MINExpo から占う今後のラスベガス開催のビッグコンベンション

日本の重機メーカー「コマツ」の展示ブース。

日本の重機メーカー「コマツ」の展示ブース。

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 3週間前のこのコーナーで、長らく仮承認だったファイザー社製のワクチン正式承認された話題を取り上げた。
 その承認をきっかけにアメリカのみならず世界中でワクチンパスポート、つまりワクチン接種済みであることの提示を条件に入場、入店、利用、参加などを許可する動きが強まってきている。
 もちろんそれらの動きに対しては賛否両論あり世界各地でワクチンパスポート反対運動なども起こっているようだが、今後どの方向に進むにせよ今まさにコロナ禍における新たな局面を迎えていることは間違いない。

コンベンションは地元経済に大きな影響

 そんな局面を迎えてから最初の大型コンベンションが今週ここラスベガスで開催されることになり、多方面から注目を集めている。ウィズコロナアフターコロナのコンベンションのあり方などを占う上でのテストケースとなるからだ。
 ちなみにラスベガスは世界屈指のコンベンション都市。その誘致そして開催の成否はカジノやエンターテインメント業界と同様、地元経済に大きな影響を及ぼす。

ラスベガスは MINExpo の最適地

 今週開催されているそのコンベンションの名称は MINExpo International。マイニング、つまり金、銀、銅、鉄、石炭など地下資源の採掘に関わる鉱業分野の世界最大級の祭典だ。
 当地はコンベンション都市なのでこの種の大型イベントが開催されること自体は何ら不思議ではないが、奇遇にもラスベガスが属するネバダ州(特に北部)は金や銀の世界屈指の産出地として知られており、MINExpo の開催地としてラスベガスはこの上なくふさわしい最適地といってよいのではないか。

ラスベガスコンベンションセンターで開催中の MINExpo。

ラスベガスコンベンションセンターで開催中の MINExpo。

コンベンション会場内でワクチン接種

 前置きが長くなってしまったが、今回注目されているのは採掘や鉱業という特定の分野の動向ではなく、ワクチンパスポートへの対応などコンベンションそのものの運営状況や、出展企業と来場者数の減少度合いだ。感染リスクに対する不安やワクチンパスポートに対する論争などを理由に来場者が大幅に減ってしまうのではないかと関係者の不安は尽きない。

マスク、ソーシャルディスタンス、手の消毒に関する掲示。

マスク、ソーシャルディスタンス、手の消毒に関する掲示。

 結論から先に書くならば、MINExpo の主催者は出展企業や来場者に対して入館の際に身分証明の提示は求めているものの、ワクチンパスポートの提示は求めないことになった。
 鉱業界の人たちは他の業界と比べてワクチン反対論者が相対的に多いのではないかと推測されたりしていることもさることながら、開催直前になってワクチンパスポートを参加条件にすると混乱を招くとの判断があったようだ。
 ただ、この写真のようにネバダ州のルールとしてのマスク着用義務を告知する掲示や、ソーシャルディスタンスの確保や手の消毒への啓蒙、さらにはワクチン接種のための臨時会場を設けるなどコロナ対策への取り組みには抜かりがない。
(ワクチン接種が可能なのは開催初日と2日目の午前中のみ。MINExpo 自体の開催期間は 9月13日からの3日間)

ワクチン接種会場。ここでは予約無しで無料で受けられる。

ワクチン接種会場。ここでは予約無しで無料で受けられる。

出展企業、来場者数は大幅に減少

 次に出展企業や来場者の数に関してだが、残念ながら大きく減少していることは否めない。現場の雰囲気から感じられる肌感覚では前回の3分の1程度といったところか。実際に各ブースで聞いたりして集めた情報も同様だ。
 公式発表ではないものの主催者の現場スタッフいわく、出展企業は1100社程度の予定が実際には約900社になってしまい、来場者数は2日目の時点の予測で最終的には 15,000~20,000人になるのではないかとのこと。
 ちなみに前回 2016年の出展企業数は約1900社、来場者数は約44000人だったので今回はどちらも半分以下に減っていることになる。(MINExpo は4年に1回の開催。東京オリンピックと同様、2020年は中止だったので今回は5年ぶり)

