【プリム地区】ラスベガスの中心街から南に1時間弱の場所にある砂漠の中のオアシス。

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 ラスベガス市内を南北に走る高速15号線を南へ(ロスアンゼルス方面へ)約40分ほど走った地点に、ネバダ州とカリフォルニア州の州境があり、その周辺地域のことを Primm 地区と呼んでいる。
 1996年までは「州境」ということで「ステートライン地区」と呼ばれていたが、この地区の開拓者である Ernest Primm 氏の名前にちなみ、97年から「Primm 地区」と呼ばれるようになった。

 この地域は広大なドライレイク(乾燥して湖底が露出した真っ平らな砂漠 )として知られる IVANPAH DRY LAKE(上の写真の地平線付近にかすかに白く見える部分)の北端に位置しており、基本的には完全な砂漠地帯で、1980年代、Primm 家がこの地に入植し開拓を始めるまでは、まったく何も存在しない月世界のような場所だった。

 Primm 家はそこに3つのカジノホテル(バッファロービルズ、ウイスキーピーツ、プリマドンナ)を建て、今日の姿が形成されるようになったが、その後ほとんど開発が進んでいないため、後述する太陽光発電施設とゴルフコースが出現したこと以外、今でも「砂漠の中にポツリとカジノホテルが3軒あるだけ」という状況に大きな変化はない。

 それでもバッファロービルズホテルに世界屈指の高速ジェットコースター DESPERADO(写真)が、そしてプリムバレーリゾート(プリマドンナから名称変更)にアウトレット型ショッピングモール FASHION OUTLET(ラスベガスの中心街にある「ファッションショーモール」とはまったく別物なので混同しないよう要注意)が完成してからは、ちょっとしたにぎわいを見せるようになり、2000年前後の一時期、日本人観光客がこの地へ足を運ぶことも珍しくないような時代もあった。

 とは言っても、この Primm 地区の役割は、基本的にはロサンゼルス地区から陸路でやって来るギャンブラー(特に、ナイトショーや高級レストランなどにまったく興味がないリピーター型のギャンブラー)たちのためのもので、日本人観光客はもちろんのこと、一般の全米各地からのラスベガス観光客がこの地に宿泊するということは、今も昔もほとんどない。
 したがって、大多数のラスベガス観光客にとっては無縁の存在ではあるが、ロスアンゼルス地区のギャンブラーたちにとっては、ラスベガスよりも 40分ほど近い位置にあるため都合がよく、そこそこ人気があるというわけだ。
(余談になるが、2018年以降 FASHION OUTLET は閉鎖の危機に直面している。理由は、ラスベガス市内にあるプレミアムアウトレットが拡大し、客を奪われているためとされている)

 結果的に、アウトレットが寂れてきてしまったため、日本人観光客にとってこの地区はますます無縁の状態になりつつあるが、太陽光発電施設を視察するための訪問者は一定数いるようだ。
 この発電施設は、世界に数ある太陽光発電施設においても非常に特徴的なため、業界関係者の視察訪問者があとを絶たない。というのも、ここでは反射型のミラー発電、つまり一般的な太陽光発電では、太陽光を受けたパネルをそのものが発電機能を有しているが、ここでのパネルはただの鏡。ようするに、その膨大な数の鏡で反射させた太陽光を一ヶ所に集めて(下の写真の白く輝いている部分)高温を発生させ発電している。

 発電施設そのものは高い塔になっており、その塔の先端部分に光を集中させているわけだが、その部分は当然のことながら非常に明るく(晴れた日は想像を絶するレベルの明るさになる)遠くからでも非常によく目立ち、またミラーが敷き詰められて光っている地上部分は、上空から見ると湖のようにも見えるため、野鳥が集まってきやすい。
 そこで何が起こるか? それは、野鳥が塔の近くに飛んでくると、そこは強烈な太陽光で超高温になっているため瞬時に焼き鳥になってしまう。それに対して動物愛護団体などは黙っているわけがなく、猛烈な批難をしている。そういった特殊な環境にあるため、この発電所には世界中から業界人の視察者があとを絶たない。
(下の写真内の左端にかすかに見える白い点が、超高温になっている発電施設の塔の先端部分。その周囲に広がっている湖のように見える部分が膨大な数のミラー群)

 話が前後してしまうが、Primm 家は、前述の3つのホテルを所有する Primadonna Resort 社のオーナーであったが、1998年にそれらホテルをすべて MGM Grand 社(のちに MGM Mirage 社、さらにそのあと MGM Resorts International に社名変更)に売却し、現場の経済活動から完全に手を引いてしまった。
 したがって現在は、名前こそ地名として残っているものの、この地における実質的な彼らのプレゼンスはほとんどない。

 余談になるが、2007年3月、MGM Mirage 社は、これらすべてのホテルを Herbst Gaming 社に売却してしまった。Herbst Gaming 社は、ラスベガス一帯およびアリゾナ州やカリフォルニア州でガソリンスタンドやコンビニエンスストアを運営する Terrible Herbst 社のカジノ事業部門で、ラスベガス市内にカジノホテル Terrible’s Hotel & Casino を持つ他、郊外に数軒の小規模カジノを保有する中堅企業だったが、その後 Terrible Herbst 社もリーマン・ショックなどで経営難に陥り、所有していたカジノの多くを手放すことに。そのようなこともあり、近年 Primm 地区にある3つのカジノの所有権はたびたび変わるなど混沌としている。

 というわけで、所有権うんぬんはともかく全体として寂れているので、結論としては、日本からの一般観光客がこの Primm 地区に行く必要性も理由もほとんどなく、行くとしたら IVANPAH DRY LAKE の直線10マイル(16km)の豪快な道路でのドライブ体験、もしくはこの地区にあるゴルフコース Primm Valley Golf Club でのプレーぐらいだろう。FASHION OUTLET は前述の通り、ラスベガス市内にあるアウトレットと比べて寂れてしまっているため、行く価値をあまり見い出せない。

 なお、Primm 地区から約20km ほどラスベガス寄りの場所に Jean と呼ばれる地区がある。砂漠の中に小さなカジノがポツリとあるという意味では、Primm 地区とかなり似ているので、訪問の際は混同しないよう注意が必要だ。
 ちなみにその Jean には、ネバダランディングとゴールドストライクというカジノホテル(これらもロサンゼルスから陸路でやって来るギャンブラーが主な顧客)があったが、ネバダランディングは 2007年に閉鎖されてしまったため、今は名前を改めたテリブルズが1軒あるだけとなっている。
(ゴールドストライクは 2018年に名称変更しテリブルズに。上の写真はゴールドストライク時代のもの)

 なお、前述の Terrible Herbst 社が 2018年、この Jean 地区に、給油ポンプの数が96台という世界最大級のガソリンスタンドをオープンさせたこともあり(写真。大規模なギフトショップも併設。週刊ラスベガスニュース 第1126号 で特集)、やや注目度がアップしてきているので、ロサンゼルスからレンタカーでラスベガス入りする者は、立ち寄ってみるとよいだろう。
(Terrible Herbst 社は、Primm 地区から Jean 地区に活動の拠点を移したことになる)

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