海底から引き上げた遺品を展示するタイタニック博物館

 今年は英国の豪華客船タイタニック号の事故からちょうど100年。4月15日はその100回目の命日に当たり、先週から今週にかけては世界各地で大小さまざまな追悼イベントがおこなわれている。

 当事国のイギリスでは先週、乗客の数や船内での食事内容などをタイタニック号とほぼ同じ条件に設定し、悲劇の航路をそのままたどってニューヨークへ向かうクルーズ船が出航。
 犠牲者の孫や親戚なども多く乗船し事故現場では黙祷をするというからまさに追悼クルーズの様相だ。

 またジェームスキャメロン監督の大ヒット映画「タイタニック」も発表から15年がたち、この100周年を機会に 3Dバージョンが今月から登場。
 さらに、GPSを始めとする様々な機器の高性能化を受けた沈没現場でのさらなる海底調査や、氷山に衝突したとされる事故原因を改めて詳しく解析し検証しようとする動きが出てくるなど、しばらくはタイタニックブームが続きそうだ。

 ここラスベガスもタイタニック号とは無縁ではない。
 バリーズホテルで行われているロングランのナイトショー「ジュビリー」では、タイタニック号の事故シーンを30年も前から演じている。
 ハイテク技術の進歩とともに、その演出方法も少しずつ進化しているが、ラインダンスなど華やかなエンターテインメントの中に悲劇のシーンを取り入れ会場内の雰囲気を一瞬だけでも引き締めるコンセプトは一貫して変わっていない。

 さらに、今はたまたま体調を崩し休演中だが、歌手セリーヌ・ディオンのシーザーズパレスでのコンサートも、ファンの多くは映画「タイタニック」のテーマソング「My Heart Will Go On」を聴きたくて現場に足を運んでいるといっても過言ではないだろう。

 そんなラスベガスにおいても、やはりタイタニックといえば、ルクソールホテルでのタイタニック展「Titanic: The Artifact Exhibition」が総本山的な存在だ。
 (~展 というと、何やら一時的内燃とのような響きがあるが、ここは長期にわたる常駐展示なので、もはやタイタニック博物館と呼んだほうがふさわしいと思われる)

 100周年追悼展示に合わせて内容が少し刷新されたというのでさっそく行ってみた。
 かつてトロピカーナホテルで開催されていたこともあるこのイベントは、海底から新たに引き上げられた遺品が随時追加展示されるなど、すでに観たことがある者にとっても目が離せない存在で、内容の充実ぶりに対する評価は非常に高い。今回の展示では、100年目に至るまでの推移など、年表的な解説などの増強が図られた。

 展示経路の順に内容を簡単に説明すると、まず入館時に、当時の実際の現物を再現した乗船券を手渡される。
 これには乗客の名前や一等船室か二等船室かなどが記載されており、自分がその乗客になったという設定で館内に入る(乗船する)ことになるわけだが、結局この演出は、順路の最後に掲載されている生存者名簿と死亡者名簿のところで、自分の生死が知らされるという仕組みだ。

 すべて実名なのと、その場所に至るまでの展示がかなり感傷的なものになっていることもあり、単なるアトラクションの演出としてはなんとも心が引き締まり緊張する場面で、ほとんどの見学者は真剣な眼差しで名簿を凝視しており、しゃべったりしている者はほとんどいない。

 ちなみに生存者名簿には約700人死亡者名簿には約1500人の実名がフルネームでおごそかに記載されている。

 入館して最初の展示は、船が完成するまでの造船場や当時の英国の街の中の様子を示す写真や動画で、100年前のものとは思えないほど鮮明なものが多い。

 そのまま進むと船内の廊下、そして船室。狭い部屋に2段ベッドが2つの4人共用の三等船室と、ゴージャスな一等船室の落差に驚かされるが、ちなみにその乗船料金は現在の貨幣価値に換算して、三等が米ドルで約900ドル、一等が5万ドルから10万ドルというから数字の上での落差も大きい。
 三等の乗客の多くはヨーロッパからアメリカに渡る移民、一等は富裕層で、このへんの事情は映画タイタニックの中でも再現されている。

 その次の展示は、海底から引き上げられた遺品の数々で、貴金属や身の回り品など富裕層の所持品が目立つが、洗面台や装飾品などタイタニック号そのものの物品も少なくない。
 そしてその次が、映画の中で何度も登場した一等船室の客が行き交うあの荘厳な階段がある広間。この場面においては、当時の富裕層の生活や、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの演技などを思い出すことはあっても、悲劇を連想させるようなことはなく、まだ緊張感はそれほど高くない。

 さらに進むと、いよいよ当時の気象情報や、真っ暗闇の中の星空など、だんだんと悲劇が迫ってきていることを感じさせる演出で、張り詰めた雰囲気に。そしてついに氷山との衝突、沈没

 科学専門のテレビ番組として知られるディスカバリーチャンネルが制作した事故を学術的に分析する映像。さらに本物の巨大な氷で氷山の冷たさを体感できる演出などもあり、そこでの説明によると、死者の多くは水に溺れたのではなく、北極圏に近い極寒の深夜の海という超低温による体温の低下で命を落としたようだ。

 そのあとは、これまでに海底から引き上げられた遺品の中で最も大きいる “Big Piece” と呼ばれる15トンの船体の一部(写真)がおごそかに展示されている。錆びて朽ち果てた表面などが海底に眠っていた歳月を感じさせるが、事故の場面を想像しながら悲劇を思い偲ぶには十分すぎるほどの迫力だ。

 そして最後は前述の名簿のルームで展示は終了となり、ギフトショップへと続く。ロゴ入りのTシャツやマグカップなどを買うことができるが、この種のショップとしては規模が小さく品数も少ない。

 途中をかなり省略したが、実際にはもっとたくさんの遺品が展示されており、学術的に貴重な解説なども数多くある。
 興味があればなおさらのこと、特に興味がなくても退屈するようなことはなく、史実の体験という意味ではかなり有意義な施設といってよいのではないか。

 会場の場所はルクソールホテルのカジノフロアの上の階。チケット売り場もそこにある。入館料は32ドル。開館時間は毎日午前10時から午後10時まで。

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