ファイザーの正式承認で接種証明カードの提示ルールが定着か

新型コロナワクチンを接種した証明カード。(サイズはハガキ程度)

新型コロナワクチンを接種した証明カード。(サイズはハガキ程度)

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 2021年8月23日、アメリカのFDA(食品医薬品局。日本の厚生労働省のような組織)は、膨大なデータを精査した結果、感染予防に効果があることが確認できたとして、ファイザー社製のワクチンの使用(ただし16歳以上が対象)を正式に承認した。
 新型コロナ用のワクチンの正式承認は今回のファイザー社製が初めてで、モデルナ社など他社製のワクチンはまだ審査中とのこと。

「すでに世界中で使用されているのに何を今さら?」と思われるかも知れないが、今までは緊急時における特例というカタチでのいわば仮承認だった。
 すでに使用されている医薬品に対する事後の正式承認にどれほどのニュース性があるのかというと、これが大いにある。というのも、今回の承認はある程度予測されていたことではあるが、実際に正式に決まるとなると現場での対応に大きな影響をおよぼすからだ。
 現場とは、職場、学校、公共機関などは言うに及ばず、ここラスベガスならば、コンサート、ナイトショー、スポーツイベント、ナイトクラブ、コンベンションなども該当してくる。

 現場の対応とは、ワクチン接種時に医療機関から発行された接種済みを証明するカード(冒頭部分の写真)の提示だ。
 すでに多くの企業が従業員などに提示を求めることを発表しており、たとえば有名どころではユナイテッド航空、グーグル、マイクロソフト、フェイスブック、そしてラスベガスならMGM社などが在宅勤務者を除き出社して来る者に対してワクチン接種を勤務の条件にするとのこと。
 その社内ルールの開始時期や細かいルールは各企業ごとに多少の違いはあるものの(たとえばマスク着用を条件に接種を免除など)、全体の流れとしてはワクチン接種が今後ますます求められるようになることはほぼ間違いないだろう。

 「ウチの職場はとっくにワクチン接種が出勤の条件になっている」といった声も聞こえてきそうだが、今回の正式承認によって大きく変わってくるのは強制力だ。
 今まではワクチン接種を採用、出勤、登校などの条件にしたくても、しづらい部分があった。各個人の信条などにより「ワクチン接種はしたくない」という者が一定数いたためだ。
 しかし今回の正式承認によって強制しやすい環境になったことはたしかで、実際にバイデン大統領は23日に「待望の瞬間が到来した。さっそく今日にでもワクチンを受けてほしい」と全国民に向けてコメントしている。
 接種の強制や義務化に対して「法的に問題あり」とする反対論者も少なくないが、はしか、おたふく風邪、天然痘などの予防接種の義務化が認められてきたことを考えると、FDAが正式に承認した以上、コロナワクチンだけを例外的に扱わなければならない理由はないとする意見が支配的だ。

 今後さらに進むであろうワクチン接種を推奨するトレンドは、もちろん観光客にとっても無縁ではない。
 ラスベガスにおける観光客の活動範囲でいうならば、たとえば地元ラスベガスを本拠地とするアメリカンフットボールのプロチーム「レイダーズ」のホームゲームの試合観戦、日本企業の出展も多い大型コンベンションのNABCES、そしてハウスオブブルースやスミスセンターなどのコンサート施設、さらにはリゾーツワールド内のシアターなどがワクチン接種を入場の条件とすることを表明している。

 ではこのまま接種証明カードの提示が求められる場面が増えていくのかというと、必ずしもそうなるとは限らない。というのも解決しなければならない問題も少なくないからだ。
 たとえば米国在住者の場合、ワクチンをアメリカ国内で接種すれば原則として自動的に接種証明カードが発行されるが、そのカードを持たない海外からの観光客をどのように扱うべきか検討する必要がある。
 また国の内外に関係なくアレルギーなどの事情で接種できない者の扱いもむずかしい。
 さらにひどい話ではあるが、偽造の接種証明カードが多数出回っているというから何らかの対応が求められる。カードそのものはサイズも厚さもハガキ程度のごく普通の紙で、複雑な模様が印刷されているわけでも、特殊なインクが使われているわけでもないので、性悪説的に考えれば偽造が出回ってしまうのは当然の成り行きだ。

 そのような問題を解決するために国境を超えて接種証明カードをスマートフォンのアプリ上で管理できるようにするいわゆる「ワクチンパスポート」のような構想をマイクロソフトやオラクルなどが半年ほど前に共同発表したり、最近でもアップルやグーグルが同様な企画を進めたりしているようだが、国によってそれぞれ事情が複雑で、また同じ国の中でも医療界、産業界、行政などの間での意見統一がむずかしく、ヨーロッパの一部の国で進ちょくは見られるものの、世界共通のワクチンパスポートの普及にはまだ至っていない。

 さらにもっと根本的な問題として、日本を含め世界各地の大学や研究機関からワクチンに代わる代替案が出てくるなど、ワクチン接種が本当に正しいのかどうかといった議論も一部に根強く存在しており、ワクチンパスポートの普及は一筋縄では行かない可能性もある。
 それら代替案は玉石混交といった感じで信頼性に乏しいものも少なくないようだが、ノーベル賞を受賞した大村博士が発見に貢献したイベルメクチンは東京都の医師会をはじめ世界各国の医療関係者がその効能を高く評価しているなど(FDAは反論)、ワクチン接種一辺倒の現在のコロナ対応に一石を投じる意見が存在感を増してこないとも限らない。

 いずれにせよ、今後ワクチン接種の評価がどのように変化するかは予測しにくい部分はあるものの、とりあえず今回のファイザー社のワクチンの正式承認により接種証明の提示が多くの場面で求められるようになる可能性は高いので、ラスべガス旅行を計画している者は訪問予定の施設などがどのような方法で接種証明を求めることになるのか注視しておいて損はないだろう。

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