暗くて静かな NoMad は、おしのび旅行に最適?!

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 今週は、昨年秋に新規オープンした NoMad ホテルでの体験宿泊をレポートしてみたい。

 まずは NoMad ホテルについて。本家本元はニューヨークにある格式高いブティックホテル(大手ホテルチェーンなどの運営ではなく、個性豊かな小規模なホテル)で、そのラスベガス版と考えればよい。
 ロケーションは PARK MGM ホテルの上層階。もっと正確に言うならば 29階から32階までの4フロア
 ラスベガスのホテル街の様子をある程度知っている者にとっては、元モンテカルロホテルの上層階にあった「HOTEL32」が「NoMad」に生まれ変わったといったほうがわかりやすいかもしれない。
 つまりこの NoMad は、モンテカルロホテルが大改装され、その名称が PARK MGM に変わることになったのを機会に、HOTEL32 も同時に改装され NoMad になったという次第。

 ちなみにこのような形で運営されているホテル、つまり大きなホテルの中に小さなホテルが同居する形のホテルは、その物理的な環境から「ホテル・イン・ホテル」などと呼ばれたりすることもあるが、決して珍しい存在ではない。
 たとえばここラスベガスでいえば、マンダレイベイホテルの中にあるフォーシーズンズホテルがそれに該当する。

 ホテル・イン・ホテルの場合、サイズ的には小規模になりがちで、また大型ホテルにはない個性的なホテルであったりすることから、ブティックホテルであることが多い。
 ちなみにこのホテルの客室数は 293。一般の都市では決して小規模とは言い切れないが、巨大ホテルが建ち並ぶベガスにおいては、十分すぎるほど小さく、ブティックホテルという位置づけで何ら問題はないだろう。

 立地環境は、モンテカルロホテルを知る者にはわかる通り、抜群のロケーションであるばかりか、シーザーズパレス、ベラージオ、バリーズ、ミラージュなどとちがい、前庭がほとんどないので、客室と繁華街との間の移動距離が短く、使い勝手も申しぶんない。

 さて、泊まってみた感想として、このホテルの特徴をひとことで表現するならば「暗い」になる。とにかくものすごく暗い。
 といっても、悪い意味での「雰囲気やイメージが暗い」ではなく、ロビーや廊下などの実際の明るさのことで、つまり照度が極めて低い。

 とはいえ照明のワット数などだけが原因ではなく、チェックインカウンターの位置関係や構造にも原因がありそうだ。
 ひっそり隠れたような奥まった場所にロビーがあるため、外界と遮断されており、外の光がまったく入って来ない環境になっている。
 もちろん照明でどうにでも明るくできるわけだが、そこを明るくしないところがこのホテルの真骨頂というかポリシーのようで、ロビー以外の場所もことごとく暗さにこだわっている。
 ベガスの他のホテルが華やかで明るいイメージがあるだけに、さらに暗く感じてしまうのかもしれないが、もはや「暗所恐怖症」の人は避けたほうがよい、と言っても過言ではないほど何から何まで暗い。

 「暗い」の次にこのホテルの特徴をあげるとするならば「静けさ」だろう。
 客室数が少ないことから結果的に利用者の絶対数も少なく、またロビーには一人か二人のスタッフがいるだけなので、他の宿泊客とすれ違うこともほとんどなければ、スタッフと遭遇することもめったにない。
 また PARK MGM のカジノからも遮断されているため(距離的にはかなり近い位置にあるが)、カジノの喧騒とも完全に無縁の別世界。

 そんな静かなロビーからエレベーターに乗り客室に向かうわけだが、エレベーターを降りた場所も静寂に包まれている。
 暗くて長い廊下には人影がなく、自分の足音だけが聞こえて来るようなシーンと静まり返った空間が広がっているが、実際には足元はカーペットなので足音が聞こえるようなことはない。

 レトロ調なドアを開けて客室内に入ると、やはり暗い。照明を付けても暗い。窓のカーテンを開けてやっと外界の明るい世界に遭遇できることになるわけだが(明るい時間帯にチェックインしたためだが、夜間だったらそうはいかない)、太陽の日差しはこのホテルにそぐわないのか、無意識のうちにまたカーテンを閉めてしまう。

 暗い照明の中で見えてくる室内の様子はすべてがレトロ調。古き良き時代をうまく演出している感じで、これはこれでなかなか良い。
 客室内の様子や調度品などに関しては、百聞は一見にしかずということで、文字での説明はこのへんにし、あとは以下に掲載した写真をご覧いただくこととして、このホテル全体を総括すると「暗」、「静寂」、「レトロ」いった言葉で表現できることになる。
 したがって結論としては、一般の観光客にはあまりお勧めできず、特に初めてラスベガスを訪れる者にとっては、キラキラ輝く華やかなラスベガスのイメージを体感できないので(もちろんこのホテルの外に出れば体感できるが)、やめておいたほうがよいだろう。
 ハネムーナーにも、ギャンブラーにも向いていないし、今が季節の学生の卒業旅行などにもまったくそぐわない。

 ではどんな人たちに向いているのか。それはもう想像の通り「おしのび旅行」しかないだろう。
 華やかでにぎやかな雰囲気をラスベガスの特徴とするならば、この NoMad はその対極にあり、最もラスベガスらしくないホテルということになるわけだが、ここでラスベガス観光局の「不倫奨励」ともいえる広報活動を思い出してしまう人も少なくないのでは。

 というのもラスベガス観光局は、「公的な機関が不倫を奨励するようなことはいかがなものか」と非難を浴びて話題となった、「What happens in Vegas, stay in Vegas」をこの街のスローガンとして、世界に向けて発信しているからだ。
 これは、直訳すると「ラスベガスで起こることはラスベガスに残る」の意味しかないが、実際のニュアンスは、「ラスベガスであなたがやったことはラスベガスの外に出ることはない。だれにもバレることはないので、少々アブないことをやっても大丈夫。すべての思い出はラスベガスに残しておけばよい」といった感じの意味合いになり、批判意見があると同時に、名作として絶賛されているスローガンでもある。
 もちろんこのスローガンは不倫旅行だけのことを言っているわけではないが、多くの人がそれも連想してしまうことはまちがいない。

 はたして今この記事を読んだ読者のどれほどが、このホテルに宿泊することを検討するのか。それこそだれにもバレないというか、だれにもわからないだろう。
 ちなみに宿泊料金的には周辺の大型カジノホテルと大差ないので、予算を理由に敬遠する必要はない。以下は、写真で見る NoMad だ。

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コメント(1件)

  1. のりこ より:

    いつも拝見するのを楽しみにしています。
    以前のラスベガス大全に、スポットショー一覧がありました。
    最近コンベンション予定や天気が載りだしたので、コンサートなど、ショーの情報もお願いします。

    こちらの新しいラスベガス大全にも

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