親子2頭が同時に変死、異例のキャトル・ミューティレーション

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(2023年2月、誤字脱字の訂正などの目的で加筆)

 宇宙人のしわざだ。いや単なる交通事故だ。病死か餓死だろう。人間のいたずらに決まっている・・・。

エリア51の周辺で見られる「謎の牛の死体」  このたび UFOマニアの聖地 レイチェル村の近くを走る ETハイウェー脇の荒野で、親子2頭の牛が同時に同じ場所でキャトル・ミューティレーションされる(写真。タップで拡大とキャプション表示)という極めて異例の事態が発生したとの報告を受けたので 2016年7月9日、その現場へ急行し取材した。

 なお以下は、現場で起こった現象をありのままに伝えるだけであって、その現象を興味本位に肯定したり原因を憶測で勝手に決めつけたりするものではない。あくまでも事実だけを取り上げる現場レポートだ。

レイチェル村の入口に立つ標識  多くの読者にとっては何のことだかわからないと思われるので、まずは今ここで触れた3つの単語、レイチェル、ETハイウェー、キャトル・ミューティレーションについて説明しておきたい。

 レイチェル(Rachel)とは、ラスベガスから北北西の方向に車で2時間半ほど走った荒野の中にある村の名前だ。人口は約 70人。
 あまりにも目立たない小さな村ではあるが、かの有名な謎の空軍基地 Groom Lake Airforce Base(通称「エリア51」)に近いだけでなく、UFO(未確認飛行物体)に遭遇できる可能性が高いとのうわさも定着しており、さらに周辺区域のボートル・スケール(夜空の暗さを示す尺度。この数値が高いほど星がきれいに見えるとされる)が非常に高いレベルにあることなどから、UFOマニアのみならず、軍事マニア、天文マニアなどにとっても知る人ぞ知る聖地のような場所として世界に名を馳せている。

ETハイウェーを示す標識  次に ETハイウェーについてだが、これはネバダ州の中南部を東西に横切る高速道路375号線のこと。
 UFOマニアの聖地レイチェルに通じる道ということで 1996年、ネバダ州当局がこの高速道路を正式に Extraterrestrial Highway と命名。(Extraterrestrial の意味は「地球外の」)

 したがって単なる俗称ではなく公認の道路名として、現場にはこの写真のような標識が実際に設置されている。(標識内の点々としている黒い部分は、いたずらによって貼られたシールや落書き)

「低空飛行物体に注意」の道路標識  なお高速道路といっても管理上の区分がそのようになっているだけで、構造としては平地を走る片側一車線の道だ。(写真内の黄色い標識は『低空飛行物体に注意』の警告)

 したがって日本の高速道路のような高架道をイメージしてはいけない。
 それでも「全米で一番さびしい高速道路」といわれるほど交通量が少ないため、片側一車線といえども必要十分な規模が保たれており、時速 100km以上の快適な高速走行が楽しめるようになっている。もちろん有料道路ではない。

謎の牛の死をパロディー化するギフトショップ  キャトル・ミューティレーション(cattle mutilation)とは、そのままの意味としては牛の惨殺死体といったところだが、怪奇現象のような場合にのみ用いられるのが普通で、原因が明らかな単なる牛の死体に対してこの言葉が使われることはない。

 レイチェル周辺でひんぱんに目撃されることから、UFOマニアなどの間では「宇宙人のしわざだ」といったうわさが絶えず、それに便乗してか、ETハイウェーの入口付近(東端)にはキャトル・ミューティレーションされた牛で作ったといわんばかりのパロディー的なビーフジャーキーを売るギフトショップが出現したり、UFOが牛に向かって光線を発している様子を描いた看板(写真)が設置されるなど、近年この地で商売をしようと考える者も目立ち始めている。

交通量が全米で一番少ないとされる ETハイウェー  マニアなどの情報によると、広い意味でのキャトル・ミューティレーション(*)と思われる現象が多発している場所は、ラスベガスからレイチェルに向かってレイチェルの手前約40km の地点から15km の地点までの、極めて見通しの良い一直線に伸びた約25km の区間(写真)とされる。
 実際に本誌がこれまでに数回目撃しているのもその区間で、今回の親子2頭の現場も例外ではない。
(* せまい意味では、死体から目や血液が抜かれていたりする場合のみをキャトル・ミューティレーションとするらしい)

前回の訪問時に遭遇した牛の死体  レイチェル一帯における一般的なキャトル・ミューティレーションでは、写真(弊社アーカイブ写真)のような状態で、車線からかなり近い場所で1頭だけが倒れているのが普通とされる。(人目につきにくく認識されていないだけで、道路から離れた場所でも多発しているという説もある)

 ただ、このようなケースでは、オカルト系のことを信じない一般の人たちはもちろんのこと、マニアの間でも「キャトル・ミューティレーション」と呼ぶことをためらう者が少なくない。なぜなら車との衝突、つまり単なる交通事故の可能性が高いからだ。

