週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2006年 07月 05日号
"LOVE″報道解禁、全曲名と写真一挙大公開
 6月 29日、約1ヶ月間に渡るプレビュー公演を終え、本公演がスタートしたシルク・ド・ソレイユの LOVE″。
 広報部門から 「6月30日 5:00pm まで報道を控えてほしい」 という通達が下されたのは以前にもお知らせした通りだが、ようやくこのベールを脱がす日がやって来た。
 LOVE はラスベガスではミスティア、オウ、ズーマニティー、KA に次ぐシルクの 5作目のショー。モントリオール発祥のこのエンターテイメント集団はラスベガスで、いわゆる 「シルク・ド・ソレイユ現象」 を起こしつつあるが、「多すぎてありがたみがない」、「これだけ多いとあきてくる」 といった不満の声も聞かれる。
 そんな中、LOVE はビートルズをテーマにしたショーとしてミラージホテルで始まったわけだが、まずは、写真の公開が解禁されたので、それをご覧いただきたい。(以下、クリックで拡大表示)


 写真を見ての感想は読者に任せるとして、さて、「なぜ、シルク・ド・ソレイユとビートルズ?」 となるわけだが、それはジョージ・ハリソンが、亡くなる 2年前、あるパーティーでこの劇団の創始者ガイ・ラリベルテと出逢い、友人関係になったことが今回のプロジェクトにつながったのだという。その後、劇団側は未亡人および生存している二人のメンバー、さらには著作権などを持つ関係各社と綿密な打ち合わせを重ね、ついに LOVE が実現したというわけだ。

 ボックス・オフィスから専用シアターまでの道のりはビートルズを意識したイギリス国旗とシルク特有のモダンなオブジェが幻想的に融合されており (写真右)、劇場前の雰囲気は他のどのシルクのショーよりも活気があり明るい。
 60年代のイギリスを彷彿とさせるスタッフのコスチュームもユニークで (写真左下)、ここからもうショーが始まっているといった感じだ。
 また、売店では ビートルズの曲名がついたカクテル も用意されているなど、観る前の期待感は否が応にも高まる。

 全体の内容は約 60名のキャストがビートルズの楽曲に込められたロック精神をダンス中心に表現するといったもので、サーカスやアクロバットなどの演出は少ない。
 したがって、あえてシルクでなくてもよかったのかもしれないと思ったりもしてしまうが、この劇団とビートルズの組み合わせは、マーケティング的な発想からいって話題性、需要ともに申し分なく、また、実際の内容を見てもその完成度が非常に高いことを考えると、やはりシルク以外では無理であったろうと思われる。

 それだけ充実したショーではあるが、「シルクの最新作」 という期待で観るとがっかりするかもしれない。その理由は、オウや KA にみられるようなだれもが驚くアクロバティックな要素が少ないからだ。
 しいて言うならば、これまでになかったランプ (ハーフパイプのようなもの) を使ったローラーブレードによるパフォーマンス (写真右) がシルクらしい高度なアクロバットといった感じだが、このシーン以外には度肝を抜く演出はほとんどない。
 代わりにエアリアル・コントーション (天井からぶらさがっているロープや布などに体を巻き付けたりしながら行なう空中演技) がかなり取り入れられているが、似たような演出が多く、飽きてしまう可能性もある。したがって、シルク流アクロバットへの過剰な期待は禁物だ。

 それでもヘイジュードを始めとする往年の名曲と共に天井から無数の赤い紙吹雪が舞う中、役者も全員が真っ赤なパラソルを持って優しく舞うエンディングのクライマックスシーンでは (写真左)、ビートルズファンでなくとも胸が熱くなってしまうことだろう。
 ミスティアで観られるような驚異のアクロバットも、オウで観られるような華麗な演技も、KA が得意とする斬新な荒ワザも、ズーマニティーに漂う怪しいセクシーさも、この LOVE には一切ないが、シルクと共にビートルズに敬意を表するといった一体感はこのショーでしか味わうことができない。そしてそういった雰囲気を造り出すことが、このショーの目指すところで、それを実際にうまく具現しているところがこのショーの真骨頂といってよいだろう。

