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クリス・エンジェル、新天地でのショーが大盛況

 今週は、ルクソールホテルからプラネットハリウッドホテルへ移籍したクリス・エンジェル(51)のマジックショーについて取り上げてみたい。

 まずはクリス・エンジェルについて。ニューヨーク出身で幼い頃からマジックを始めたクリスは、今でこそ大型イリュージョンという印象が強いが、下積み時代を終えるまでは小さなマジックもこなし、さまざまな場所でマジックショーを演じていた。

 2000年ごろを境に名前が売れてくるようになると、軸足をステージからテレビに移すことに。
 露出度という意味でのテレビの影響力は絶大だったようで、その特徴的な風貌やふるまいで女性ファンのハートをつかむことに成功。わずか数年で彼の名は一躍有名に。

 2005年ごろにはすでに話題性や注目度において、全盛時代を過ぎたデイビッド・カッパーフィールドやランス・バートンなどの先輩マジシャンを抜き去り米国マジック界のトップスターになると、プライベートな部分においても超一流ぶりを発揮し、人気歌手ブリトニー・スピアーズや女優キャメロン・ディアスとの恋仲など、芸能雑誌が喜ぶようなゴシップを連発。マジック界にとどまらない国民的セレブリティーになっていった。

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 そんな彼の存在に黙っていなかったのが、スターを誘致したいベガスのショービジネス界で、ホテル王とされるスティーブ・ウィン氏(ミラージュ、トレジャーアイランド、ベラージオなどの人気テーマホテルをクリエイトした人物)を始め、さまざまな関係者が彼に声をかけることになったが、結局、最終的にクリスが選んだ提携相手はカナダのサーカス集団シルク・ドゥ・ソレイユ(以下、シルク)だった。

 そして2008年9月、ついにクリスはシルクとのコラボレーション型のマジックショー「Criss Angel BELIEVE」の主役として、ピラミッド型ホテル「ルクソール」でラスベガス・デビューを果たすことに。(テレビ番組の撮影などでは何度もラスベガスで演じてきたが、常駐ショーとしては初めて。下の写真は、クリスのショーの宣伝で外壁が覆われた当時のルクソールホテル)

 しかし華々しくデビューしたものの、地元メディアから酷評されるなど評判は散々で、集客も低迷。
 その原因は、クリスとシルクの組み合わせ自体に問題があったようで、どちらかが悪いということではなく、「両者は一緒にやるべきではなかった」というのが業界における共通認識となっていった。
 つまり、だれもがクリスの豪快なイリュージョンとシルクの華麗な演出が組み合わされば、「クリスの良さ」と「シルクの良さ」の相乗効果でさぞかしすばらしいショーになるだろうと思ったわけだが、実際はまるで逆で、1 + 134 になるのではなく、1 以下になってしまったということ。

 その背景には、シルクとの共演というカタチではクリスの独創性やカリスマ性が発揮できる環境にはならなかったこと、そしてマジックショーというものは始めからマジックショーという前提で観たほうがわかりやすく、またサーカスやアクロバットも始めからそれとわかって観たほうが理解しやすいといった観客側の事情があったようだが、いずれにせよ企画自体が失敗だったことはまちがいない。

 結局、初演から3年ほど経過した時点で演目などのマイナーチェンジを試みることになったが、それでも思ったほどの結果を残すことができず、とうとう 2016年にはシルクの要素を無くすといった大胆な改革を断行。
 少しは改善が見られたようだが、諸事情などもあってシルクやルクソールとは決別することになり、2018年秋、約10年続いたルクソールでの公演は静かに幕を閉じた。

 そしてこのたび 2019年1月から新天地プラネットハリウッドホテルに場所を移し「CRISS ANGEL MINDFREAK」をスタートさせたわけだが、これがすこぶる評判がよいようで、チケット販売も予想以上とのこと。
 何がどのように良くなったのか。さっそく現場に足を運んでみた。

 まずこの新たなショーを観ての第一印象というか、ルクソール時代との最大の違いは、なんといっても元気になったこと。クリス本人もショーの内容もルクソール時代とは比べものにならないほど活気に満ち溢れていた。
 「水を得た魚」「たがが外れる」といった表現があるが、新天地でのクリスはまさにそんな感じで、それに合わせた観客のノリも半端ではなく、ショーが始まってすぐにスタンディング・オベーションになってしまうなど、会場内の雰囲気はまるでロックコンサートかナイトクラブの様相。
(もちろん始めから終わりまで立ちっぱなしということではなく、大部分の時間は着席したまま鑑賞できるので、足腰が弱い人でも心配無用)

 他のマジックショーとの比較、たとえばかつてベガスにおけるマジックショーの大御所だったランス・バートンと比較してみると、タキシード姿で優等生的な雰囲気を醸し出しながら上品なマジックをウリとしていた彼を「静」の演出とするならば、クリスは完全に「動」で、両者の違いは明確でわかりやすい。
 静と動、どっちがいいかは好みの問題だが、とにかくこのクリスの過激なパフォーマンスはそれなりに観客をひきつけていることはたしかで、現時点における地元メディアなどの評判も上々だ。そして実際にチケット販売においても売り切れになる日が少なくないというから恐れ入る。

 ちなみに、需給バランスが崩れている昨今のラスベガスのショービジネス界においては(圧倒的に需要よりも供給が多い)、チケットが完売になる常駐ショーはほとんどないとされており(単発的なコンサートなどはその限りではない)、売り切れになる日があること自体、異例のようだ。

