カジノも困惑、新生ゴールデンナイツが強いワケ

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 今週は、ラスベガスに誕生したばかりのプロ・アイスホッケーチーム Vegas Golden Knights(ベガス・ゴールデンナイツ)が想定外ともいえる絶好調を維持しており、対戦相手のチームのみならず、配当倍率の大幅変更という異例の事態でカジノも困惑しているという話。(下の写真は、ゴールデンナイツの本拠地 T-Mobile ARENA。1月13日撮影、クリックで拡大表示)

Vegas Golden Knights  ゴールデンナイツは他の都市から移転して来たチームではない。各選手こそ他のチームから引き抜いてきた寄せ集めだが、ラスベガスで新規に結成され、今シーズンから新たに参戦している NHL の新生チームだ。
 ちなみに、野球(MLB)、アメリカンフットボール(NFL)、バスケットボール(NBA)、アイスホッケー(NHL)は「北米4大プロスポーツ」と称されており、そのチーム数は、野球 30、アメフト 32、バスケ 30、ホッケー 31 で、合計 123
 それだけたくさんあるにも関わらず、長らくここラスベガスには、この4大スポーツの、いずれのチームも存在しなかった。(日本でいうところの2軍や2部リーグのような下部リーグのチームは存在している)

Vegas Golden Knights ラスベガスを本拠地とするチームがゼロだったことに関しては、いくつか理由があり、よく言われているのが、都市の規模、つまり人口がそれほど多くないため、興行的に採算が取れないのではないかという懸念。それと、たまたまラスベガスにはプロチームを受け入れるようなスタジアムやアリーナがなかった、もしくはあっても理想的な立地条件ではなかったという競技施設の問題。
 しかしどちらの理由も本当ではないというのが地元での共通認識だ。その証拠に、都市圏人口が 200万人程度のラスベガスと同規模、もしくはそれ以下の規模で、4大プロスポーツチームを擁している都市はたくさんある。ミルウォーキー、 グリーンベイ、ナッシュビル、カンザスシティー、オクラホマシティー、ソルトレイクシティー、バッファロー、カルガリー、オタワなどがそうだ。
 施設に関しても、土地が余っているラスベガスでは造ろうと思えばすぐに造れるはずで、またラスベガス観光局は豊富な予算を持っており(それに関しては、バックナンバー第1073号に掲載)、建設資金の問題とも思えない。

Vegas Golden Knights 本当の理由は、カジノの存在といわれている。ラスベガスのカジノでは、スポーツの試合結果に賭けることができるため(他の都市にもカジノはあるが、そのほとんどにおいて、スポーツに賭けることは禁止されている)、MLB、NFL、NBA、NHL の各スポーツ機構は、青少年ファンなどが観戦する試合を、そのような都市で開催することは健全ではないと考えており、ラスベガス観光局などからの長年に渡るチーム誘致のラブコールにも応じてこなかった。(上の写真はラスベガスのカジノのスポーツブック。賭けている人たちが巨大スクリーンで試合観戦ができるようになっている)
 それがここ数年、ベガスでカジノホテルを多数運営する MGM社などの努力もあり、健全性の問題よりもビジネス的なメリットに機構側も理解を示し始め、一昨年ついにフットボールのオークランド・レイダースのベガス移転と、アイスホッケーチームの新設が決定。レイダースはスタジアムの建設にあと2年ほど要するため、まだベガスに来ていないが、MGM社などが中心となって手がけたアリーナ(T-Mobile ARENA)は一足早く完成したことから、昨年ゴールデンナイツが結成され、今シーズンからの参戦が実現した。

 一般的にどんなスポーツにおいても新生チームはあまり強くないのが普通で、ゴールデンナイツの監督も昨年秋のシーズン開幕前には、「数年以内にプレーオフに進出できるようなチームにしたい」と、ひかえめな発言をしていた。
 当然のことながら、賭けを受け付けるカジノでの評価も低く、スタンレーカップ(野球のワールドシリーズ、フットボールのスーパーボウルに相当する年間王者の決定戦)に勝つチームを当てる賭けにおいて、ゴールデンナイツの配当倍率は、開幕前 300倍前後だった。100ドル賭けて的中したら 30,000ドルという 超大穴 になるわけだが、これは「優勝の見込みはほとんどゼロ」と判断されたこととほぼ等しい。(下の写真は、現在 MGMグランドのカジノで配布されているスタンレーカップのオッズ表。開幕前、ゴールデンナイツは 300倍であったことが見て取れる)