 曲が作られた時代背景、内容がわからなければ、それぞれのシーンを理解することは難しいかもしれないが、もちろん演出家はそこまでのものを求めているはずがなく、21世紀にカタチを変えて新たに生まれ変わったビートルズの愛 "LOVE" に触れてほしいといったところか。そんな背景があるのか、演出にはアットホームな雰囲気を感じる温かいものが多い。
 さて、ひとつ気になったのは小学校低学年ぐらいと思われる子供のキャスト。これまでのシルクのショーには子供の出演がほとんどないが、この LOVE では、子供たちが 7:30pm、10:30pm のいずれの公演にも出演し、ショーが終了するのは夜中の 12時過ぎだ。子供だけにいつも同じ精神状態で出演することは難しいと思われるが、それよりなにより学校にきちんと行っているのか、余計な心配が頭をよぎる。

 特別に設計された360度の円形状の専用シアターは、客席フロアにかなり傾斜があるため、どの席からでも観やすい。
 ショーが繰り広げられる中、天井を見上げると、いたるところでさまざまな機械が動いており、ここまでオープンな劇場になるといわゆる黒子のような存在もなく、舞台裏が見えたりしてそれも楽しみのひとつだ。
 映像システムも興味深い。約 30個台のプログラム機能が付いた最新プロジェクターが天井付近にセットされ、様々な映像が映し出されるようになっている。またスクリーンも少なくとも3タイプ用意され、そのうちのひとつはスクリーンそのものが赤く染色された非常に珍しいものだ。そしてこれらのスクリーンを巧みに動かすことによって、オープニングからエンディングまで斬新なステージの展開が可能となっている。
 極めつけは、各座席にもスピーカーを付けたことで、透明感と迫力のあるサラウンド・サウンドが自慢だ。あたかも目の前でビートルズが演奏しているようなリアルな音を楽しむことができ、こういった舞台技術ひとつひとつがビートルズ・サウンドの再現に大切な役割を果たしている。ビートルズファンにとっては贅沢きわまりない映像と音の世界が堪能できるというわけだ。
 贅沢なのは装置などのハードだけではない。楽曲の中には未発表の音源が使用されているというのだから恐れ入る。それを聴くだけでもショーを観る価値がありそうだ。
 ちなみに音楽監修は長年ビートルズのプロデュースを行ってきたジョージ・マーティンとその息子、ジャイルズ・マーティンが務めた。二人はアビイ・ロード・スタジオのマスターテープを使って音源を結合させる作業に約2年を費やしたという。参考までに、ショーの中での各場面にはそれぞれ名称が付いており (ほとんどは曲名がそのまま採用されている)、それは以下の通り。

Nowhere Land
Because
Get Back
Glass Onion
Eleanor Rigby
I Am the Walrus
Rock 'n' Roll Run
  ( I Want to Hold Your Hand / Drive My Car )
Abbey Road
Gnik Nus / Something
Being for the benefit of Mr. Kite
Help!
Blackbird
Yesterday
JAM Session
Strawberry Fields
Parade
Within You, Without You
Lucy in the Sky with Diamonds
Octopus's Garden
Lady Madonna
Here Comes the Sun
Come Together
Revolution / Back in the U.S.S.R.
While My Guitar Gently Weeps
A Day in the Life
Hey Jude
Sgt. Pepper ( reprise )
All You Need is Love
 
A Day in the Life
Abbey Road
All You Need is Love
Because
Being for the benefit of Mr. Kite
Blackbird
Come Together
Eleanor Rigby
Get Back
Glass Onion
Gnik Nus / Something
Help!
Here Comes the Sun
Hey Jude
I Am the Walrus
JAM Session
Lady Madonna
Lucy in the Sky with Diamonds
Nowhere Land
Octopus's Garden
Parade
Revolution / Back in the U.S.S.R.
Rock 'n' Roll Run
  ( I Want to Hold Your Hand / Drive My Car )
Sgt. Pepper ( reprise )
Strawberry Fields
While My Guitar Gently Weeps
Within You, Without You
Yesterday

 各シーンに対して一曲が割り当てられているので、ショーで使われている楽曲は約 30曲ということになるが、いくつもの曲を織り交ぜて使ったりする場面もあるので、すべての曲を数えれば 120曲ほどになるらしい。特に 「ストロベリー・フィールド・フォーエバー」 では今まで誰も聞いたことがないジョン・レノンが作った音源を使用しているようで、オノ・ヨーコが自宅に持っていたジョンのテープを使って制作された貴重な遺作とのこと。全ての楽曲に新しいエッセンスを加えて作られた LOVE バージョンのニューアルバムもまもなくリリースされる予定だ。

 公演日時は、定休日の火曜日と水曜日を除く毎日 7:30pm と10:30pm の 2回。チケット料金は $69、$99、$125、$150 の 4種類。詳しくは公式サイト www.cirquedusoleil.com まで。


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