50周年 CES、初めて訪れる人のための見学ノウハウ

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 今週のラスベガスはCES一色。CESとは、Consumer Electronics Show のこと。ラスベガス最大のイベントであると同時に正月の風物詩でもある。
 今年は1月4日の前夜祭に始まり8日までの日程で、ラスベガス・コンベンションセンター(以下、LVCC)、サンズ・エキスポ・コンベンションセンター(同、SECC)、各ホテルのボールルームなど、市内のさまざまな会場で開催される。

CES  日本の報道機関などでは「家電見本市」と訳されることが多いようだが、今年で 50年目という長い歴史の中で、イベントのジャンルは家電という範囲を大きく超えて総合エレクトロニクスに成長しており、近年は自動車業界も参戦するなど、もはや世界最大級の「ハイテク業界の祭典」といった様相を呈している。(下の写真は昨年のトヨタのブース。以下の写真はすべて昨年のCES)

CES  出展企業や業界関係者のみならず、世界中からメディアも集結するため、どこのホテルもほぼ満室状態で宿泊料も高騰。
 結果的に一般観光客は締め出されるかたちになってしまい、CESウイークだけはカジノ都市ラスベガスも日ごろのお遊び系の雰囲気はトーンダウン。観光客やギャンブラーの代わりにエンジニアやビジネスマン、ビジネスウーマンたちを迎え入れる真面目な都市となる。

CES  ハイテクといえば日本のお家芸。(中国や韓国の台頭で、最近はそうでもなくなりつつあるが)
 日本からの出展企業も多く、たくさんの日系企業の関係者がベガスを訪れる。そして毎年このラスベガス大全にも、初めてCESを体験する出張族などから、「限られた時間内で効率よく見学するにはどうしたらよいか」といった問い合わせが寄せられる。以下、CES見学のための初歩的なノウハウを書き出してみた。

CES  まず最初にやらなければならないことは、入場バッジを受け取ること。(写真のビジネスマンが首からぶら下げているのがそのバッジ)
 LVCC や SECC などのイベント会場のみならず、空港や一部のホテルなど市内 25ヶ所でもバッジを受け取ることができる。
 どこで受け取ってもかまわないが、LVCC や SECC は長蛇の列になることもあるので、時間を有効に使いたいのであれば、空港に到着した際、スーツケースなどが回転台に出てくるまでの時間を利用するとよい。
 バッジを発行してくれる受付カウンターの場所は、回転台が並ぶ付近で周囲を見渡せばすぐにわかるはずなので心配は無用。そのカウンターで、あらかじめ登録してある名前を申し出るか、事前に受け取っているバーコードなどをパスポートと一緒に見せれば、すぐに発行してもらえる。
 なお、CESのことを日本では「セス」と発音する傾向にあるようだが、「シー・イー・エス」が正しいので、「セスの受付はどこですか?」などと尋ねても理解してもらえない。

CES  滞在ホテルから会場へ行くための交通手段は無料の専用バスに限る。もしくは渋滞を避けたいのであれば、モノレールでもかまわない。タクシーは長蛇の列になることが多く、また安いことで人気の Uber や Lyft は運賃が通常時の数倍になる可能性が高いので、あまりおすすめできない。(タクシーは需要が高くても料金は一定だが、Uber や Lyft は変動する)
 専用バスとは、CESの主催者が手配している大型バスのことで、ほとんどすべての主要ホテルとイベント会場の間をピストン輸送する形で運行。乗り場や運行開始時間などは各ホテルのロビーに大きく掲示されるので簡単にわかるようになっている。
 モノレールはストリップ大通りの東側を走っているので、MGMグランド、バリーズ、フラミンゴ、リンクなどの各ホテルの宿泊者にとっては利用しやすいが、西側のホテルに滞在している場合はあまり便利とはいえない。
 なお Uber や Lyft の運賃の高さについて書いたばかりだが、CES主催者がその両社と提携しており、以下のCES限定の特別アプリをダウンロードすると割引になったりする可能性もあるので、専用バスだけでは不便という人はダウンロードしておくとよいかもしれない。

https://www.lyft.com/invited/CES17
https://get.uber.com/go/CES2017

CES  さて一番悩むのが、どの会場を優先して見るべきかということになるわけだが、それは一概にはいえない。
 なぜなら大企業の革新的な技術を見たいという者もいれば、仕入先としての中小の部品メーカーなどを探している者もいたりするわけで、各自のCESに対する訪問目的が異なるからだ。
 したがって、現場で配布される出展企業リストなどの資料をよく見て各自で判断するしかないが、以下のように会場ごとの特徴がある程度決まっているので、それは知っておいたほうがよい。

