5月25日、ストリップ大通りの中心街から西に約1300メートルほどの位置にあるカジノホテル「リオ」に、スリルライド「VooDoo Zip Line」が完成した。
同ホテルの本館イパネマ・タワーと新館マスカレード・タワーのそれぞれの屋上を結ぶ形で設置されたライドで、全長は約260m、最高地点となるスタート台の高さは地上から約150m、最高速度は時速約53km。
(上の写真内の左側に見える低い建物が本館、右側の高い建物が新館)
一般的にジップライン(Zip Line)とは、落差のある2地点を結んだワイヤーに、滑車を組み込んだ器具で身体をつなぎ、一気に滑り降りる遊びのことで、見た目はスキー場のリフトのような感じだが、リフトとの大きなちがいは、動力がなく落差だけを利用しているため、登りはなく、常に下りであることと、速度が定速ではないこと。
また原則として、始点と終点以外に支柱などがないこともスキー場のリフトとは大きく異なる特徴といってよいだろう。(上の写真は、新館側にあるスタート地点から滑り出した直後の様子)
以上が一般的なジップラインについて言えることだが、この VooDoo Zip Line に当てはまるのはライドの前半、つまり高い新館から低い本館に到着するまでだけ。(この写真は本館に到着する直前)
なんとこのライドには後半もある。ようするに「行き」だけではなく「帰り」もあり、その部分は当然のことながら登りになることから、落差を利用しての自力では戻れず、動力の助けを借りることになる。
したがって後半部分は「動力なしの片道だけ」が常識のジップライン本来の姿からは逸脱した乗り物になってしまっているが、まぁそんなことはどうでもいいだろう。
この種の乗り物で一番重要なことは、スリルがあるのかないのか、そして楽しめるのかどうか。その部分に関しては合格点を与えられそうだ。
乗る前の勝手な予想では、「ただ単にイスに座って滑るだけ。大してスリルもなく、楽しくなさそう」と大きな期待はしていなかったが、実際に乗ってみると、これがなんと予想に反してけっこうスリリングでおもしろい。
この週刊ラスベガスニュースの713号で取り上げた丘陵地帯でのジップラインと比べると、滑走距離や景色では劣るものの、スリルや恐怖感という部分においてはこっちのほうが遥かにまさっている。
なぜそうなるのか。それは、つかまるところがほとんど無いに等しい状態で、なおかつシートベルトが頼りないからだ。
頼りないの意味は、強度が弱そうといった意味ではなく、旅客機のシートベルトのように腰の部分に一本あるだけで、自動車のような3点式でもなければ、ローラーコースターなどで見られるような股間から固定するバーやベルトなども一切ないということ。
冗談抜きにこれは危険かもしれない。ベルトがゆるければ、尻が滑って下から抜け落ちないとも限らず、逆に前のめりになった場合、上から転落する可能性がある。特に後半のスタート、つまり帰路の始動時、かなり前のめりになるような瞬間があり、前方につかまるものがまったくないので、一瞬冷やっとする。
今後重大事故が起こるとは考えにくいし考えたくないが、そのうち当局からの指導などで、腹部の前方や頭上部分に、しっかりとつかまることができるハンドルなどが設けられることになるかもしれない。
なおこれは余談だが、事故といえば、転落事故のようなことはともかく、動力装置の不調などで、途中で停止といったトラブルは十分にありえそうだ。ストラトスフィア・タワーのライドでは、乗客が空中で長時間待機させられるといった事故が実際に起こっている。
そのようなことを想定し、これからの猛暑の季節、水を持参して乗りたいところだが、その持ち込みが許されていないのであれば、せめて乗る前に思いっきり水分を取るような対策は無駄ではないかもしれない。実際に「事故はあり得る」といったニュアンスのことが、以下に示した契約書に書かれている。
とにかくスリルがあるライドなので、この種のものに興味がある人はぜひ体験していただきたい。乗るまでの手順は以下のとおり。
