ベガスに進出したヴァージンホテルは多くの部分が異色の存在

開業したばかりのヴァージンホテル(2021年4月5日撮影)

開業したばかりのヴァージンホテル(2021年4月5日撮影)

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 高いワクチン接種率の効果なのか、コロナ不況から脱しつつあるラスベガス。まだ完全にコロナ前の景気に戻ったわけではないのでタイミング的には早すぎる感も否めないが、先週この街に新たなカジノホテルがオープンした。ヴァージンホテル だ。
 ゼロから新たに建設されたホテルではなく、かつてのハードロックホテルを改装しての開業のため話題的にはやや新鮮味に欠けるが、新たにオーナーとなった企業が異色なこともあり注目度は高い。

フロントロビー周辺

フロントロビー周辺

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多彩で多才な世界的起業家ブランソン氏

 そのオーナー企業とはもちろんヴァージン・グループ社。いわずと知れたあのリチャード・ブランソン氏が率いるイギリスの会社だ。
 ブランソン氏はテスラ社のイーロン・マスク氏と並び称される世界的な起業家で、実際にロケットやハイパーループ(チューブ内を走行する超高速交通機関)などマスク氏との共通点も多い。
 積極的な投資やそのスピード感はすさまじく、日本でもおなじみのヴァージン・レコードを皮切りに、航空、携帯電話、映画、飲料、鉄道、金融、不動産などさまざまな業界に参入。さらにはカーレースの F1、そして自身が冒険家でもあることから気球旅行宇宙旅行にまで事業範囲を広げるなど多彩かつ多才な起業家として知られる。

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小規模だが話題にこと欠かないホテル

 そんなブランソン氏は10年ほど前からホテル業界にも参入。そしてこのたびついにラスベガスにも進出したというから勢いは留まるところを知らない。
 3000部屋が当たり前のラスベガスとしては比較的小さい 1500部屋規模のホテルのため、サイズ的には MGM社やシーザーズ社など地元の同業他社の脅威になるようなことはなさそうだが、ヴァージン社やブランソン氏自身が異色というだけでなく、今回オープンしたホテルの運営形態もラスベガスとしては珍しいのでいろいろな意味で話題にこと欠かない。

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カジノ運営は先住民「モヒガン族」が担当

 まずヴァージン社はカジノ運営に関してノウハウをあまり持っていない。そのためカジノ部門に関しては全面的に他社に委託している。
 委託による運営自体はこれまでのラスベガスでもしばしば見られたビジネス形態であり今でも決して珍しいことではないが、委託した先の会社が興味深い。その会社の名前は Mohegan Gaming & Entertainment
 Mohegan とは、アメリカ先住民「モヒガン族」、つまり白人がアメリカ大陸を発見して乗り込んで来る前からこの大陸に住んでいたいわゆるインディアン(差別用語になったりすることもあるらしいが差別のつもりはまったく無し)の部族の名称だ。

カジノ内の様子。左奥は高級和食店 NOBU。

カジノ内の様子。左奥は高級和食店 NOBU。

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特別な自治権でカジノ運営が可能

 アメリカ合衆国政府は過去の差別や虐待などに対する反省や謝罪の意味も含めて、全米各地に点在する先住民族に対して治外法権的な自治権を与えており、カジノが解禁されていない州においても先住民族にだけはカジノ運営を認めてきた。
 そのような政治的背景があったこともあり、同社は今から20数年前にアメリカの企業から提案やサポートを受けながらモヒガン族が経営主体のカジノ企業として誕生。

長崎にも進出でもベガスは初めて

 モヒガン族の領土そのものは東海岸地区のコネチカット州内だけだが、同社はコネチカット州以外でのカジノ運営の権利も有しており、全米各地に事業を拡大。さらには韓国、そして最近では日本の長崎のIR(Integrated Resort: ホテル、コンベンション施設、ショッピングモール、カジノなどを含む統合型リゾート)にも進出意欲を見せるなどグローバル企業に成長している。
 ただネバダ州ラスベガスへの進出は今回が初めて。コロナによる景気の先行不透明も相まって、ベガスでの事業展開には不安がつきまとう。
 カジノ運営というビジネスは州によって微妙に法律が異なっていたりすることから、その州における運営ノウハウを持たない企業にとっては決して簡単ではないはずで、そういう意味では MGM社やシーザーズ社から見れば今回の Mohegan Sun(Mohegan Gaming & Entertainment 社が運営するカジノの名称)のベガス進出はお手並み拝見といったところか。