ETハイウェーに出没する謎の牛  その一方で、路肩に倒れる1頭だけでも十分に不思議で交通事故では説明が付かない、とする意見も根強い。
 なぜなら写真でもわかる通り、これほど見通しの良い直線の道路で運転手が牛に気づかないわけがないからだ。また牛は犬や猫のように急に飛び出す動物ではないため(闘牛の牛とかなら話は別だが)、常識的な感覚として衝突事故につながるとは考えにくい。

 実際に現場の道を運転してみるとわかるが、もし牛が路上にいた場合、夜でも簡単に気づく。ヘッドライトに照らされ光り輝く黄色のセンターラインや両端の白線はもちろんのこと、路面もはるか先までクッキリよく見え、牛ほどの大きさのものが路上に存在した場合、その先のセンターラインや白線が視界から遮断されすぐに異変に気づくからだ(上の写真の位置関係がまさにその状態)。
 仮に遮断されない位置関係に牛がいたとしてもヘッドライトに照らされた路面は十分に明るく、居眠り運転でもしていない限り牛に気づかないことなどまずありえない。

 百歩譲って居眠り運転がキャトル・ミューティレーションの原因と仮定したとしても、一般的な車両が体重600キロ以上と推定される牛に高速で衝突した場合、大破することはもちろんのこと人命も失いかねない大事故になるはずだが、レイチェルの住民によると、このエリアで牛との衝突による大きな事故はほとんど報告されていないという。

エリア51の周辺で見られる謎の牛  極端なUFO信者の間では、そもそもこの地域に牛がいること自体が不自然 とする意見も少なくない。
 さらに、どの牛も目つきが異常で人間をにらみつける習性があるところが通常の牛ではない、とのうわさもしばしば耳にする。

 目つきのことはともかく、たしかに砂漠地帯であるがために、地平線の彼方まで食料となりそうな草も水も見当たらず、牛の生存に関しては奇妙に思える部分があるのも事実。背丈の低いサボテン系の植物があるにはあるが、それだけで生きていけるものなのか。

エリア51の周辺で見られる謎の牛  気候や環境的に野生の牛がこの地に生息しているとは考えにくく(そもそも野生の牛というものが北米大陸に存在しているのか…)、人間が関与していると仮定すると、乳牛にしろ肉牛にしろ皮革業にしろ、ビジネスとして飼っていると考えるのが妥当なわけだが、それにしては頭数が少なすぎる。

 正確に数えたわけではないが、体感としては事故現場付近の牛密度は 10km 四方(東京ドーム約2000個分)ほどの範囲に2頭か3頭といったところではないか。どう考えてもビジネスとしては採算が取れない。だれが何のために飼っているのか。
 また、人的に飼育されている牛だとするならば、所有する土地の圏外に牛が出て行かないように柵が設置されるのが普通だが、今回取材した限りではそのようなものは見当たらなかった。
 その結果、高速道路を歩行したりすることが起こっているわけだが、他州の酪農地帯などで牛が高速道路を歩くような場面は見たことがない。

「給油所などはこの先150マイル(240km)ないので注意」という道路標識  そもそも「人的」といっても、このエリアにはレイチェルの 70人以外、ほとんど人間が住んでいない。
 この写真はETハイウェーの東端付近の集落に立っている「ここより先、150マイル(240km)は給油所がありません」という道路標識。
 牛が点在しているエリアもレイチェルも、この240km の区間内にある(つまりレイチェルにすら給油所はない)。いかに人が住んでいないか、いかに交通量が少ないか想像できよう。

 なお、その牛が点在するエリアの南側 5km ほどの地点に、牛を人的に飼育していると思われる極めて小さな施設の存在が確認されているが、死体が見つかる現場からはかなりの距離がある。日ごろ犠牲となっている牛がこの施設のものなのかどうか、キャトル・ミューティレーションとされる現象との関連性ははっきりしていない。

道路から40m離れたところに2頭の牛の死体  さて前置きが長くなってしまったが、存在すら奇妙な牛の死体がしばしば目撃されているのは事実で、それらの原因をすべて強引に交通事故とするにしても、今回の親子2頭のケースはそれでは説明できそうもない不思議な事象といってよいのではないか。現場の状況はこうだ。

 現場は東西に走るETハイウェーの路肩から北方向に約40メートルも奥まった荒野の中。体型や毛の色などから親子と思われる2頭の牛が、まったく同じ方向を向いた状態で倒れており(写真)、腐敗の状況などから同じ日に死亡したと推定される。

 ちなみに現場の正確な位置は北緯 37.516度、西経 115.571度。地図上でこの場所を確認したい場合は、これら数値をGPSなどに入力してみるとよいだろう。(グーグルマップの場合、37.516, -115.571 と入力)
 現地の地理に明るい人にとっては、「かつて存在していた謎のホワイト・メールボックスとレイチェルの中間地点の付近」といったほうがわかりやすいかもしれない。

