週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2003年 08月 27日号
ランス・バートン独占インタビュー at 寿司店
 今やラスベガスの顔とも言える 「マスターマジシャン」、ランス・バートン。
 モンテカルロホテル内の 「ランスバートン・シアター」 を会場に、毎夜、世界中から集まった観客たちを、華麗かつダイナミックなマジックで 「あっ」 と言わせている。
 そんな彼に今回、独占インタビューを試みた。会場となったのは、ストリップ地区からやや離れた位置にある静かな寿司店。ランスが親日派であることはよく知られているが、実は彼、大の寿司ファンでもあるのだ。

 午後7時の公演を終えたばかりのランスは、約束の時間ぴったりに指定の寿司店に現れた。ダンガリーのシャツにジーンズ、そして紺のブレザーという、スーパースターらしからぬ何気ない装い。しかも、自ら愛車、黒のコルベットを運転し、1人で登場したのだから、これには弊誌スタッフ一同も驚いた。付き人もマネージャーもボディーガードもなし。これはベガスを代表するスターとしては、異例と言っていいだろう。

 右手を上げて 「ハロー」 と言いながら、少し恥ずかしそうに向ける笑顔はステージそのまま。テーブルにつくと早速、われわれが渡した名刺を消し、耳の後ろから取り出すという、お得意のマジックを披露してくれた。スーパースター・ランスはサービス精神も旺盛だ。
 それでは、ランス好物の寿司を囲み、なごやかな雰囲気で進められたインタビューの一部始終をお届けすることにしよう。

大全: さっそくなんですが、毎年9月は日本からの観光客が一番多い月なんです。でも、日本の観光業界はテロ、戦争、SRAS やらであまり元気がない。今回はランスさんに集客を手伝ってもらおうかと思いまして。LV大全読者にラブコールを送って観光客をラスベガスに呼んでください。
LB: 9月って日本からの観光客、そんなに多いの? 今年は 2週間のバケーションをもらって休演だよ、9月 15日まで。

大全: えっ、なにそれ?! 去年もゴールデンウイーク、長期休演で日本人観光客を裏切ったのに。
LB: 去年は東京・名古屋・大阪公演に行ったのでラスベガスが休演になったんだ。でも今年は純粋なバケーション。日本のみなさんゴメンナサイ。

大全: じゃぁ質問に答えてファンにサービスしてください。読者からかなり鋭い質問がたくさん寄せられているんです。特にランスさんのショーを観た子供たちからいろんな質問が寄せられています。ハトやアヒルを毎日ちゃんと家に連れて帰っているのか、とか。シークフリート&ロイはトラと一緒に住んでいるとか言われているためか、ランスさんもハトと一緒に住んでいると思っている子供が多いんですよ。
LB: アハハ、劇場内に専用のオリがあるので家には連れて帰らないよ。

大全: ステージに登場する動物に名前は付いているのか、っていう質問もあります。
LB: 名前はもちろんちゃんとあるよ。「アヒル 1番」、「アヒル 2番」‥ってね(笑)。というのは冗談で、名前があるのはウサギのエルマーと、インコのエルビスだけ。彼らはスターだからね。

大全: マジックの練習は毎日するんですか。
LB: すでにショーに取り入れているマジックに関しては練習はしない。練習するのは、これから披露する新マジック。今日もショーが終わってからリハーサルをしたんだよ。もう 3年がかりで準備している新しいマジックなんだ。10月にはステージで披露できると思う。新しいマジックは常に考えているんだ。ショーを常にフレッシュなものにしたいからね。