LVCC の Central Hall
CES  世界的なエレクトロニクス関連の大企業が集まる会場。CESの数ある会場の中でも最も中核をなすメインホールで、野球でいえばメジャーリーグ的な存在。出張レポートなどのための写真を撮るならこの会場がベスト。日本からはソニー、パナソニック、キャノン、ニコン、カシオなどが出展。その他の巨大ブースとしてはインテル、クアルコムなどがある。韓国系企業の存在感も小さくない。なお東芝は粉飾決算などの不祥事による業績不振の影響か、昨年まで長らく確保してきた定位置の巨大ブースを手放した。

LVCC の North Hall
CES  全自動運転カーやコネクテッドカー(ネットにつながっている車)などの開発で、しのぎを削る自動車業界を中心とした会場。トヨタ、ホンダ、ニッサン、フォード、クライスラー、メルセデスベンツ、フォルクスワーゲン、アウディなどの自動車メーカーから、デンソー、パイオニア、JVC・ケンウッドなどの部品メーカーやカーオーディオ系の企業まで、大小さまざまなブースが並ぶ。また今年は、ベガスに製造拠点を構えることになった注目の電気自動車メーカー、ファラデー・フーチャー社も初出展。なお電気自動車の雄、テスラ社は出展しない。

LVCC の South Hall、1階 & 2階
 このホールは野球でいえばマイナーリーグ、つまり中規模のエレクトロニクス関連企業が中心となっている会場で、ジャンルとしてはスマホやドローンなどのメーカーがひしめき合う。スマホのケースなど、アクセサリー関連のメーカーも多数。

SECC の 2階
このホールは、いわゆる家電系のメーカーが中心で、ジャンルとしては、健康器具関連、スポーツ関連、住宅関連など、ホームエレクトロニクス全般。日本の TOTO、そして JETRO もここにブースを構える。3Dプリンター関連のメーカーも数多く出展。アンダーアーマー、セグウェイもこのホールで新製品を発表する予定。

SECC の 1階
CES  ここは世界中の中小企業が集まるカオス状態の激混みの会場(写真はすいている時間帯に撮影)。分野はアダルト系から「こんなモノ、売れるわけがない」と思われるような意味不明の商品まで何でもあり。ブースのサイズと数は、通称「テン・バイ・テン」(10フィート x 10フィート の意味)と呼ばれる日本でいえば「3坪店舗」の超ミニ・ブースばかりが約800。考えようによっては CESで最も面白い会場といえなくもない。将来の大企業がここから生まれるかもしれないと思いながら見学すると、さらなる興味が湧いてくるはず。

Westgate Hotel
 Westgate Hotel は LVCC に直結するコンベンション会場を持つ。ここも SECC の1階のように中小企業の小さなブースが目立つが、ジャンル的には電子部品やバッテリー、それにPCの周辺機器など、技術オタク向けのモノが多く、ふざけた商品やバカバカしい商品の展示は少ない。

 その他にもウィンやアリアといったホテルが会場になったりもしているが、業界関係者のコンファレンスや商談などのためのスペースがメインで、商品の展示はあまり多くないので、時間に余裕がある者以外は行く必要はないだろう。
 なお、キーノートスピーチと称される業界著名人の講演会も多数予定されており、日本人が知る著名人としては、日産自動車のカルロス・ゴーン社長が 1月5日の午後4時から Westgate ホテルのシアターで公演することになっている。
 以上長くなってしまったが、これらの情報を参考に効率的に会場を回っていただければ幸いだ。会場間の移動は、もちろん無料の専用バスで可能。朝から晩まで見学した場合、毎日2万歩ぐらい歩くことになるので、履き慣れたシューズがおすすめ。

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