Vegas Golden Knights ところが、シーズンの約半分を消化した現時点における順位は、なんと堂々の第1位。もはやスタンレーカップの大本命といっても過言ではない位置に付けており、その結果、各カジノでは日を追うごとに配当倍率を下げることを余儀なくされ、現在は8倍前後で推移している。
 すでに売ってしまった300倍の投票券に関しては、そのままの倍率が適用されるため、もしゴールデンナイツがスタンレーカップで勝った場合、ベガスのカジノは大きく損をすることになり、カジノ業界ではちょっとした話題となっている。

 ちなみに NHL のレギュラーシーズン(10月から4月)の順位は勝ち点方式で決まり、試合に勝つと2点、延長戦ではない普通の負けが0点、同点からの延長戦で負けた場合に1点が与えられ、現在ゴールデンナイツは2位に7点差をつける独走の 61点。特に、地元ベガスでのホームゲームにはめっぽう強く、22戦18勝2敗2延敗 という驚異的な成績を残している。(ホームゲームで強い理由に関しては、順位表の下に続く…)

西コンファレンス 1月14日 時点 ホーム アウェー
PACIFIC Division 勝点 延敗 延敗 延敗
Vegas 61 29 10 3 18 2 2 11 8 1
Calgary 54 25 16 4 12 11 0 13 5 4
Los Angeles 53 24 15 5 11 8 3 13 7 2
San Jose 52 23 13 6 13 6 2 10 7 4
Anaheim 49 20 16 9 10 8 3 10 8 6
Edmonton 43 20 23 3 9 12 1 11 11 2
Vancouver 42 18 21 6 7 12 3 11 9 3
Arizona 27 10 28 7 5 14 2 5 14 5


 

西コンファレンス 1月14日 時点 ホーム アウェー
CENTRAL Division 勝点 延敗 延敗 延敗
Winnipeg 59 26 13 7 16 3 1 10 10 6
Nashville 56 25 11 6 13 4 2 12 7 4
St.Louis 55 26 17 3 15 9 0 11 8 3
Dallas 53 25 17 3 16 6 1 9 11 2
Minnesota 53 24 17 5 15 4 4 9 13 1
Colorado 51 24 16 3 16 7 1 8 9 2
Chicago 50 22 17 6 12 8 2 10 9 4


 

東コンファレンス 1月14日 時点 ホーム アウェー
ATLANTIC Division 勝点 延敗 延敗 延敗
Tampa Bay 65 31 10 3 17 4 1 14 6 2
Boston 56 24 10 8 14 5 4 10 5 4
Toronto 53 25 17 3 13 7 1 12 10 2
Detroit 43 18 18 7 10 7 6 8 11 1
Florida 42 18 19 6 10 7 3 8 12 3
Montreal 42 18 20 6 11 8 5 7 12 1
Ottawa 39 15 18 9 9 8 5 6 10 4
Buffalo 31 11 24 9 6 11 3 5 13 6


 

東コンファレンス 1月14日 時点 ホーム アウェー
METROPOLITAN Div. 勝点 延敗 延敗 延敗
Washington 59 28 14 3 18 6 0 10 8 3
Columbus 53 25 18 3 15 8 0 10 10 3
New Jersey 52 22 12 8 12 6 3 10 6 5
Pittsburgh 51 24 19 3 15 7 1 9 12 2
N.Y.Islanders 50 23 18 4 13 5 3 10 13 1
N.Y.Rangers 49 22 17 5 15 8 3 7 9 2
Philadelphia 48 20 15 8 11 8 4 9 7 4
Carolina 48 20 17 8 10 6 4 10 11 4

ビジターチームは “インフルエンザ” にやられる?!

