マイケル・ジャクソン・ワンMichael Jackson ONE

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マイケル・ジャクソンをテーマにしたダンスと光とサウンドを中心としたシルク・ドゥ・ソレイユの軽快なショー。高度なプロジェクション技術が見どころ。演出の中で煙を多用しているところにも注目。マイケルのファンは必見。

会場ホテル: マンダレイベイ
公演時刻: 7:00pm と 9:30pm
休演曜日: 火曜日 と 水曜日
チケット料金: $75前後から

[マイケル・ジャクソンONE] 概要

 カナダのサーカス集団、シルク・ドゥ・ソレイユが演じるマイケル・ジャクソンをテーマにしたショー。
 ラスベガスでのシルクの常設ショーとしては、ミスティア、オウ、ズーマニティ、KA、LOVE、クリスエンジェル・ビリーブ(移籍)、ビバ・エルビス(終演)、ザーカナ(終演)に次ぐ9作目で、特定の人物やグループをテーマにしたショーとしては、LOVE(ビートルズ)、クリスエンジェル・ビリーブ(クリスエンジェル)、ビバ・エルビス(エルビスプレスリー)に次ぐ4作目となる。

 なお、シルクとマイケル・ジャクソンといえば、世界各地で開催された「Michael Jackson THE IMMORTAL World Tour」が気になるところだが、両者は監督こそ同一人物ではあるものの、シルクの中では異なるショーとして位置づけられており、実際に内容も微妙に異なっている。

 結論から先に書くならば、なかなか良くできている、というのが正直な印象で、ブログやフェイスブックなどでの評判も総じて上々のようだ。
 また、このショーは、ミュージシャンとのコラボレーションというコンセプト的な類似性から、LOVE およびビバ・エルビスと比較されることが多いわけだが、その3作の中では、内容や完成度において一番レベルが高く、興行的にも有利な条件にあり成功するだろうと、日ごろ手厳しいコメントが目立つ地元メディアも好意的な論調で称賛しており、悪い評判はほとんど見かけない。

 実際に興行的にはうまくいっているように見えるのはたしかだが、興行収入の多くはシルクや MGM社(マンダレイベイホテルの会社)よりも、マイケル・ジャクソンを管理する会社側に入ってしまっているという噂が絶えないのも事実。

 それはともかく、好評の理由はテクノロジーの進歩と、対象となる観客の年齢層の広さにあるように思われる。
 このショーでは、プロジェクション技術、とりわけここ数年で劇的に進歩した感のあるプロジェクションマッピング技術がふんだんに使われており、見えていた役者が突然消えるなど、マジックさながらの演出には多くの観客が圧倒され、「おぉー」という驚きの声が会場内に響き渡るシーンが何度かあったりする。
 他のシルクのショーではあまり見られない光景で、高度なプロジェクション技術こそが、このショーの最大のセールスポイントであり真骨頂といってよいのではないか。

 また、往年の活躍ぶり、スター性、知名度という意味では3者ともに甲乙つけがたい存在だが、ビートルズとエルビスは高齢層にファンがかたよりがちで、特にエルビスの場合、死後40年以上が経過していることが若年層に対するマーケティングにおいては大きなハンデとなり撤退を余儀なくされてしまったわけだが、マイケルは幅広い年齢層で認知度が高く、そういった条件の良さも評価を高くしている要因の一つと思われる。
 さらに、音楽そのものに軸足を置くエルビスやビートルズと比べ、マイケルの場合はダンスなどビジュアル的な要素も重要なミュージシャンで、そういった部分はこの種のショーをクリエイトする際には非常に都合がよく、企画の段階ですでに成功しやすい条件が整っていたといえなくもない。

[マイケル・ジャクソンONE] シルク色とマイケル色、どちらの割合が強い?

 さて、このショーにおけるシルクとマイケルの存在感の比率はどうか。シルクのカラーが全面的に出ている「やっぱりシルクのショー」なのか、「ほとんどマイケルのショー」なのか、これから観ようという者にとっては大いに気になるところだろうが、LOVEやビバ・エルビスの際にも語られたこの「比率」を判断するのはやはりむずかしい。
 なぜなら、マイケルの曲が流れ、彼の映像が大きく映しだされている場面で、シルクらしいアクロバットを披露された場合、マイケルのファンは曲や映像に心を打たれ感動し、シルクのファンはアクロバットに目が釘付けとなり、存在感の比率は立場によって大きく異なってしまうからだ。

 それを承知の上であえて強引にその比率を数値で表現するならば、ショーの前半は 6:4 でマイケル色が強く、後半はその逆の 4:6、結局トータルすると 5:5 の半々といったところか。
 シルクとマイケルのコラボレーションという意味ではちょうど良い比率のように思えるが、どうだろう。もちろんこの数値には根拠などまったくない。

 ちなみにビバ・エルビスでは、エルビスの存在感が強いという印象を受けた。それがゆえに、エルビスのファンであることが、楽しく鑑賞できるための必要条件となってしまいがちで、それが理由で失敗したともいわれているが、このマイケル・ジャクソン・ワンにおいては、その半々というほど良い比率が、ファン以外もそこそこ楽しめる要因を作り出しているように思える。

