週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2005年 08月 10日号
トレンドは 1セント、"Penny Slot" が大ブーム
 スロットマシン業界が大きく変化している。いや、業界が変化しているのではなく、利用者側の嗜好が変化し業界も変わってきた、というべきか…。とにかく今、キーワードは 1セントだ。

 日本では長らくデフレが問題となっているが、話をスロットマシンに限ればラスベガスも異常なデフレで、賭け金の最低単位が 1セントというマシンがここ一年で急増している。(右の写真は 1000万ドル以上が当たることで知られる "MEGABUCKS" 機の 1セント台。クリックで拡大表示)
 これまで 25セントもしくは 1ドルが主流だったことを考えると、この "デフレ率" は異常といえなくもないわけだが、1セントといえば日本の1円だ。なぜ今、1セントマシンなのか。
 今週は、大きなブームとなりつつあるそんな 1セントマシン、つまりペニースロットの話題を取り上げてみたい。(1セント銅貨の愛称が Penny であることから、1セントマシンは通常 Penny Slot と呼ばれている)

 スロットマシン製造の最大手 IGT 社の広報部によると、今年のペニースロットの生産台数は前年同月比で約 2〜3倍 (月によって多少差がある) のペースで伸びているという。
 また、ネバダ州当局が発表した統計として地元有力紙リビュージャーナルが報じたところによると、今年の第1四半期 (1〜3月) のネバダ州内でのペニースロットによる収益は 1億 9210万ドルで、これは前年同期比 114.4% 増と、倍以上のアップを示している。
 「第2四半期以降、この増加率はさらにアップしているはず」 (IGT社) というから、単なる一時的な人気というよりも、スロットマシン業界全体が大きなトレンドに乗り変革期に入っているものと思われる。

 ペニースロットといっても今ブームになっているのは、1セントコインを1枚投入してガチャンとレバーを引く昔ながらのマシンではない。ビデオ型の新世代マシンだ。
 ちなみに従来型のペニースロットは、とっくの昔に製造中止となり、すでにカジノから完全に姿を消している。数年前まで、ダウンタウンのプラザホテルのカジノが懐古的に従来型ペニースロットを何台か置いていたこともあったが (右写真、1999年撮影)、今はそれも撤去されてしまった。コイン管理の手間を考えれば撤去も当然だろう。

 それにしても今なぜペニースロットか。ブームの背景には 2つの技術革新がある。ひとつはビデオ化、もうひとつはキャッシュレス化だ。
 まずビデオ化についてだが、伝統的スタイルのスロットマシンでは、リールと呼ばれる回転ドラムが 3つないし 4つあり、それが機械的に回っているのに対して、今話題のビデオ型では LCD などのモニター画面に仮想リールが映し出されその映像が回転する (写真左)。
 ギャンブル、つまり勝ち負けという目的においては、実在するリールであろうが映像であろうがどちらでもかまわないわけだが、ゲームにバラエティーさを持たせ楽しさを発展させるという意味では両者の違いは大きい。

 ビデオ型ではリールの数や図柄マークを増やすことが簡単にでき、結果的に的中パターンの種類 (当たりとなる図柄の並び方の種類) を増やすことができる上、的中ライン (どこの位置に図柄が並べばよいかという的中対象となる図柄の位置関係。右写真の各色の線の位置がそれを表しており、この例では 9種類あることがわかる) も数多く設定することが可能になる。
 もちろん機械式でもリールを増やすことは可能だが、的中パターンや的中ラインまでも増やしてしまうと、その的中結果をプレーヤーにわかりやすく表示させることが困難なため現実的ではない。ビデオタイプでは、たとえば左下の写真のように変則的な的中ラインに並んだパターンまでも、わかりやすく色などで表示することが可能だ。

