新型コロナの感染拡大を理由に 3月18日から閉鎖されていた各カジノホテルが 6月初旬に営業を再開してから早くも一ヶ月。
静まり返っていた街にも少しずつではあるが訪問者が増え始め、先週の独立記念日の連休にはそこそこの賑わいを見せた。
まだコロナ前の活気には遠く及ばないものの、確実に復活の方向に向かっていることは間違いなく、そのこと自体は非常に喜ばしい。
ここの読者の中にも、盆休みの時期は無理でも秋の連休などにラスベガス旅行を検討しているベガス・フリークもいるようで、その時期のナイトショーやナイトクラブの再開などに関する問い合わせが寄せられたりもしている。
そんな今の時期に悲観的な話はいささか不謹慎というかはばかられるが、いやな予感がしないでもない。コロナの第二波だ。
実際に「このままではカジノホテルの再度の閉鎖もあり得るのでは」との噂も出始めており、真剣に心配している者も少なくない。
もちろん当事者のホテル業界や政治家などはおもてだってそのような話をしにくい可能性もあるが、水面下でざわつき始めていることは間違いないところで、データを見る限り、まんざら楽観視もできない状況になってきている。
その最大の理由は、カリフォルニア州とアリゾナ州における新規感染者の急増だ。ちなみに、ここラスベガスがあるネバダ州も増加傾向にある。
「急増している理由は検査の件数が増えているためで、状況が大きく悪化しているわけではない」といった見方もあるようだが、どのような事情があるにせよ、数字が増えていること自体、不気味であることに変わりはない。
その数字、驚くことなかれ、小池東京都知事が知ったら気絶してしまうほどのケタ違いで(もちろん小池知事も知っているだろうが)、日々の新規感染者数は両州ともに毎日数千人というから、100人程度で大きな騒動になっている東京とはもはや異次元のレベルだ。
では、なにゆえカリフォルニア州とアリゾナ州の急増がまずいのか。それは、まだ航空便の運行本数がコロナ前と比べると非常に少なく、またフライトに空席があっても感染を恐れる人が多いためか、現在ラスベガスにやって来る訪問者の半数以上が陸路でのアクセスといわれており(コロナ前も4割程度は陸路だった)、その大半がネバダ州に隣接する両州からの訪問者だからだ。
具体的な都市名としてはカリフォルニア州のロサンゼルス(サンディエゴ地区も含む)とアリゾナ州のフェニックスからの訪問者ということになる。
これらの都市からは砂漠の中の高速道路を4~5時間も走ればラスベガスに来ることができ、空路に期待できない現在のラスベガスにとっては最重要顧客だ。
(サンフランシスコも近そうに思えるが、途中に 4000メートル級の山脈があり 10時間近くかかってしまうため、空路でのアクセスが一般的)
そんな顧客の地元が感染者急増エリアとなると、このままカジノホテルの営業を認めていてもいいのか、という議論が出てきてしまうのも無理はなく、再度の閉鎖も現実味を帯びてくる。
ちなみにここから遠く離れたニューヨーク州は、感染者数も死者数も2ヶ月ほど前まで全米で最悪のレベルだったが、今ではすっかり落ち着いてきたこともあり、なんとカリフォルニア州、アリゾナ州など感染者急増州からの入国制限ならぬ入州制限(2週間の自主隔離)を始めたというから、もはや2ヶ月前とは完全に立場が逆転した格好だ。
そのニューヨーク州に習えば、ネバダ州も同様にカリフォルニア州やアリゾナ州からの訪問を制限できないこともないが、それは無理というもの。それをやってしまうと、せっかく再開業したカジノホテルの経営が成り立たなくなってしまうため、このまま受け入れ続けるしかない。
だからといって、ロサンゼルスやフェニックスなどからの万単位の訪問者の中に、感染者(特に無症状感染者)がまったく含まれていないことなどあり得ず、どんなにマスクや手洗いを徹底させたところで、その感染者がラスベガスでだれにも感染させないと考えるのは現実的ではないだろう。そう考えるとラスベガスのカジノホテルが集団感染源、いわゆるクラスターとなってしまうリスクは常にあるということになる。
地元旅行業界などから「不安をあおってどうするんだ!」といった声も聞かれてきそうだが、もちろんそんなつもりは毛頭なく、あくまでもベガス訪問を計画している人たちに、近隣の州の現状やラスベガスが置かれている状況を知っておいていただきたいまでで、クラスター発生など無いことを願うばかりだ。
ただ、無いことを願っていても発生を防げるわけではないので、そのような不幸な事態がどの程度の確率で起こり得るのか知っておきたいところだが、残念ながら専門家でもそれの予想はむずかしい。だからといって、ここであれこれ根拠のない勝手な推測をしていても何の意味もない。
