郵政公社がニセモノの自由の女神にだまされた?!

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 今週は、一般の観光客にとっては何の役にも立たない情報ではあるものの、ラスベガスが震源地のちょっと笑える話なので、あえて紹介してみたい。話題の主人公は自由の女神(英語では Statue of Liberty)。

ニューヨークニューヨークホテルの自由の女神  一般的に、自由の女神に対しては、著作権のようなものが問われないためか、切手などの印刷物のみならず、そのレプリカ的な像も世界中に無数に存在しており、もちろん日本にもたくさんあると聞く。

 お台場や青森県のものが有名のようだが、ネットで調べると、日本には大小さまざまな自由の女神像が100近くも存在しており、とりわけラブホテルやパチンコ店に多いらしい。

 そんなことはともかく、本家本元はもちろんフランスであり、そして一番有名なのはいうまでもなくニューヨークにあるものだが、今回の主人公は、ラスベガスのニューヨークニューヨークホテルの前の交差点に建つ自由の女神だ。(下の写真。タップ or クリックで拡大表示)

ニューヨークニューヨークホテルの自由の女神  この写真のようにラスベガスのものは、ときどきイベントなどに合わせて衣装を着せられることがあるが、今回はそんなことはどうでもいい。重要なポイントは衣装ではなくだ。
(ちなみにこの写真の自由の女神が着ている黒い衣装は、ラスベガスを本拠地とする女子プロバスケットボールチーム Las Vegas Aces のユニフォーム)

ニューヨークニューヨークホテルの自由の女神  さて本題に入ると、こともあろうに公的機関であるアメリカのU.S. Postal Service(米国郵政公社、以下 USPS)が、この顔に関して、とんでもない失態をやってしまったとのことで、先週から全米で大きな話題となっている。

 先ほど、著作権がないなどと書いてしまったが、実はこのラスベガスの自由の女神に関しては、著作権問題がしっかり絡んでいるらしい。

 というのも、「ニューヨークの自由の女神の2分の1のサイズのレプリカ像」という前提で建てられたはずだが、ニューヨークニューヨークホテル側から依頼されてこの像の制作に関わった在ベガスの工事職人 Robert Davidson 氏は、何を思ったのか、「本物よりも少しだけ女性っぽい顔にしたかった」とのことで、自分の義理母の顔をイメージして造ってしまったというのだ。
 (実際に、本物とは微妙に表情が異なっている。本物の顔の写真に関しては、各自ネットで探して見比べていただきたい)

ニューヨークニューヨークホテルの自由の女神  そして USPS は、デザインの参考とすべき写真の入手経路において手違いがあったらしく、なんとこのラスベガスの自由の女神を元に切手をデザインし、そのミスに気づかないまま発行してしまったというから開いた口が塞がらない。

 運が悪いことに、その切手は一時的に発行する記念切手ではなく、一般の郵便物に貼る Forever タイプの普通切手なので、その存在感や露出度は半端ではない。
(Forever タイプの普通切手とは、First-Class 郵便物と呼ばれる一般の封書郵便物に貼られる切手の一種で、一度購入してしまえば、仮にそのあと郵便料金が値上げされてもそのまま使えることから、切手の表面には額面の金額の代わりに Forever と記載されている。このページの一番上の画像がその切手)

 すぐに発行を停止できればよかったものの、ミスに気づくまでの3ヶ月間に、49億枚も市中に流してしまった。まさに覆水盆に返らずで、回収不能な状態に。

 じつはこの USPS の失態そのものは約7年前の 2010年末の出来事で、ミス発覚後、時間を置かずに公表されたこともあり、今になって新たに発覚したニュースというわけではない。

 今回話題がぶり返している理由は、著作権の侵害に関する裁判結果だ。

 全米のメディアが報じているところによると、Davidson 氏の弁護士が起こした裁判において、連邦裁判所は著作権を認め、USPS に対して 360万ドルを作者に払うように命じた。日本円にしたら約4億円だ。

 その金額の根拠は、発行枚数49億枚、売上金額 21億ドルに対する利益を 7100万ドルと算定して決めたらしいが、そもそもその自由の女神自体、Davidson 氏自身のオリジナルではなくコピー作品であり、その顔だけを少しいじっただけの作品に対して著作権を認めるのはおかしい、との世論が多く、大きな話題となっている。

「お役所仕事」とは、非効率な業務や無駄が多い合理性のないシステムなどにたとえられる表現で、悪い意味で使われるのが普通だが、こういう案件に対するお役所仕事は素早くきちんと対応する傾向にあるため、すんなり支払ってしまうのではないかと世論は心配している。
 ただ、一部のメディアは、USPS は控訴するのではないかとも報じているので、今後どうなるかはわからない。

 今回のこの件は、結果的には USPS がニセモノの自由の女神にだまされてしまったということになり、実にお粗末なミスを起因とするコントのような笑える騒動ではあるが、実際に360万ドルを払うとなると、市民のお金が使われるという意味ではまったく笑えない話で、もっとしっかり仕事をしてくれ、と言いたくもなってしまう。今後の USPS の対応に注目したい。
(現在の USPS は、切手の販売収入など独立採算制で運営されており、国家予算的には市民の血税は使われていないとされているが、準公務員的なスタッフを抱える組織であり、間接的には、公的に決められた郵便料金を通じて市民が運営費用を負担しているといえなくもない)

 最後にこれは余談になるが、地元メディアによると、Davidson 氏は、長年モルタルやスタッコ関連の業界に身をおく工事職人で、ピラミッドで有名なルクソールホテルにあるスフィンクスも彼が手がけたとのこと。

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