まず新館マスカレード・タワーのカジノフロアの上方の外周にある廊下に行く。すぐにチケット売り場が見つかるはずなので(写真)、そこでチケットを購入。料金は 5:30pm までが税込み $27.49、それ以降は $42.50。(ただし現在は暫定料金のため、今後変わる可能性あり)
なおチケット購入時に、「このライドに乗って万一負傷しても訴えたりしません」といった内容の契約書に署名させられる。契約書といってもタブレットPCの画面上の契約書なので、自分の氏名をアルファベットで入力し、生年月日を選択、そして画面上で署名することになる。
その際、身分証明の提示も求められるので、日本からの一般観光客はパスポートを忘れてはならない。
あとは順路に従いエレベーターで51階へ。降りたら道なりに廊下を進み、バーラウンジを通りぬけ屋上のデッキに。
記念撮影をするカメラマンが待機していて、「階段を3段降りた場所に立ってこっちを向いてください」というので、そこで記念撮影。(その写真を買うか買わないかは、もちろん自由。4種類の合成写真が用意され、最初の1枚が$30、それ以降は1枚 $20)
写真撮影の場所から階段を降りたところに乗り場があるので、そこで並ぶ。自分の番が来たら、簡単なバッグのようなものを渡されるので、その中にすべての持ち物を入れ、さらにそれをロッカーにしまう。(ロッカーの使用は無料)
そのあと、ポケットなどにカメラやスマホなどを隠し持っていないか、金属探知機のようなものでボディーチェック。メガネも時計も持って乗ることはできない。
シューズはOKだが、サンダルなどは脱がされ、裸足で乗ることになる。(上の写真は赤いシャツの乗客が、緑のシャツのスタッフからボディーチェックを受けているところ。右の奥にいる人は体重測定中)
なぜそこまで厳しくチェックするかというと、物を落とすと下界の人が負傷するからで、ちなみに地上には、多くの人で賑わうこのホテルのプール施設などがある。厳しくするのも無理はない。
そのあとは体重測定。ライドのチェアは二人乗りなので、二人同時に乗る場合は一緒に測定し、最大重量は450ポンド(約204kg)。身長制限もあり 48インチ(約122cm)未満の者は不可。あとは現場スタッフの指示に従って乗るだけ。
前述のとおり、スリルという部分においては期待を裏切られることはないと思われるが、景色に関しては期待しないほうがよい。宣伝文句などでは景色のことがかなり強調されているが、まったくといっていいほど景色は楽しめない。
なぜなら、ストリップ地区のホテル街とはまったく逆方向を向いて乗ることになるからだ。ちなみに視界の前方、つまり本館屋上の向こう側に見えるのはラスベガスの郊外で(写真上)、特にめぼしいものは何もない。
首をうしろに回して強引に振り返れば少しは楽しめるかもしれないが、そんな余裕もないだろうし、つかまるところがないので、そのような姿勢を取ること自体がむずかしい。
そもそもライドの正味時間は行きと帰りの合計で約1分10秒しかない。時間的にも景色を楽しむことはむずかしいだろう。
しかしガッカリするのはまだ早い。乗っている最中には無理でも、乗車前や後にはラスベガスらしい景色(写真)を楽しめる。ここの屋上デッキ自体はホテル街に面しているからだ。
ライドそのものよりもこの景色のほうが、価値があると感じる人も多いのではないか。
いずれにせよ景色とライド、料金的に決して安くはないが、体験してみて損をしたと思うようなことはないと断言しておきたい。
営業時間は月~木曜日が正午から、金~日曜日が午前10時から深夜零時まで。8:30pm 以降は、屋上デッキ部分が酒場などになるため 21歳未満は不可。
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コメント(1件)
ご参考にさせていただきました!
ラスベガス大全の記事はいつも遠慮なく書かれていて、商売っ気が無くて、とても読みやすいです!