 300倍という屈辱的な倍率が付けられていたゴールデンナイツが1位にいるという想定外の大健闘もさることながら、ホームゲームでの数字が驚異的すぎ、各スポーツメディアは最近になって、その理由などを分析し始めた。
 ちなみに野球の場合、地元ファンからの応援などの心理的な部分を除いても、ピッチャーマウンドの高さ、外野フェンスの形状や材質、照明が目に入りやすい位置、常態的に発生しやすい風向きなど、ビジターチームでは把握しにくい情報をホームチームは熟知しているため、ホームチームが有利とされているが、アイスホッケーにおいてはそのような環境の違いはあまりない。
 また、2014年に韓国で開催されたアジア大会のバドミントンの試合において、韓国チームがチェンジコートをするたびに、空調を追い風になるように切り替えていたというスキャンダルは記憶に新しいが、硬くて重いアイスホッケーのパックの動きは空調でどうにかなるというものでもない。
 ではなぜこれほどまでにゴールデンナイツはホームゲームに強いのか。ちなみに同じ西コンファレンス・パシフィック・ディビジョンの他のチームはまったく逆の傾向、つまりホームゲームよりもアウェーゲームのほうが総じて良い成績を残している。
 この不思議な事態の理由を、スポーツメディアは “Vegas Flu” (ベガスのインフルエンザ)という言葉を使って解明しようとしているから興味深い。
 ベガスのインフルエンザとは、ビジターチームは試合前日などに、夜遅くまで遊んでしまい、睡眠不足に陥り万全の体調で試合に臨めていないのではないか、という仮説のことだ。
 実際に、日本のスポーツチームと比べると、プライベート時間に対するチーム側の管理はゆるい傾向にあるとされ、夜の行動などは各個人の判断に任されていることが多く、カジノやナイトショーを楽しむ選手も少なくないらしい。
 極限までの体力やテクニックを駆使して戦うプロスポーツにおいては、ちょっとした睡眠不足などが結果に現れてしまう可能性は否定できない。
 ゴールデンナイツは新設チームだ。ということは、他のチームにとってラスベガスは、昨シーズンまでは対戦地としては存在していなかったことになる。結果的に多くのプレーヤーにとって新鮮な訪問地であり、家族などを呼んでラスベガスを楽しんでしまう者がいても不思議ではない。
 そうなると、この仮説もまんざら根拠が無いわけではなく、ゴールデンナイツのファンとしては、このままシーズン後半も独走大勢が続くと予想したいところだが、「それは甘い」 と見るファンも少なくない。というのも、ビジターチームにとっても、そろそろベガスに遊び飽き、ベガス訪問が非日常ではなくなるからだ。だとすると、来シーズンはさらに Vegas Flu の効き目が薄れてくることが予想され、やはり新生ゴールデンナイツが輝いていられるのは今シーズン限りということになるのか。とりあえず後半戦に注目したい。

Vegas Golden Knights さて最後に余談だが、ラスベガスにプロチームを誘致するということは、この街にとって、これまでに予想してきた以上の経済効果が期待できるかもしれない。というのも、試合会場に足を運ぶのは、地元のファンのみならず、ビジターチームのファンも大挙して訪れていることが、ゴールデンナイツのホームゲームでわかってきたからだ。
 一般的に、どのスポーツの試合においても、観客は地元のファンが圧倒地に多い。たとえば、ロサンゼルス・ドジャースのファンが、ニューヨークで行われるメッツとの試合にわざわざ足を運ぶことなどまず考えにくい。それは距離的に遠いからということではなく、たとえば比較的近いサンフランシスコでの試合においても、特にその街に立ち寄る理由でもない限り、わざわざロサンゼルスから試合観戦に行くことはまずないだろう。

Vegas Golden Knights しかしラスベガスの場合、エンターテインメントが数ある観光地ということもあり、はるか遠方の都市からも、ビジターチームのファンが多数押し寄せることがわかってきた。
 ここに掲載されている2枚の写真内のオレンジ色のジャージを着た人たちは、1月13日に開催された「ベガス・ゴールデンナイツ 対 エドモントン・オイラーズ」の試合観戦のために、2000km 以上も離れたカナダのエドモントンからラスベガスにやって来たオイラーズのファンたちだ。試合前にアリーナ近くのビールパブで盛り上がっている場面だが、どう見てもゴールデンナイツのファンよりも多い。
 この事実は、興行的にもビジネス的にも新たな発見であり、2年後にやって来るレイダーズの関係者のみならず、ラスベガスのさまざまな企業にとっても有益かつ興味深いケーススタディとなるのではないか。 

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