ラスベガスについて

 砂漠の中の「不夜城」といわれているラスベガスの歴史はそれほど古くない。
 市制こそ 1905年だが、ネバダ州がギャンブルを合法化したのは 1931年のことで、当時のラスベガスにはまだ何もなく、今日のようなにぎわいを見せ始めたのはせいぜいここ 50~60年の話だ。

 発展のきっかけとなったのはもちろんフーバーダムの建設だが、完成直後の 1930年代後半においてはまだ特にめざましい発展が見られたわけではなく、ラスベガスは第二次世界大戦が終了するまでは人口2万人にも満たない小さな町にすぎなかった。
(ちなみに 2018年における周辺都市も含めたラスベガスの都市圏人口は 200万人を超えている)

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 戦後になっても「フラミンゴ」などが開業したものの、40年代はごく限られた採鉱者や軍関係の兵士、それにダム関連の作業員たちがささやかにギャンブルを楽しむ程度のローカルタウンにすぎず、今日のような国際観光都市になったのは、それよりもかなりあとのことだ。
 そうした黎明期を抜け出し、ラスベガスが本格的に開花し始めたのは、デザートイン、サンズ、サハラ、リビエラなどの豪華カジノホテルが次々とオープンした 50年代に入ってからのことで、現在のような形態のラスベガスが形成され始めたのはそのころと考えてよいだろう。

 その後の発展はめざましく、またたくまに世界を代表するエンターテインメント・シティーへと変貌していくことになるわけだが、その原動力となったのがハリウッド・スターや芸能関係者らの努力によって作り上げられたラスベガス芸能文化で、エルビスプレスリー、フランクシナトラなどのショーに代表されるエンターテインメントがこの街のビジネスモデルとなり、世界中から観光客を集めることに成功した。

 しかしながらショービジネスだけでこの街が発展してきたわけではない。カジノの存在こそが今日の繁栄を支えてきたことは疑う余地のない事実で、その結果、これまではラスベガスといえば「ギャンブル」というイメージがあまりにも強く、決して健全なイメージの街ではなかった。

 それを大きく変えたのが 90年代に入り続々と誕生したテーマパーク型巨大ホテル群で、その出現はラスベガスを ギャンブルの街 から、家族ぐるみで楽しめる 総合エンターテインメント・シティー へと変えていくことになった。
 実際に、MGMグランド・ホテルに隣接する空き地にはディズニーランド型の遊園地が建設されたり、サハラ・ホテルには最新鋭のローラーコースターが設置され一世を風靡した。

 しかし、現在も基本的には「カジノ一辺倒からの脱却 & 総合エンターテインメント・シティー」という流れに変わりはないものの、90年代後半に入ってから「子連れファミリーを相手にしていたのでは商売にならない」というカジノホテルが増え始め、2000年以降、しばらく続いてきたファミリー路線の見直し機運が高まり、実際に無料や格安料金で提供されてきた子供向けアトラクション施設が次々と縮小もしくは閉鎖に追い込まれていった。(MGMの遊園地もサハラのローラーコースターも今はない)

 代わりに増えてきたのが、ナイトクラブ、高級ショッピングモール、カリスマシェフなどによる高級レストラン、高層コンドミニアムなどで、近年は確実に オトナ向けの高級総合総合エンターテインメント・シティー を目指す方向に変化しており、現在それのための大改革として、高級ナイトクラブ、高級デイクラブ(プール施設などを使ったオトナの社交場、おもに夏期)、高級レストラン、高級ブランドのための商業施設などの新設や改築がいたるところで進められている。

 それらトレンドとはまったく別に、ラスベガスは コンベンション都市 としての側面も持っている。(写真はワールドマーケットセンター)
 以前からトレードショーや国際見本市などが多い都市として知られていたが、90年代以降のホテルの建設ラッシュにともなう宿泊施設の急増が、コンベンションの誘致に拍車をかけており、開催イベント数においても参加人数においても、すでにシカゴ、アトランタ、ニューヨークなどを抜き、世界一のコンベンション都市に成長している。

