MGM系列の常連客に朗報、コスモポリタンも同じ系列に

MGM Grand Hotel の巨大広告塔

MGM Grand Hotel の巨大広告塔

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 ラスベガスのホテル街「ストリップ地区」で最大勢力を誇るカジノホテルの運営会社 MGM Resorts 社(以下 MGM)と、同地区で屈指の高級大型カジノホテル Cosmopolitan(以下、コスモ)を所有するプライベート・エクイティ投資ファンド Blackstone は 9月27日、MGM がコスモの運営権を Blackstone から約16億ドルで買い取ることで合意したと発表した。
 また Blackstone は不動産としてのコスモを複数の投資ファンドに総額約40億ドルで売却することも発表。
(これはどうでもいい余談だが、その投資ファンドの中には全米で2000店舗以上展開する中華料理のファストフード店「Panda Express」の創業者が立ち上げた Cherng Family Trust も含まれている)

MGM Grand に隣接するモールにも、コスモの向かい側の商業施設内にも存在する PANDA Express。

MGM Grand に隣接するモールにも、コスモの向かい側の商業施設内にも存在する PANDA Express。

 MGMはコスモの不動産を所有するわけではないので物件を毎年約2億ドルでリースしてもらう形でホテルやカジノを運営することになる。
 今回の運営権の取得は何年も前から MGMの株主総会でたびたび株主から提案や質問されてきた案件。なので「驚き」というよりもむしろ「やっと」という印象が強い。
 さまざまな企業が関わってきたこれまでの複雑な経緯を以下のように単純化して書き出してみると「やっと」の理由がわかるはずだ。

中央がコスモの東側のタワー。拡大すると客室にベランダがあることが見て取れる。

中央がコスモの東側のタワー。拡大すると客室にベランダがあることが見て取れる。

 コスモはもともとカジノホテルとして計画された物件ではなく超高層コンドミニアム、つまり日本でいうところのタワーマンションとして建設された(その名残として今でも多くの客室にベランダが付いている)。
 しかしリーマンショックの不況で分譲が思うように進まず、最初のデベロッパーや関連企業がことごとく倒産。
 買い手がつかず放置状態にあった物件を債権者のドイツ銀行が差し押さえ、さまざまな曲折を経てカジノホテルに改造して開業にこぎつける。
 その後 Blackstone がドイツ銀行から買い取ることになるわけだが、Blackstone は運用益を追求する投資ファンドであり、カジノやホテルを運営することが目的の組織ではない。そのため高く売れる環境が整い次第、転売先を探す必要があった。

右端が Bellagio とその噴水ショー、中央がコスモの西棟、左が東棟、西棟の右側に接して薄く見えるのが Vdara、左下奥にわずかに見えるのが Aria。

右端が Bellagio とその噴水ショー、中央がコスモの西棟、左が東棟、西棟の右側に接して薄く見えるのが Vdara、左下奥にわずかに見えるのが Aria。

 買い手として複数社の名前が上がった中で本命視されたのが MGM。というのも同社が運営するホテル Bellagio、Aria、Vdara がコスモの周囲を取り囲むように存在しており立地的条件的に MGMが買い取ることが自然な流れと思われていたからだ。
 しかし MGMもリーマンショックのあおりを受け、コスモを買うどころか保有していたカジノホテル Treasure Island を売却しなければならないほどの資金難に。
 その後も MGMは保有していた複数のカジノホテルの所有権と運営権を分離する形で所有権を売却しながら資金を確保し今日に至っている。

中央は MGM社が運営する Aria の広告塔、右がコスモの東棟、左が西棟。

中央は MGM社が運営する Aria の広告塔、右がコスモの東棟、左が西棟。

 そのような状況下でコスモの経営権を取得したため「やっと」ということになるわけだが、業界やウォールストリートでは今回の取引をどのように見ているのか。
 一般的に大きな買い物をした企業の株価は一時的に急落したりすることが多いが、今回の取引はコスモにとってもMGMにとってもメリットのあるウィンウィンのディールとして好意的に受け止められているようで、株価は大きく値下がりするような動きを見せていない。
 実際に Blackstone にとっては大きな売却益が出ており(ドイツ銀行からの買値は 17億ドルだった)、また MGMにとっても16億ドルという買い値がこれまでのコスモの直近のEBITDA(会計基準が日米では異なるので単純に表記しづらいが、営業利益のようなもの)の8倍前後なのでリーズナブルとされている。
 極めて単純な計算だが、たとえばコスモの運営で年間3億ドルの利益を出せれば、2億ドルの家賃を支払ったあとでも1億ドルの利益が出ることになり、それは16億ドルの投資に対して6%程度の利回り。
 まだコロナが完全に収束したわけではないが、3000部屋を超える規模の高級ホテルとカジノを適切に運営できればその程度の数字は実現可能とされ、アフターコロナを考えると今回の投資は MGMにとって悪い話ではないと思われる。

 さて経済的な考察はそのへんにして、ではラスベガスを訪れる一般の利用者にとって今回の取引はどのように受け止めるべきか。
 MGMの寡占がますます進み宿泊料金や館内のレストランなどにおける価格競争が阻害される不安は多少あるものの、たぶん多くの利用者にとって悪い要素はほとんどなく、歓迎されるべきことと思われる。
 というのも MGMの常連利用者にとって、今後コスモが宿泊場所やカジノの新たな選択肢として加わり、MGM系列のホテルが発行している共通ポイントカード「M life」のポイントも貯めやすくなるからだ。
 またシルク・ドゥ・ソレイユと密接な関係を保っている MGMのこと、コスモにシルク・ドゥ・ソレイユの新たなショーを誘致したりする可能性もあるかもしれない。今後のコスモの変化に期待してよいのではないか。
 なお現在のコスモのポイントカード「Identity」が「M life」に統合される時期は、今回の経営権の移転自体がまだ当局から独禁法の審査などを受けていないので最終決定ではないが、たぶん 2022年内に統合されるものと思われる。

Bellagio ホテルの広告塔。シルク・ドゥ・ソレイユの「O」を宣伝中。右後方はコスモの東棟。

Bellagio ホテルの広告塔。シルク・ドゥ・ソレイユの「O」を宣伝中。右後方はコスモの東棟。

 さて最後に、現在 MGMはラスベガスで数多くのカジノホテルを運営しているが、その中でトップに位置づけられているいわゆるフラッグシップホテル(旗艦ホテル)は Bellagio。コスモはそのベラージオに勝るとも劣らない評価を得てきた人気の高級ホテルだけに、今後 MGM内での両ホテルの位置づけがどうなるのか興味深いが、まずは当局の審査に通ることを祈って今週の記事を終わりとしたい。

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コメント(2件)

  1. よしこ より:

    これは嬉しいニュースだと思いました!コスモポリタンは格好いいクールなホテルですよね、レストランも素敵。次回ぜひ宿泊してみたいです(M Life使って!)

    • ラスベガス大全 より:

      よしこ様
      ラスベガス大全をご閲覧いただき誠にありがとうございます。
      コスモポリタン、エレベーターによる垂直移動がほとんどで、水平の移動が少ない構造なので、とっても便利なホテルだと思います。ぜひ泊まってみてください。

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