 次にキャッシュレス化についてだが、従来のマシンでは硬貨を投入し、勝てば硬貨が出てきてそれを換金所に持ち込む。25セントや1ドル硬貨ならその作業も理解できるが、1セントではそうもいかない。わずか 10ドルの勝ちに対して 1000枚もの硬貨を持ち運ぶのはどう考えても非現実的だ。
 キャッシュレスマシンでは、勝った分の払い戻しは硬貨の現物ではなく伝票で出力されるので使い勝手が非常によい。ここ数年で一気に普及したキャッシュレス化の波が押し寄せていなければ、今日のペニースロットブームなどあり得なかっただろう。(キャッシュレス化に関する詳しい説明は、この週刊ニュースのバックナンバー 398号に詳しく掲載)

 この 2つの技術革新によりペニースロットが出現したわけだが、人気の理由は何か。
 メーカーやカジノ関係者の話を総合すると結論は 「単純に楽しいから」 ということらしい。
 なぜ楽しいのか。それは的中パターンや的中ラインが増え (たとえば右写真の場合、的中ラインが 20ある)、的中率が劇的に高まるからだ。簡単に言ってしまえば、「回すたびに毎回何かが当たりそう」 といった楽しい気分でプレーできるというわけだ。
 毎回当たっていたのではカジノ側が儲からないような気もするが、そんな心配は無用だ。じつはペニースロットといっても、1セントだけ賭けてプレーしている者などほとんどいない。一度に数十枚賭けるのが常識で、メーカー側の話によると、統計では平均約 70枚賭けているという。そして各当たりの配当は必ずしも賭けた枚数よりも多いとは限らないのでカジノ側は損をしないというわけだ。
 たとえば 20ラインに賭けて、ほとんど毎回どれかのラインで当たりが出たとしても、その配当が 5枚とか 10枚というようないわゆる 「小当たり」 だったらカジノ側は損をしない。つまり、手持ちの資金は減っていっても、何かが当たっていれば楽しいというのが、やっている側の心理で、そのへんをうまく研究してハイテク利用で完成させたのが今のビデオ型ペニースロットということになる。

 ちなみに今主流のペニースロットは、少なくとも的中ラインが 20以上ある。つまりタテ、ヨコ、斜め、さらに変則斜めなど、いろいろな的中ラインがあるということだが、50ライン以上あるマシンも少なくない。
 何ラインに対して賭けるかはプレーヤーが自由に設定でき (左写真のようなボタンが用意されているのでそれを使って設定する)、1ラインにしか賭けなければ 1セントしか必要としないが、その代り、中央のラインに的中図柄が並ばないと的中にはならない。
 また、ラインの数とは別に、それぞれのラインに対して複数枚、たとえば 10枚まで賭けることができる (もっと賭けられる機種もある)。結局、20ラインに 10枚賭けたりしてしまうと (左写真で右端の赤と白のボタンを押した場合)、毎回 2ドル賭けていることになる。冒頭でデフレといってしまったが、それは最低単位の話であって、枚数という意味では超インフレだ。
 したがって、1セントだからといって油断していると、100ドルなどあっという間に負けてしまうので注意が必要だ。しかし、ちびちびと少額だけを賭けてプレーしていてもボーナスゲームやジャックポットの権利がない (ほとんどのマシンにおいて、ボーナスゲームやジャックポットは全ラインに上限いっぱいに賭けた場合にのみ権利がある)。悩むところだが、期待値的にはジャックポットなどの権利があった方が有利なので、一般的には上限いっぱいに賭けるのがセオリーとされる。

 最後に、ペニースロットと並び、マルチデノミマシンというタイプのマシンも急増してきていることを付け加えておきたい。
 これは、賭け金の単位 (枚数ではなくあくまでも単位) を自分で任意に決めることができるというマシンで、コイン1枚を 1セントに設定しても 10セントに設定してもよい (写真右)。これもキャッシュレス化が生み出した新たなトレンドといえるが、メーカー側の調査によると、この種のマシンの場合でも、結局はペニースロットとして利用されているという。つまり、単位は 1セントに設定し、たくさんの的中ラインに賭けるという者が多いということだ。
 いずれにせよ、今後は 「マルチデノミ型マシンのペニー設定」 という使われ方がトレンドになるだろうというのが業界の一致した見方のようだ。


バックナンバーリストへもどる