 さて前置きが長くなってしまったが、ショーの内容に話を移すと、基本的には他のマジックショーと同様、既成の出し物が多い。
 つまり、空中浮遊、瞬間移動、瞬間入れ替わり、人体切断など、どれも「どこかのマジックショーで観たことがあるぞ」と思えるような演目が目立つ。
 ただ、それはある程度やむを得ないことで、どのマジックショーにも共通していえることだ。
 というのも、マジックを考案した者からそれを買ってきて演じるのがマジシャンの役目であり(考案者とマジシャンが同一の場合もあるが)、現代のマジック業界においては、考案と演出が完全に分業制になっているからだ。自分で開発したマジックだけを演じているマジシャンなど皆無に近い。
 実際にこのショーで披露される演目の多くは、かつてベガスで活躍していたランス・バートン、スティーブ・ワイリック、リック・トーマス、そしてベガス残留の現役でいえばネイサン・バートンなどが演じていた出し物とかなりかぶっている。

 といってもガッカリする必要はない。同じ仕掛けのマジックでも、演じる者によって見せ方や表現が大きく異なっているからだ。
 分業制になった近年のマジックショーでは、そのマジシャンの個性で差別化するしかないのが現状で、それがゆえにタキシードを着たマジシャンもいれば、Tシャツとジーンズというマジシャンもいて、同様に、静かなBGMの中で演じるマジシャンもいれば、激しいロックのような曲をかけながらやる者もいる。(下の写真はシアターの入口)

 たまに個性をうまく出しきれず差別化に失敗し、マジックではなくマジシャンそのものが「だれかに似ている」といわれてしまう者も少なからず存在しているが、観客(というかファン)を盛り上げる能力に長けているクリスの場合、十分すぎるほど個性を発揮しているので、たとえ他とかぶっている出し物であっても観ている者を退屈させるようなことはない。
 そもそもすべての演目が既成というわけではなく、クリス独自のものもいくつかあるので大いに期待してよいだろう。特に終盤で披露される豪快なイリュージョンにはだれもがあっと驚くにちがいない。

 なお、クリス・エンジェルと聞くと、大掛かりなイリュージョンという印象が強いが、ハトを出したりする古典的な演目もある。
 また、動物マジックで人気のダーク・アーサーのようにトラやヒョウは使わないものの、クモヘビといった意外性のある動物を使うなど、マジックのジャンル的にはかなり幅が広く、観るものを飽きさせない。
 ただ、コインを使ったクロースアップ・マジック(トランプやコインなど小道具を使った至近距離で演じるマジック)は、広々した会場にそぐわないし(クリスの手元やコインを映し出す画面があまり大きくないためよく見えない)、彼自身のキャラクター的にも不要な演目と感じた。

 BGMに関しては、録音音源だけではなく、ステージの両側にエレキ奏者を配置し、彼らも場内を盛り上げる要員になっているところがなんともこのショーらしくておもしろい。
 また、ハイテク映像技術であるプロジェクション・マッピングをさまざまな場面で多用しているところも斬新だ。
 なお映像といえば、会場の両サイドの壁も多用するので、あまり前方の座席だとその壁が見づらい。中央付近から後方の席のほうが全体を楽しめてよいかもしれない。

 長くなってしまったのでそろそろ総括とするが、かつてのランス・バートンのショーのように老若男女が落ち着いた雰囲気の中でゆっくり楽しめるショーかというと、必ずしもそうとは言えないないが、派手な演出、観客のノリ、会場の盛り上がりや熱狂などに興味がある者は必見のショーといってよいのではないか。
 ただ、語学力の必要性については補足しておく必要があり、このショーは日本人観光客が観るという前提で論じるならば、トークが多すぎる。ようするにクリスはしゃべりすぎ。

 一般的に、見ていればわかるマジックショーにおいては語学力をほとんど必要としないのが普通なので、そういう意味では特異なマジックショーといえなくもない。
 とはいえ、クリスのショーにとってトークはやむを得ない部分でもある。というのも、観客の多くが「マジックショーのファン」というよりも「クリスのファン」のように見受けられ、そうであるならば、ファンに対して何か話しかけるカタチでの進行が求められるからだ。
 コンサートなどにおいて、日ごろあまりしゃべらないミュージシャンでも、多くの熱狂的なファンを目の前にしたら、対話型の進行にせざるを得ないのと同じだ。
 それでもこれはマジックショー。観ているだけで十分に楽しめるので、語学力のことは特に気にする必要はないし、それを理由に断念することはあまりにももったいない。

 最後に、主催者側からの注意を伝えて終わりとしたい。
 チケット売り場の周辺などに「光や音に過敏な人は避けるべき」といった事前通知が掲示されている(写真)。
 たしかに火、煙、音、光などの演出がかなり過激なので、突然の大音響や光過敏性発作などで気絶したりする可能性がある人は注意したほうがよいかもしれない。

 開演は水曜日から日曜日の 7:00pm。月曜日と火曜日は休演。金曜日は 9:30pm の追加公演がある場合も。
 会場は前述の通りプラネットハリウッドホテル内で、カジノフロアからエスカレーター(写真下)で上の階に登りきったところのすぐ左側。


 チケット料金は完全な固定制ではないようなので多少の変動はありそうだが、税や手数料込みで、おおむね $80 から $150 程度。会場の作りがうまく出来ており、総じてどの席からでもステージがよく見えるので、特に高額な席にする必要はないように思える。チケット売り場は会場の入口にある。
 開演前に、ステージ上でだれもが参加可能な記念撮影会などが開かれるので、もしそれに興味がある場合は、少し早めに会場に入るようにしたい。
(2月25日~3月5日までの約1週間はクリスの休暇のため休演)

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