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スポーツブックも別の企業が担当

 スポーツの試合結果に賭けるいわゆるスポーツブックの部門に対してもベガスの同業他社から視線が集まりそうだ。こちらは以下に説明する理由でお手並み拝見といったのんきなスタンスではいられないかもしれない。
 ちなみにスポーツへの賭けに関しては、ラスベガスがあるネバダ州以外では、カジノが認められている州であっても長らく禁止されてきたこともあり(近年解禁されたが)、ラスベガスに拠点を持たないカジノ運営会社はもちろんのこと、在ベガスのカジノホテルでさえもスポーツブックの部門だけは別の専門会社に委託することが多い。ベネチアンホテルコスモポリタンホテルがスポーツブック大手の William Hills 社に委託しているのはその典型だ。
 今回のヴァージンホテルにおいては Mohegan Sun が英国のスポーブック専門企業 BEDFRED 社に委託しているが、同社は米国ではコロラド、ペンシルベニア、アイオワなどの州での実績はあるもののネバダ州では新参者。

BETFRED 社が運営するヴァージンホテル内のスポーツブック

BETFRED 社が運営するヴァージンホテル内のスポーツブック

 新参者と表現すると何やらぎこちない未熟な響きもあったりするが、スポーツブックの業界においてはその新参者がいくら小規模であろうが未熟であろうが、既存の同業他社としてはやっかいな存在になりやすい。
 というのも、同じスポーツの試合に対するオッズ(払い戻し倍率)を高く設定されたら顧客を一気に奪われかねないからだ。一方、利用者(ギャンブラー)にとっては同業社同士の高いオッズの設定競争はありがたいことで、今回の新規参入は大歓迎といったところだろう。

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ヒルトンホテルのキュリオと提携

 さて、カジノやスポーツブックのような完全な他社への委託というわけではないが、このヴァージンホテルでは客室部門も他社とのコラボレーションになっているところがこれまた興味深い。
 提携先はヒルトンの高級ブランド「キュリオ・コレクション」(Curio Collection)。日本ではまだ旧軽井沢にしか無いようだが、アメリカではそこそこ知られているホテルブランドだ。
 Hilton Honors のメンバーは割引や各種サービスなどの特典を受けられる可能性があるので予約やチェックインの際は確認するようにしたい。

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リゾートフィー無し、駐車場も無料

 各種サービスといえば、このヴァージンホテルはリゾートフィーを徴収していない。現在ラスベガスのほとんどのホテルが徴収していることを考えると、この部分においても極めて異色の存在といってよいのではないか。
 ついでに言うならば、駐車場も料金を徴収していない。つまり宿泊者かどうかに関わらず自由に無料で駐車できるようになっている。
 かつてのラスベガスでは無料が当たり前だったが、数年前から有料化するホテルが多くなり、今はコロナで一時的に無料にしているホテルも少なくないものの、基本的には有料が一般的。コロナ禍の現在、日本からの海外旅行者はまだ少ないと思われるが、自家用車などでやって来る米国在住の読者にとっては朗報のはずだ。
 何やらこのヴァージンはユーザーフレンドリーなことが多いホテルのようにも見受けられるが、長くなってしまったので、これ以上の館内のことなどに関しては来週ということにして、今週はこのへんで終わりとしたい。

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コメント(4件)

  1. kent66 より:

    毎週楽しみに拝見しています。
    ハードロックホテルも無くなってしまいましたか。伝統あるいくつかのホテルが名前が変わっていって、寂しいものです。
    でも、リゾートフィーが無いホテルはいいですね。以前からサービスを利用していないのにフィーを取られるのか不満に思っていました。今後、リゾートフィーを取らないホテルが増えてくれるといいのですが!!

  2. NY より:

    ルーレットがダブルゼロ、トリプルゼロを採用しているかが気になりますね。
    Virginはイギリスの会社だからイギリス同様にダブルゼロがないといいのですが、運営はモヒガン族となるとやはりあるのかな。

  3. NY より:

    追加でコメントします。
    もし撮ってあるようでしたら、フィットネスセンター内の写真も載せてください。記事はなくても良いので。

  4. みーちょっぷ より:

    あの巨大ギターが見られないのはちょっと寂しいですが、色々な視点から興味がありますね。ハードロックホテルのころは、ロックファンのためのミュージアム的な要素が多分にあって、あまりカジノで遊ぶ雰囲気がなかったのですが、カジノフロアがどうなるか今後期待しますし、立地的にストリップ中心から遠いのでリゾートフィーや駐車場に関しては客寄せのアドバンテージになるのかな・・・。次週の記事を楽しみにしています。

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