ETハイウェーから40m離れたところに横たわる2頭の牛の死体  この現象をどのように解釈したらよいのか。現実的ではない宇宙人説は始めから除外するとしても、交通事故説ですべてを片付けるのは簡単ではなさそうだ。

 というのも、どんなに大きな車両であったとしても 2頭を同時にひくこと、そしてそのどちらにも同様な致死的ダメージを与え、さらにその巨体を道路から 40メートルも離れた場所まで飛ばし、なおかつ2頭をそろった向きに着地させることはいくつもの偶然が重なり合ったにせよ、あり得ないと考えるのが普通だろう。
 特に進行方向に対して真横方向に 40メートルも飛ぶことなどまずあり得ない。なので常識的な角度で縦方向に飛んでやや横方向にずれたと仮定するならば、最低でも 200メートルほど飛ばさないと 40メートルも道路からずれることはないはずだ。

 しかし車輌と牛の重量差がどんなにあったとしても、牛が200メートルも飛ぶことなど現実の世界を完全に超越しており、そう考えるともはやオカルト的な議論になってしまう。
 始めから牛が道路から 40メートル離れた場所にいて、居眠り運転などで車両がそっち方向に飛び込み牛と衝突したということならあり得そうだが、荒れ地の中にタイヤの痕跡などは見当たらなかった。ちなみに路面にもタイヤのスリップ跡はない。

 別の推論として、衝突後、道路上に横たわった死体を片付けるために運転手もしくはその他の者が死体を荒野の方向に40メートル移動させることはあり得なくはないが、重量的に一人や二人の手で動かすことは不可能だろう。

ETハイウェーから40m離れたところに横たわる2頭の牛の死体  そうなると消去法的に考えられるストーリーとしては、衝突後、路上に横たわる2頭の死体を、同乗者や後続の車両の運転手なども含めた複数の者が力を合わせて 40メートル移動させた、ということならあり得るかもしれない。
 もしくは事故後、放置されたままになっていた死体を、まったく別の数人の第三者が見えない場所まで動かした。当事者が衝突の衝撃で負傷していたりした場合、この他人説のほうが可能性が高いかもしれない。

 いずれにせよ現場の地面をよく見ると、実際に牛を引きずって移動させたような痕跡が、わずかながら確認できる(写真)。
 たぶんこの 「交通事故 → あとから複数の者が動かした説」が最も有力なストーリーのような気もするが、前述の通り見通しが良い道であり、衝突そのものが起こりにくい環境にある上、2頭同時に死亡というのも状況としては想像しづらい。
 読者の中にはそれぞれまったく別の推理をしている人も多いと思われるので、ここでは断定的なコメントは避けたほうがよさそうだ。

牛の死体を求めて荒野の中を散策するマニアたち  長くなってしまったわりには何も結論を導くことができなかったが、これ以上、推論ばかりを重ねてもあまり意味が無いので、このような事象が実際にあったという事実だけをお伝えして今週の記事を終わりとしたい。(写真は牛の死体を求めて荒野の中を散策するマニア)

 最後に余談になるが、同行したUFOマニアから聞いた話をひとつ。
 「これほど見通しのよい道路で、そしてこれほど交通量が少ない道路で、めったに存在しない牛、それも人間よりも遥かに大きく目立つ牛が、非常に限られた短い区間で運転手の不注意によって轢き殺されるという事故がひんぱんに発生しているとするのであれば、ラスベガスのような都市部では毎日何百、何千もの人身事故が発生していないと確率論的に理屈に合わない」

レイチェル村にあるモーテル&レストラン  たしかにそうかもしれない。しかし、「だから宇宙人がやったのだ」というのはあまりにも飛躍しすぎで根拠や証拠に乏しいところだが、このようなマニアがいるからこそ、レイチェル一帯が長年に渡り神秘のエリアとして注目され続けていることもまた事実で、結果的にラスベガス経済にもプラスになっている。ここはひとつ、宇宙人説を肯定も否定もせずに、マニアに敬意を評することとしておきたい。(写真はレイチェルのレストラン)

【ラスベガス大全としての見解】
 ちなみに本誌ラスベガス大全としては本件に関しては、「広大な宇宙の中において、地球にだけにしか生命体が存在しないと考えるのは無理がある。したがって高度に発達した知的生命体が宇宙のどこかに存在していてもまったく不自然ではない。ただ、その生命体が地球にまでやって来るには、理論上の Max である秒速30万km の移動手段を持っていたとしてもあまりにも距離が遠すぎるため(地球に一番近いとされる恒星の惑星「プロキシマ・ケンタリウムb」でも4.2光年、約40兆km)、他の天体から地球に生命体が到達している可能性は過去においても未来においてもかなり低いのではないか」というスタンスを取っている。

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