 実際に会場スペースの部分においても、ラスベガス・コンベンションセンター(写真)、サンズ・エキスポ、マンダレイベイ・コンベンションセンター、ワールドマーケットセンターなどの巨大施設、さらには各ホテル内にある大型ボールルームなど、すでにその総床面積は世界最大で、その上さらに複数の大型コンベンション施設の新設が計画されるなど(旧リビエラホテルの跡地はコンベンション施設に生まれ変わる予定)、拡大の勢いはとどまるところを知らない。

 ラスベガスの強みは、宿泊施設とコンベンション施設の距離が非常に近いこと、空港の利便性(市内からわずか10分程度の距離)、エンターテインメント性が高いため人が集まりやすいことなど、都市構造そのものにも起因しており、一朝一夕に他の都市に逆転されることはないだろう。
 また、コンベンションで人が集まれば、結果としてホテル、レストラン、カジノなどの収益も伸び地元経済が活性することから、官民一体となったコンベンション誘致のための活動がさかんで、ラスベガス観光局のこの分野における予算は世界一といわれている。
 ただ、インターネットの普及に伴い、新製品の情報などは自宅にいながら手に入れることが可能となり、新製品と人が一堂に会する国際見本市のようなものは今後斜陽化するのではないかとの見方もあるなど、コンベンション都市としてのラスベガスの今後は不透明な部分も少なくない。

 さて、ラスベガスは世界遺産も含めた大自然観光スポットのゲートウェー都市でもある。
 日本人にとってはグランドキャニオンばかりが有名だが、アメリカ本土の西半分だけでも以下のようなすばらしい世界遺産が9ヶ所もあり、その中心にあるのがラスベガスだ。
(地図内の赤い★印がラスベガスの位置。以下の各番号は上の地図の位置に対応。NP は National Park、つまり国立公園)

 グランドキャニオン NP (アリゾナ州)
 ヨセミテ NP (カリフォルニア州)
 イエローストーン NP (ワイオミング州など)
 カールズバッド NP (ニューメキシコ州)
 メサ・ヴェルデ NP (コロラド州)
 レッドウッド NP (カリフォルニア州)
 オリンピック NP (ワシントン州)
 チャコ文化国立歴史公園 (ニューメキシコ州)
 タオス・プエブロ (ニューメキシコ州)

 また世界遺産にはなっていないが、デスバレー、ザイオン、ブライスキャニオン などの国立公園のゲートウェー都市にもなっており、さらにモニュメントバレー、アンテロープキャニオン、セドナ などの非国立公園系の人気観光スポットもラスベガスからアクセスすることになる。

 カジノやナイトショーを含む総合エンターテインメント、それにコンベンション、そして大自然観光がラスベガスの特徴であることはここまでに述べてきたが、その他にもラスベガスは「世界一」、もしくは「その業界の総本山」といった側面を持っている。
 たとえば、ボクシングの聖地であることは広く知られるところで、世界的なボクサーによる超ビッグマッチのほとんどがラスベガスで開催されている。

 ナイトクラブの世界でも当地が総本山で、人気や売上の世界トップ10 のクラブのほとんどは在ラスベガスのクラブだ。必然的に、世界中のDJにとってもラスベガスは世界最高の舞台で、この街での出演は一流DJとしてのステータスとなっている。
(上の写真は、世界的に有名なDJ、スティーヴ・アオキ氏が、人気ナイトクラブ Hakkasan にて、高級シャンペンを観客に吹きかけている場面)

 ナイトクラブが世界一ならば、当然のことながらデイクラブの市場規模も世界一と言われており、夏季限定ではあるが(といってもラスベガスの夏は長いので、運営期間は5月初旬から9月下旬までが一般的)、高級カジノホテルのゴージャスなプール施設の一部は、おとな専用の社交場となり、世界中から集まる男女で賑わう。女性がトップレスになれる施設も少なくない。

