ラスベガスにレンタル倉庫が多い理由の再考察と現場レポート

アメリカの典型的なレンタル倉庫。車で乗り付けられるように屋外にあるのが一般的。

アメリカの典型的なレンタル倉庫。車で乗り付けられるように屋外にあるのが一般的。

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 ここのところ数週間に1回程度のペースで一般観光客には何の役にも立たないラスベガス情報を発信してきたが、今週も単なる「トリビア」的な無益な話題お届けしてみたい。

「ラスベガスでは self-storage がやたらと多く目立つ」というただそれだけの話。
 self-storage とはレンタル倉庫のこと。日本でいうところのトランクルーム
 施設全体の規模や個々のルームの広さこそ日米でかなり違いはあるものの(アメリカのほうが大きい)、用途としてはまったく同じと考えてよい。家具やその他の私物などを一時的に保管しておく場所だ。

レンタル倉庫「DOLLAR SELF STORAGE」の受付オフィス。右奥が倉庫。

レンタル倉庫「DOLLAR SELF STORAGE」の受付オフィス。右奥が倉庫。

 先日ラスベガスに住む知人がたまたまレンタル倉庫を利用することになったのをきっかけに、むかし聞いたそのトリビア的な話を改めて思い出して書いているわけだが、本当にラスベガスには多いように思える。
 もちろんレンタル倉庫は世界各地にごく普通に存在しておりベガス特有のものではないが、人口比で突出して多いようだ。

キャンピングカーなどの保管も受け付けている大型レンタル倉庫。

キャンピングカーなどの保管も受け付けている大型レンタル倉庫。

 「思える」「ようだ」と推測的な表現しかできなくて申しわけないが、20年ほど前だったか、たしかその人口比のデータを何かの記事で読んだ記憶がある。
 ただ残念なことに、そのだいたいの数字すらも失念してしまったので客観情報として紹介できないばかりか、20年も経過した現在でもその話が事実かどうかは定かではないが(いろいろ検索してもその話題が見当たらない)、当地で日々車を走らせながら街の様子を見ている限り、今でもレンタル倉庫がやたらと多く目に入ってくることだけは疑いのない事実だ。
 少なくともこれまでに車で走ったことがあるアメリカの他の都市において、ベガスほどたくさんのレンタル倉庫を見たことがない。ただ、ホテル街以外では高層建造物が少ないというこの街特有の都市構造が理由で、視覚的に目に入りやすい可能性までは否定できない。

やや小さめのユニットも多数用意しているレンタル倉庫。

やや小さめのユニットも多数用意しているレンタル倉庫。

 客観的なデータで示すことができないので「主観的な意見だろ」と言われても仕方がないが、それが事実だと仮定してそのまま話を進めるならば、次に来る疑問は「何ゆえベガスにレンタル倉庫が多いのか」になる。
 かつて読んだその記事の記憶をたどるとその理由は2つあり、一つはカジノの存在だ。

 当地では観光客のみならず地元民でもカジノ好きは少なくない。いや、少なくないどころかたくさんいる。
 当然のことながらカジノで散財し、アパートなどの家賃を払えず一時的に友人宅などに仮住まいする者が出てくることは想像に難くない。
 結果的に家具などの保管場所が必要になるため、レンタル倉庫の需要が発生するというわけだ。

無人型のレンタル倉庫の入口に記載されている注意書き。

無人型のレンタル倉庫の入口に記載されている注意書き。

 そしてもう一つの理由はアパートなどでの賃貸契約における家主と住人の権利や義務を定めた法律で、ラスベガスでは他の都市と比べると総じて「貸し手にはやさしく借り手には厳しい」ルールになっている。
 たとえば家賃の滞納が発生してから家主がその住人を強制的に追い出せるまでの猶予期間が短い、建て替えやリフォームなどの理由で住人に出て行ってもらう際の家主側からの事前通告義務の期間が短いなどだ。

このように車で乗り付けて荷物の出し入れをするのが一般的。

このように車で乗り付けて荷物の出し入れをするのが一般的。

 以上の2つの理由が重なっていることがレンタル倉庫の需要を押し上げていると思われるわけだが、やはり今ネットで調べてみてもその「アパートから追い出されやすい説」を裏付けるような記述は見当たらない。
 むしろ、ベガス地区における人口の急増(転入者は一時的に倉庫が必要)、持ち家よりもアパートの比率が高い(アパートは一軒家に比べて収納場所が少ない)、新規のカジノホテルの出現などで転勤が多い、といった理由が散見される。

今回内部も見学させてもらった「Extra Space Storage」。

今回内部も見学させてもらった「Extra Space Storage」。

 なおベガスにレンタル倉庫が全国平均よりも多いこと自体は事実だが、飛び抜けて多いわけではないようだ。やはり突出して多く感じるのは、高層建造物が少ないために視覚的に目立ちやすいだけなのかもしれない。
 そうなると 20年前に見た記事はデマだったのかとも思えてくるが、長らく信じ続けてきたカジノや法律に起因する「追い出されやすい説」を引き続きそのまま信じることとしたい。
 本件に興味がある読者はラスベガスを訪れる機会があったらぜひ注意深く街を観察しながら事実関係を探究してみて頂けたら幸いだ。

 最後に、せっかくなので今回その知人と一緒に複数のレンタル倉庫を訪れてみてわかった現場の様子などを簡単に紹介して今週の記事を終わりとしたい。
 まずサイズに関して。日本では小さなロッカー程度のサイズを中心に、広くても6畳くらいまでが一般的のようだが、ラスベガスでは(というかアメリカでは)それよりも遥かに大きいのが普通だ。
 一番小さな基本サイズでも「10×10」(10フィート四方)となっているところが多く、その広さは約6畳。大きいものになるとその数倍はあり、車を数台置けるようなサイズも珍しくない。
 倉庫の建物自体の構造も日米で異なっており、日本では個々のロッカーや倉庫の入口が室内の廊下に面しているのが一般的なのに対して、アメリカでは車で個々の倉庫の前まで乗り付けて荷物を運び込むことが多いためか、各倉庫の開閉部分は屋外に面している。
 また車で乗り付けるとなると各倉庫は1階にある必要があるため、建物全体は平屋構造がほとんど。もちろん中には2階建て、3階建てになっているレンタル倉庫もあり、その場合は車で乗り付けることはできないが、大型エレベーターが併設されているので荷物の出し入れに大きな不便はない。

担当者が2階のレンタルスペースを案内してくれたときの様子。

担当者が2階のレンタルスペースを案内してくれたときの様子。

 レンタル料金は6畳程度の「10×10」サイズで月に200ドル前後。最近のインフレによりやや値上げ傾向にあるらしい。
 なお当然のことではあるが、大きいサイズになったからといってサイズに正比例して料金も上がるわけではなく、面積当たりの料金はサイズが大きい方が割安になっている。
 砂漠性気候のラスベガスの夏は猛暑になるため保管している家具などが傷んだりしないように空調設備が完備しているユニットも少なくないが、料金差はそれほど大きくない。
 空調があるからといって倉庫内に住むようなことはもちろん禁止されているが、それでも受付に人がいない無人管理の倉庫などにおいては住んでしまう輩もいるらしい。
 転勤、転校、離婚、新築、増改築、転居などの理由で一時的にレンタルすることは何の問題もないが、家賃不払いで住む場所を無くしての利用などは何としてでも避けるようにしたいものだ。

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