[マイケル・ジャクソンONE] 特徴

 その他このショーの特徴にふれておくと、ステージのみならず客席側を含めた空間で3次元的に映像を描写するシーンが多く、その際のスクリーンとなる煙(人体には害がないとされている)がかなり頻繁に多用される。
 またその煙は、それが不要な場面においては視野の邪魔をするだけなのですぐに取り除かれる必要があるわけだが、位置によっては空調の風が強く、肌寒く感じられる席が少なくない。真夏でも冷房が苦手な者は、何か羽織るようなものを持参したほうがよいだろう。

[マイケル・ジャクソンONE] シルクファン注目ポイント

 シルク的な要素を期待するファンのための情報として、LOVEやビバ・エルビスでもおなじみのトランポリンを使った演技がこのショーでもかなり楽しめる。また帽子を使ったジャグリングもシルクらしい出し物の一つだ。
 ただ、衣装や化粧は、ミスティア、オウ、KAなどで見られるいかにもシルクらしい前衛的かつ神秘的なものはほとんどなく、ストリートパフォーマー風のラフな普段着や、ロボットのような衣装が目立つ。シルクらしさを抑えてマイケルのイメージに合わせたといったところか。

[マイケル・ジャクソンONE] マイケルファン注目ポイント

 マイケルファンにとっての注目すべきところはやはりムーンウォークだろう。十人以上のパフォーマーによる一斉の演技は必見で、また照明を落とした真っ暗な空間の中での LEDによる演技も圧巻だ。

 演奏されるマイケルのヒット曲は、スリラー、ビリージーン、マンインザミラー、スムーズクリミナルなど全部で 30曲以上。
 マイケルが子供のころに歌っていたビデオなど、お宝映像も少なくないので、ファンにとってはそれらを見るだけでも、この劇場に足を運ぶ価値はありそうだ。

 映像といえば、第二次世界大戦、ベトナム戦争、東西の冷戦時の抗議デモや反戦運動、さらにはアフリカの飢餓などの写真や動画もけっこう多く映し出される。
 マイケル自身が生前、当時大統領だったブッシュ政権に対して反ブッシュを明確にし、反戦歌を歌うなどリベラル系の政治活動に積極的だったことを考えると、自然な演出といえなくもないが、保守系の思想を持った共和党支持者の観客も多数来場しているであろうことを考えると、思想的な部分をあまり強く打ち出す演出は、マーケティング的にマイナス要因となってしまうような気がしないでもないが、考えすぎか。
 なお「世界はひとつ」、つまりこのショーのタイトルである「ONE」を主張する場面の世界各国の国旗がたくさん映し出されるシーンにおいて、なぜか日本の日の丸を探し出すことは困難であった一方、イスラエルの国旗が何度もアップで大写しにされていたのは何か意図があるのか興味深いところだ。これも考えすぎか。

[マイケル・ジャクソンONE] 座席選びの注意点

 さて最後に劇場そのものについて。平面図の劇場マップなどで見ていると、1階席、2階席に分かれているようにも見受けられるが、すべての座席セクションは同一面内にある。
 またフロアの傾斜も十分にあるので、前の座席の人の頭がじゃまになるようなことも少なく、極端に悪い席というものはほとんどないと考えてよい。

 この劇場における座席選びの際の注意点は、前後の位置、つまり奥行きだ。ステージから遠く離れた後方の席は良くない、という意味ではない。
 むしろ左右のズレよりも、前後のズレのほうが悪影響が少ないので、前方で左右にずれた席を選ぶよりは、後方の中央付近にしたほうがよい。
 実際に料金体系もそのように設定されており、後方だからといって安いわけではなく、前から23列目の中央付近の席のほうが、前から5列目の両端の席よりも高かったりする。

 左右のズレが少ない中央付近がよいことはわかったが、注意したいことは、このショーにおいては、前後の位置の違いで、見える景色がぜんぜん違ってくるということ。なぜなら、左右の壁も巨大なスクリーンとして使用しているからだ。
 ちなみにその左右の壁のスクリーンの大きさは、ステージの間口の幅と高さとほぼ等しく、それら全部を使う映像シーンにおいては、まるでステージが3つ存在しているかのような迫力ある演出になる。

 ただしそのように見えるのは後方の座席だけ。ステージに近い座席からは、その左右の壁のスクリーンを見ることができないからだ。意識的に横を向けば見えないこともないが、右と左の両方の壁を同時に見ることはどう考えても不可能。
 一方、後方のセクションからは、ステージ、左、右、この3面の映像を同時に見ることができ、なおかつそれら3面はつながった横長の一つのスクリーンのように見ることができる。

 では前か後ろか。どちらを選ぶべきか。この選択はむずかしい。うしろからは3画面を同時に見ることができるが、ステージ上のパフォーマーたちの細かな動きは遠すぎて見にくい。
 したがって座席選びは、ステージ上の演出をしっかり見たい場合は前方のセクション、左右の壁も含めた全体の演出を見たい場合は後方のセクションを選べばよいことになる。
 ではベストは何か。それは2度見ることだ。前方と後方ではまったく違った楽しみ方ができるので、マイケルファン、シルクファンはぜひ両方から見ていただきたい。

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