 ウェディング業界でも当地が聖地で、ストリップ地区とダウンタウン地区の中間地点付近には、さまざまなスタイルのウェディング・チャペルが多数存在している。
 他の都市と比べて婚姻に関する役所の手続きが簡単とされ、実際に利用者の利便に配慮してか、婚姻届などを受け付ける役所の窓口も深夜12時までオープンしていたりする(以前は24時間オープンだった)。
 さらに近年、同性愛カップルの婚姻も公認されるようになったことでも注目が集まり、官民挙げてのサポート体制が整っているところは、まさに不夜城ラスベガスの面目躍如といったところか。

 スポーツの分野では、大規模な会場や宿泊施設が充実していることから、ボウリング、乗馬・馬術、ロデオの世界的な大会が毎年ラスベガスで開催され、当地が総本山とされている。
 また、フーバーダムによってせき止められて出来上がった巨大な湖「レイク・ミード」(写真)が市内から車で1時間ほどの場所にあることから、バス釣りのメッカとしても知られ、そのレイクミードは毎年世界大会が開催されるなど、フィッシング・ファンにとっては憧れの聖地だ。

 近年プロスポーツチームの本拠地としても注目され始めており、アイスホッケー NHL の「ベガス・ゴールデンナイツ」、女子プロバスケットボール WNBA の「ラスベガス・エーシーズ」が当地をホームとしているばかりか、ついにアメリカンフットボール NFL の「オークランド・レイダース」もベガスに移籍することが決まっている。

 コンベンションと重複するかもしれないが、国際的な会議が毎年開催されることからハッカー集団の聖地でもある。
 インターネットの普及とIT技術の進化に伴い、高度な知識を持ったハッカーは各国政府や大企業などから引っ張りだこで、その分野においてもラスベガスは知る人ぞ知る世界の中心地だ。
 同じくコンベンションと重複するが、家具業界の聖地でもある。
 家具業界は、商品のサイズという意味で、保管倉庫も展示も特殊な環境が必要なことから、長い間、ノースキャロライナ州のハイポイント市が世界の中心地だったが、2000年以降、ラスベガスが家具業界専用の巨大な施設「ワールドマーケットセンター」を複数棟建設したため、今では存在感でハイポイント市を凌駕している。

 意外と知られていないのが 金(Gold)だ。ラスベガスが属しているネバダ州の愛称は「シルバー・ステート」ではあるが、実際には銀よりも金が有名で、少々古いデータだが 2013年のデータによると 169トンを産出している。これは全米50州の産出量の 75%を占め、アメリカが世界第3位の金の産出国となり得たダントツの貢献州だ。
 ちなみにこの 169トンという数字は、全世界の年間産出量の 6% を占め、ネバダ州だけで、広大な国土を持つオーストラリアや中国、それに南アフリカ共和国に次ぐ世界第4位の「産出国」にランクされるというから驚きだ。
 そのようなわけで、金鉱山関連のビジネスは、カジノホテル業界に次ぐネバダ州第2の巨大産業となっている。

 軍事マニアなどにとってもラスベガス周辺地域は聖地と言ってよいだろう。
 ネバダ州は人口が少ないばかりか、農地もほとんどなく、大部分が広大な砂漠地帯ということもあり、東西冷戦時代は原爆開発の中心地として数多くの大気圏内核実験が行われ、現在でも地下核実験場としての機能は維持されている。
 また秘密軍事施設としてマニアの間で名高い「エリア51」もラスベガスから2~3時間ほどの場所に位置しており、さらに全米屈指の空軍基地「ネリス」(ホテル街から30分ほどの場所)では、毎年秋に航空ショーが開催されることから世界中から航空マニア、軍事マニアがラスベガスを訪れている。

 最後にラスベガス市の人種別の人口構成比についてふれておくと、白人 46%、ヒスパニック系 33%、アフリカ系 11%、アジア系 8%、その他 2%となっている。以下は少々古いが、ラスベガスおよびネバダ州に関する統計データ。

 ラスベガスおよびネバダ州に関する統計データ (2017年) 
ホテル数(モーテルも含む) 約 230
その合計客室数 約 151,000室
広義の区域のラスベガス市の人口 約 98万人
ノースラスベガス市、ヘンダーソン市も含めた都市圏人口 約 210万人
ネバダ州全体の人口 約 295万人

 

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