今週は、長年中断されたままになっていた大型カジノホテルの建設工事がいよいよ再開されそうだ、という話。
その建設現場とは、元スターダストホテルがあった場所で(上の写真は2005年ごろのスターダストホテル)、現存するホテルとの位置関係でいうならば、サーカスサーカスホテルのすぐ南側だ。
1958年創業のスターダストホテルは 2006年、すべての営業を打ち切り 48年の歴史に幕を閉じたあと、その翌年に爆破解体された。したがって、上の写真のような光景は、今は見ることができない。
地元のカジノ企業 Boyd 社が、その跡地に大型カジノホテル「Echelon」を建設することになり、盛大なセレモニーとともに華々しく建設工事が始まったが、不幸にもすぐに世界的な大不況「リーマンショック」に直面。(注:リーマンショックは和製英語で、英語では The Great Recession、The financial crisis などと表現されることが多い)
資金調達がむずかしくなると同時に、完成後の採算性も疑問視されるようになると、同社は景気が回復するまで建設の中断を決定。現場の作業員はすべて引き上げ、未完成というよりも、やり始めたばかりといった感じの Echelon はそのまま雨ざらし状態で放置されることに。(上の写真が、雨ざらし状態の現在の様子。南側から撮影)
その後、同社は工事再開の時期をうかがっていたものの、不況が長引くと判断、すべてを断念して、Echelon 計画自体を売却すると発表。
そこに名乗りを上げたのが、マレーシアに本拠を置く総合レジャー企業ゲンティン社で、2013年、工事が中断されたままになっている Echelon を 3億5000万ドルで買い取り、中国をテーマにした大型カジノホテル Resorts World として完成させると発表。(写真は現在の様子。東側から撮影)
そこまではよかったが、やはり不況であることに変わりはなく、景気は冷え込んだままで、結局、当初の予定では、2016年までに完成させるとのことだったが、一度も本格的な工事に着手することなく、完成時期は 2018年、2019年と2度も延長。もはやだれも信じないような状況にあるなか、このたび3度目の延長として 「2020年完成」が発表された。
もちろん今回の発表もそのまま信じていいのかどうか、信ぴょう性に疑問はあるが、新たに任命された責任者が実績のある有能な経営者であることと、景気がかなり回復してきていることなどから、今度こそ信じてよいのではないか、というのが地元メディアや業界関係者の声として報じられている。
余談になるが、英語でも「Third time lucky」という表現で、「三度目の正直」に似た概念があるようだ。
というわけで、あくまでも希望的観測、つまり 2020年ごろに開業するであろうという前提の楽観論になってしまうが、この Resort World は、ラスベガスとしては 10年ぶりの新規開業の大型カジノホテルとして期待してもよさそうなので(最後に開業した大型カジノホテルは 2010年のコスモポリタン)、今回あらたに発表されたホテルの概要を簡単に紹介しておきたい。
まずは建設開始についてだが、建設機材を3ヵ月以内に搬入し、遅くとも年内に本格的な工事を再開したいとしている。(写真はゲンティン社が公式サイトで発表している完成予定図)
客室数は約 3000。ラスベガスのホテルとしては、飛び抜けて大きいわけでもないが、小さくもない標準的なサイズということになるが、テーマが「中国」というところが、他のホテルと大きく違うところ。
ちなみに既存のホテルのテーマは、ローマ帝国(シーザーズパレス)、北イタリアのコモ湖(ベラージオ)、ベニス(ベネチアン)、イタリアの宮殿(パラッツォ)、モナコ(モンテカルロ)、イングランド(クロムウェル)、ウェールズのアーサー王(エクスカリバー)、ニューヨーク(ニューヨークニューヨーク)、ハリウッド(プラネットハリウッド)、さらに今は亡きリビエラも含め、これまでのホテルは欧米文化をテーマにすることが多かっただけに、中国というのはかなり異色の存在ということになる。
そしてその中国に関する具体的な部分としては、万里の長城を造ったり、パンダを飼うことも検討しているらしい。どのような万里の長城なのか、そしてパンダも調達などに問題はないのか、不透明な部分もないわけではないが、少なくともこれまでにはなかったユニークなホテルになりそうなことだけはまちがいなさそうだ。
地元経済や雇用に関する部分では、総工費約40億ドル、建設労働者を常時約1000人、完成後は約3000人を雇用するとのことで、地元の期待も大きい。
ただ、技術的な部分を不安視する声もある。それは、数年間放置された鉄筋やコンクリートの腐食などによる強度不足に関する問題だ。
上の写真からもわかる通り、柱の先端部分は風雨や紫外線に長期間さらされている。全面的な建て替えも視野に入れているような話も聞くが、そうなると新たに経済的な問題が浮上してくる可能性がある。
いずれにせよ、開業するまで何があるかわからないのがこの街のビジネス・スタイルだ。ほぼ完成に近づいても計画が頓挫してしまったりすることがあるので(元リビエラホテルの前にそびえる超高層ホテル「フォンテンブロー」がそのいい例。とっくにほぼ出来上がっているが、まだ開業していない)、2020年開業は、大いに期待しながらも「話半分」ぐらいに聞いておいたほうがよいのかもしれない。いや、数量的には、あと3年ではなく6年ぐらい先の「話2倍」といったところか。