バーテンダーがいない「変なカクテルバー」

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 自動翻訳に画像認識、さらには車の自動運転など、最近の人工知能やロボットの技術革新には目を見張るものがある。囲碁や将棋のプロがコンピューターに勝てなくなったというニュースも記憶に新しい。
 単純作業のみならず、高度な頭脳労働も、どんどん機械に置き換わっていく時代はもうすぐそこだ。

ロボットがバーテンダー そんな時代の到来を予感させてくれるカクテルバーがプラネットハリウッド・ホテルに隣接するショッピングモール内にオープンした。
 その名も TIPSY ROBOT(写真)。名前をそのまま訳せば「ほろ酔いロボット」といったところだが、実はぜんぜん酔っ払っていない。酔っ払っていないどころか、しっかり仕事をしてくれる。
 この TIPSY ROBOT は、世界初の ロボットがバーテンダーをやっているカクテルバーだ。(大型クルーズ船内ではすでに実例があるようだが、地上では世界初とのこと)
 受付カウンターにスタッフがいない「変なホテル」という名称のホテルが日本のハウステンボスや浦安にあるが、まさにそれの「カクテルバー版」と考えればよいだろう。

ロボットがバーテンダー 現在現場にいるロボットは2台。どんなに忙しくてもイヤな顔ひとつせずに(といっても顔はないが)、黙々と働いてくれるので、勤勉な日本人、いや日本製かと思いきや、イタリア製とのこと。
 それでも勤勉さや時間厳守は日本人並みで、客からの注文が入るやいなや、すぐに仕事を開始。
 いかにも冷えていそうな金属製の専用シェーカーをしっかり手で握り(手かどうかわからないが)、頭上に並ぶ各種リキュール類などのボトルから目的のものを選ぶと(頭上といっても頭らしきものは見当たらないが)、その量や混ぜる比率などを完全に自分で判断。氷のセットが終わるといよいよ次のステップへ。

ロボットがバーテンダー シェーカーを振り始める前にちゃんとフタを閉めることを忘れてはいないところは立派というか、当たり前か。
 振る動作はなんとも滑稽でかわいらしいが、そこはさすがロボット。単純動作はお手のもので、「冷たい!」などとモンクを言う素振りはまったく見せずに、プログラムされた回数だけ規則正しくきちんと振ると、あっという間にプロ顔負けのカクテルが完成。
 カップにそそぎ入れる動作がぎこちなく、こぼしてしまいそうでハラハラさせてくれるが、2ヶ月ほど前の開業直後とは異なり、実地練習を重ねてきた甲斐があったのか、今ではこぼしたりすることはほとんどないという。ちゃんとライムも入れ忘れていないところも立派だ。

ロボットがバーテンダー これで値段は税込みで 10ドル。(標準カクテルの中から選択した場合)
 高いようにも思えるが、世界初のロボット・バーテンダーの「お手並み拝見料」込みの値段と考えれば、まぁ妥当といったところか。
 なお、自分がオーダーしなくても、他の人がオーダーしたカクテルの制作現場も自由に見ることができるという意味では、この料金は「作業」のお手並み拝見料ではなく、「お味」のお手並み拝見料と考えるべきかもしれないが、そのお味、ぜんぜん悪くない。
 というわけで、カクテルグラスであるべきものが使い捨てのプラスティック製のカップというところが少々残念ではあるものの、ロボットによる実演を楽しんだのち、本格的な味のカクテルも飲めるとなれば、試してみる価値は十分にあるだろう。

ロボットがバーテンダー オーダーの方法はもちろん無人で、店内に 22台設置されているタブレット端末を操作しておこなうことになる。(スマホ用の専用アプリもある)
 「このロボットは未成年者にはアルコール飲料を販売しません」 、「あなたは 21歳以上ですか」(アメリカでの飲酒は 21歳から)で始まる画面はすべて英語で日本語バージョンは用意されていないが、画面の指示にしたがって進めていけば、特にむずかしいことはないはずだ。
 支払いは、その端末の右端にあるカードリーダーにクレジットカードを自分で通しておこなう。そのクレジットカード決済のステップで、名前やメールアドレスを入力する画面が表示されるが、宣伝メールなどを受け取りたくなければ、そこはスキップしてかまわない。
(混雑時は、メールアドレスを入力しておくと、カクテルが完成したことをロボットがメールで自動的に知らせてくれるようになっているので意味があるが、今は混雑していることがあまりないようなのでメールアドレスの入力に意味はない)

ロボットがバーテンダー カクテルの種類や料金について補足しておくと、一般的なカクテル(端末の画面上では CLASSIC というカテゴリーにリストされているカクテル)が 10ドルSIGNATURE というカテゴリーにリストされている独創的かつ高級なカクテルが 14ドル、ノンアルコール・ドリンクが 5ドル。どれも十数種類ずつ用意されているので、選択肢の数として不足はない。(これら料金は変わる可能性あり。実際にここ数週間で変わっている)
 なおビールやワインはロボットの担当ではないので、別の場所あるカウンターにて人間にオーダーする必要がある。

ロボットがバーテンダー 話はカクテルに戻るが、自分独自のカクテルを作らせることも可能だ(料金は 14ドルから)。
 その場合、氷、水、炭酸、スピリッツ、ジュース、シロップ、付け合せ、合計7つの要素を画面から設定することになるわけだが、選択肢が多段階になっているので、それこそ無限大の組み合わせが可能になっている。
 たとえば、「スピリッツ」の設定では、ラム、バーボン、テキーラ、スコッチ、ジン、リキュール、ウォッカの中から選択でき、そこでラムを選択すると、さらに6種類のブランドが表示される。そしてそれぞれ量の調節もできるので、組み合わせはまさに無限大だ。
 カクテルファンにとっては、「やってみたいと思っていたが、まだやったことがない組み合わせ」などを試してみる絶好のチャンスなので、 予算が許す限り、いくつか作ってみるとよいだろう。

ロボットがバーテンダー 場所は前述の通りプラネットハリウッド・ホテルに隣接するショッピングモール内。ベラージオ・ホテルからストリップ大通りの横断歩道を渡ったところにある入口からモール内に入ってすぐ右側。(写真は、ビールやワインの販売を担当する有人カウンター)
 営業時間は午前11時から午後11時まで。金曜日と土曜日だけ深夜12時まで。
 さて最後に気になることを一つ。ロボットには給料も福利厚生も必要ないが、この場所は、家賃が非常に高いと思われる超一等地。経費がかかっているわりには、見学者ばかりで、実際にロボットにカクテルを作らせている客は少なく、今後の経営の継続が心配される。突然閉鎖になるとも限らないので、興味がある者は、早めに行っておいたほうがよいかもしれない。 

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