右下の人たちと比べると、いかに巨大な重機であるかがわかる。

人と比べると、いかに巨大な重機であるかがわかる。

世界第2位のコマツはブースも2位

 気になったのは出展企業や来場者の単なる数字だけではない。その内訳、つまりコロナの影響で海外出張などが難しい状況においてアメリカ国外からの参加がどの程度だったのかという部分も大いに注目すべき点だろう。会場内の各ブースを見て回ったところ、ほとんどの企業がアメリカ国内からの参加のように見受けられた。
 ちなみに我らがニッポンが誇る世界第2位の重機メーカー「コマツ」のブースに立ち寄ってみたところ、ほぼすべての現場スタッフはコマツの米国法人の人たちで、日本からの出張者らしき人物は見当たらなかった。今の時期の海外出張は困難を極めるため(帰国後の14日間の自宅待機など)、やむを得ないことではあるが、名称に International が付く国際的なイベントとしてはどこか寂しい。
 参考までにコマツのブースのサイズは全出展企業の中で2番目に大きい。なんとも誇らしいことではないか。1番は重機世界1位の米国キャタピラー社。

重機世界第1位のキャタピラー社のブース。

重機世界第1位のキャタピラー社のブース。

出展企業はさらに減ってしまうのか

 結果としては規模が例年の半分以下になってしまっていたこと、そして海外からの参加が極端に少ないことが判明したわけだが、この事実を今後のコンベンション関係者などはどのように受け止めるべきか。
 悲観的、楽観的、両方から分析できるように思えるが、まず悲観的な分析として、今回の MINExpo は4年に1回というめったに参加できないイベントのため、出展企業がコロナによるさまざまな不安を感じつつも「とりあえず参加しておこう」という力が働きやすい。だとすると毎年開催されている一般のコンベンションよりも出展企業は増える要因になるわけだが、そんな MINExpo でも例年の半分以下となると、他のコンベンションではもっと減ってしまう可能性がある。

会場内は閑散としている。

会場内は閑散としている。

出展企業が参加しやすい環境になるか

 楽観的な見方としては、今回の MINExpo では展示物が巨大な商品になりやすいため出展には輸送や設営などに準備期間が必要。つまり出展企業にとって参加するか否かの決断は遅くとも開催日の数ヶ月前には決めなければならず、そう考えると今回の出展企業はワクチンの効果が現れ各種のコロナ規制が緩和される前の感染拡大の最悪の時期に決断を迫られていた可能性がある。その時期は多くの企業が参加を断念せざるを得ないムードの中にあったと考えると、ワクチンの効果が現れつつある今後のコンベンションの開催時期においてはもっと参加しやすい環境になっている可能性があり、だとすると MINExpo よりはもっと盛り上がるかもしれない。

MINExpo の屋外会場の様子。

MINExpo の屋外会場の様子。

日系企業が関連するコンベンション

 楽観論、悲観論、どちらの推測が正しいかは意見が分かれるところだろうが、いずれにせよ、この秋から冬にかけて日系企業も大いに関わるコンベンションが目白押しだ。
 10月4日から開催予定のコナミ社やアルゼ社も出展するゲーミング業界の Global Gaming Expo (通称 G2E)、キヤノン、ソニー、パナソニックなどが主役となる 10月9日から開催の放送業界の祭典 NAB*)、11月初旬の自動車業界のビッグイベント SEMA & AAIW、そして年明け1月初旬には世界最大規模のハイテク業界の祭典 CES が控えている。
 国境を超えての移動が簡単にならない限り、これらすべてのコンベンションにおいて例年よりも規模が大きくなることは考えにくいが、どの程度の減少で済むのか、そしてワクチンパスポートの扱いがどうなるのかなど、業界関係者はもとより地元ラスベガスの経済界にとっても関心は尽きない。

* NAB に関しまして、上記のように記載して発行したのち、読者から「今年のNAB は中止になった」とのご指摘を受けました。たしかに中止が確認されましたので謹んで訂正とお詫びをさせて頂きます。日本時間 9月16日 15時56分)

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