまえばそれまでだが、これはこれでシルク・ドゥ・ソレイユなどではお目にかかれない奇抜な演目として好意的に受け止めたい。

 その他にも変則的な出し物はたくさんあるが、説明がむずかしいのと、あまり細部に渡って書き出してしまうと観る楽しみがなくなってしまうのでこのへんにしておくが、それぞれの演目において総じていえることは、「風」「紙吹雪」の多用だ。
 一般的に多くのショーにおいて、効果音、照明などはもちろんのこと、煙や炎、さらには花火や振動、そして最近ではハイテク映像技術などを駆使した演出はよく見られるが、風や紙吹雪をこれほど使うショーは他にはないのではないか。
 もちろん風も紙吹雪も古くからある演出ではあるが、このショーにおけるその使い方は半端ではない。強風はステージだけでなく観客がいる場所にまで襲いかかり、位置によっては台風並みの風速なので、ヘアスタイルなどを気にする者にとっては要注意だ。

 「テント内でそんな風を吹かせることができるのか?」と思うのは当然の疑問だが、実はこの強風を吹かせる際にはテント内の壁の一部を開放するので実現可能となっている。
 紙吹雪についても、さまざまな場面でおびただしい量が会場内を舞うことになるので、これもこのショーの見どころとして注目するようにしたい。

 演出の説明はそのへんにして、2003年に始まったとされるこのショーのルーツはアルゼンチン
 ただ実際の公演はニューヨークに軸足を置きながら世界各地を転々としており、アルゼンチンが拠点というわけではなく、また短期間ではあるが日本で公演したこともあるようだ。
 ちなみに今回のラスベガス公演は約6ヶ月限定ということで、エクスカリバーホテルの公式サイトでも8月末までのチケットが販売されているが、公演成績が悪ければすぐにでも打ち切られてしまうのがラスベガスのショービジネス界のおきて。興味がある人は早めに観ておいたほうがよいかもしれない。

 実はこのラスベガス大全で、20年ほど前にこの FUERZA BRUTA の前身となるショー「DE LA GUARDA」(リオホテルで開催)を紹介している。
 Argentine High-Flying Hip-Hop との宣伝文句とともにアルゼンチンからラスベガスに乗り込んできたその DE LA GUARDA はそこそこ注目されたため、古くからのこのサイトの読者は実際に観たりして記憶にあるかもしれないが、その時の「立ちっぱなしで上ばかりを見ている必要があるので首が痛くなる」「びしょ濡れになる」といった悪評判は、今回の FUERZA BRUTA ではほぼ解消されているので、その種の心配をする必要はない。

 というのも、天井を使った演目と、壁や特設ステージを使った演目が、交互に現れるような工夫がなされているため、連続して真上を見上げている必要がなくなったからだ。
 また水を使った演出も適度な量と、放水する場所をわきまえているので、観客の全員がびしょ濡れになるようなことはない。ただ前述の通り、強風は半端ではないので、持ち物などが吹き飛ばされないよう注意する必要はある。

 悪い部分が解消されているのと同時に、DE LA GUARDA の良い部分がそのまま踏襲されているところも評価したい。
 その良い部分とは、シルク・ドゥ・ソレイユのショーなどにもいえることだが、役者がしゃべらないこと。エンディングの部分における挨拶で多少のスピーチ(英語)はあるが、世界各国での公演を視野に入れているためか、原則としてトークの部分はない。
 モントリオールを拠点とするシルク・ドゥ・ソレイユがフランス語、この FUERZA BRUTA がアルゼンチンなのでスペイン語、つまり英語を母国語としない劇団は、自らが英語を得意としていないこともあるのか、多種多様な観客に配慮してトークを極力避けるようにしている部分は、英語が苦手な観客にとってはうれしい。
 アメリカ人がやっているショーでは「観客も英語がしゃべれて当たり前」といった前提で演じているように見受けられるのが残念だ。

 会場内での位置は、DJブースの付近がステージを正面に見やすいようだが(といってもステージは動くので固定的ではない)、よほど混んでいない限り自由に動けるので、個々の演目ごとに自分にとって見やすい位置に移動すればよいだろう。

 公演日時は月曜日と火曜日を除く毎日 7:00pm と 9:30pm。チケット料金はさまざまな経路で提示されているので固定的なものではないが、税金や手数料を含めて $60~$80 程度
 会場の場所は前述の通りエクスカリバーホテルのストリップ側の駐車場。遠くからでもテント(写真上)が見えるので探すのに苦労することはない。チケット売り場もテント脇にある。
 他のショーと同様、危険物やドリンクの持ち込みは禁止。テント内で売られているビールは8ドル。
 公演継続時間は公式サイトなどを含めて 70分とされているところが多いようだが、実測は 62分だった。

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コメント(7件)

  1. ナミコ より:

    こんにちは〜
    Fuerza Brutaのショーチケットについて質問ですの質問です。いつも楽しく記事読まさせていただいています(o^^o)
    Fuerza Brutaの記事の中で、$60-80で購入が出来るりの記事を拝見したのですが、どちらでその様な価格で チケット購入出来るのかご伝授いただいてもよろしいでしょうか???

    • ラスベガス大全 より:

      ナミコ様
      このたびはラスベガス大全をご利用いただき誠にありがとうございます。
      さてさっそくご質問の件に関してですが、「Tix 4 Tonight」か
      「Tickets on Demand」がよろしいかと思います。
      もちろんこれらのディスカウントチケットショップは、
      必ず目的のショーのチケットがあるとは限らず、
      また価格も変動制ですので、必ずしも目的のショーのチケットを、
      希望の価格以下で買えるとは限りませんが、たぶん 60~80ドル前後で
      買えると思います。

  2. ひさ より:

    こんにちは。
    FUERZA BRUTAのショーを見てみたいんですが、チケットは現地でしか購入できませんか?
    日本語で購入できるサイトはないでしょうか?
    可能であれば、4月28日本日公演分を購入したいです。

    お手数をおかけしますが、よろしくお願いします。

    • ラスベガス大全 より:

      ひさ様
      このたびはラスベガス大全をご利用いただき誠にありがとうございます。
      あいにく当社が知る限りでは、このショーのチケットを日本語で買えるような場所は存じ上げません。
      チケットの購入にむずかしい英語は特に必要ありませんので(たとえば 2枚であれば「7:30pm, tonight, two」だけで通じます)、現場(テント会場)脇にあるチケットブースに出向いて購入されることをおすすめします。
      当日券でも、立ち見ですので売り切れにはならないと思います。
      すべてがうまく行くことを祈ってます。
      では楽しんで来てください。

      • ひさ より:

        返信有難うございます。
        テント横に行ったんですが、空いてませんでした。
        他のチケット売り場で聞きましたがクローズ、シャットダウンと言われました。
        すでに公園は終わったのでしょうか?情報あれば教えてください。

      • ラスベガス大全 より:

        ひさ様
        お調べさせていただきましたところ、興行成績が
        振るわなかったことを理由に、4月7日に公演が
        打ち切られてしまっていました。
        公演が終了していることに気づくのが遅れ、
        ご迷惑をおかけしてしまいましたこと、
        深くお詫びいたします。

    • にーの より:

      もしも英語の発音がご心配でしたら紙に書いて見せると良いと思います。
      これなら間違いなし!

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