というわけで、各州のデータを示すだけにとどめ、あとは各自で判断していただくこととし、そんな事態にならないことを祈りながら、今週の記事を終わりとしたい。
(以下の各グラフは、世界最高レベルの医学部を持つとされるジョンズ・ホプキンズ大学や、各州の保健当局が発表する 7月7日までのデータをニューヨークタイムズが集計したもの)
ピンクの棒グラフは日々の新規感染者数。赤い折れ線グラフはその時点における直近7日間の平均値。日々の数値は曜日や集計のタイミングなどで大きく上下する可能性があるので、折れ線グラフのほうに注目したほうがよいだろう。
TOTAL CASES の 23,791 は通算の感染者数、DEATHS の 548 は通算の死者数。
3月に初めての感染者を記録して以来、新規感染者数は6月の初旬まで毎日 200人以下で推移していたものが、それ以降は上昇傾向になり、7月に入ってからは 700~800人程度で推移している。ちなみにカジノホテルの営業が解禁されたのは 6月4日。なおネバダ州の人口は約310万人。
カリフォルニア州の人口は約3900万人。日々の新規感染者数は直近1ヶ月で急増しており、7月に入ってからは 7000人前後とすさまじい数になっている。
ただ、人口がネバダ州の13倍ほどであることを考えると、人口比としては驚くほどの数字ではない。それでもラスベガスへの訪問者数の絶対値が大きいので、ラスベガスに対する感染ルートという意味では、最も要注意の州であることに変わりはない。
6月以降の急増ぶりは驚異的。ちなみにアリゾナ州では5月後半に各種のビジネスの営業を解禁しており、その影響の可能性が高いとされているが、詳しい関連性などはわかっていない。
現在の日々の感染者数は 4000人ほどで、カリフォルニア州よりも少ないが、アリゾナ州の人口は約730万人。カリフォルニア州の約5分の1であることを考えると、もはやアリゾナ州は異常事態といってよいだろう。
また死者数でも人口比で極めて高い。同州は冬期の気候が温暖なことから、米国東北部などからの引退者の移住が多く、相対的に高齢者の比率が高いことが死者数に影響しているとする分析もある。
最後は参考までにニューヨーク州のデータを掲載してみた。同州のピーク時の悲惨な状況が世界中で報道されたことは記憶に新しい。当時の日々の新規感染者数が 10,000人前後になっていたことを考えると、大きなニュースになるのも無理はないが、同州の人口は約 1900万人。人口が約3分の1のアリゾナ州における直近の新規感染者 4000人は、人口比ではピーク時のニューヨークよりも深刻な状況であることがわかる。
ちなみにテキサス州(人口 2900万人)やフロリダ州(同 2200万人) も7月以降、5000人以上で推移しており、深刻な状況になっている。
ネバダ州に限らずどこの州も、そしてどこの国も、一刻も早くコロナが収束し、平穏な暮らしが戻ることを願ってやまない。
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コメント(2件)
本当にラスベガスをこよなく愛する私にとっても大打撃であり、早く終息してほしいのは山々だが、マスク着用や三密をまずは徹底してほしいし、ある人達はマスク必要ない❗とデモをする人もいて、まだまだ余談を許さない状況下でありとても悲しい😭秋に予定していたものの二週間の隔離も不明だし、アメリカ国内線も不安だらけ。来年に持ち越しも5月までにはアリアとNYNYに泊まりたい。毎日1000人規模の感染者。いやコロナの終息を一日も早く願っております。観光業で生計を立てている方もラスベガスから離れる方も多く聞きます。ラスベガスの灯りを消したくはない‼️
MGMやシーザース?系とネバダ州の赤字を黒にしないと大変なことになってしまう
世界一の観覧車も回ってるのかな~?
大赤字だろうな~回さないと錆び付いてしまう
ミスターベガスさんも我慢の時期でしょうが私達観光客も我慢の限界です。
アメリカ全体で終息をさせてほしいものです
ユナイテッドの解雇やシルク・ドゥ・ソレイユの解雇、破産もう勘弁。
千葉TA 様
激励の投稿、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、MGM やシーザーズが黒字化しないとベガス全体が大変なことになってしまいますので1日も早くコロナが終ることを祈っているところです。
(ちなみに観覧車は動いております)