大全: 他のマジシャンは、象やトラなど大きな動物をマジックに使うけど、ランスはどうして小動物しか使わないんですか?
LB: 大きい動物って苦手なんだ。怖いんだよ(笑)。以前、ロサンゼルスでやった子供向けのチャリティーショーで象に乗ったんだけど、あのときは怖かった。馬と違ってつかまるところもないし、揺れるし、どうしようかと思ったよ。でも、スポットライトが当たった瞬間、僕はシークフリート&ロイに変身したんだ (笑)
 注: と、ランスは謙遜するが、彼が象やトラなどの大きな動物をマジックに使わない本当の理由は、仕掛けの大きさで観客を驚かせるのではなく、テクニックそのもので勝負する、というポリシーがあるからだ (自動車は使うが...)。大仕掛けなイリュージョンを取り入れるマジシャンが多いなか、彼のような存在は稀有だと言えるだろう。

大全: ステージで突然消えて、客席の裏から突然現れるマジックで、舞台裏を走っている最中にころんだりしたことはないんですか? 事故やハプニングが起きたことはないんですか? っていう質問もあります。
LB: あの場面でころんだことはないよ。ハプニングなんて1度もないよ。なーんて、ウソウソ!(笑)。小さなハプニングは毎日のように起きてるよ。今晩だってショーで使っているアヒルがステージから落っこちちゃったんだ。でも幸い、お客さんは演出のひとつかと思ったみたいだね。
 かなり古い話だけど、ステージで大怪我をしそうになったこともあるよ。ハシエンダホテルに移る前のトロピカーナホテルでの 「フォーリー・バジェール」 に出演していたとき、立ち回りのシーンがあったんだ。その最中、僕が動きを間違えたために、パートナーの剣が顔面にバシッと当たってしまって、ステージ奥のカーテンの向こうに倒れこんじゃったんだ。あのときは痛いなんてもんじゃないかった。あまりの痛みに、顔がまっぷたつに割れたんじゃないかと思ったほどさ(笑)


大全: 日本での公演を観たことがないファンから、「ステージで消しちゃうコルベット、東京までわざわざ持っていったんですか?」 って聞いてきていますが。
LB: アハハ、あんなもんわざわざ持っていかないよ。

大全: じゃぁトヨタの車でもニッサンの車でもいいわけね。
LB: 次回の日本公演は日本車を使おうかな。

大全: ショーに美女が7人も登場するけど、どの娘と付き合っているんですか。
LB: それ子供の質問じゃないな (笑)。
大全: そう、大全スタッフの質問。
LB: いやだなぁ、一緒に仕事をする仲間とはデートはしないよ。ガールフレンドは現在募集中。日本に行って探そうかな?

大全: じゃぁ今度はおとなの読者からの質問をさせてもらいます。「広告塔の写真は 10年以上前に撮影されたものをまだ使っているんじゃないか? いつまであの写真を使うんですか?」 と。あの写真、たしかにすごく若く見えますが、あれを見たあとでショーを見た女性ファンはガッカリするかも (笑)
  (右の写真、クリックで拡大表示→)
LB: 10年前に撮影? だとしたら 1993年か...。 いやあの写真の撮影は 10年後、2013年だったよ。
(空間移動のマジックを得意とするカッパーフィールドに対抗してか、時間移動のボケを見せてくれたランスだが、答えはそのままうやむやにされてしまった。が、よく見るとこれは写真ではなくて絵かもしれない。)

大全: 劇場へは運転手付きの車で行くんですか。
LB: 自分で車を運転して行くよ。ドライブが好きなんだ。

大全: ショー終了後に、夜遊びはしないんですか。
LB: ほとんどしないね。お酒も年に1度、ニューイヤーズイブに飲むぐらいだから。僕は家にいるのが好きなんだ。
(ちなみに取材中、ランスが飲んでいたのはスプライト)。

大全: ギャンブルはしないんですか? やる時はやはりモンテカルロ?
LB: ギャンブルはしないよ。理由はね、勝っても 「マジック使ってインチキしただろ」 って言われちゃうし、負けたら 「それでも一流マジシャンか」 って言われるからね (笑)

大全: ラスベガスにはマジシャンが多く住んでいますが、彼らと交流はあるんですか。
LB: マジシャン同志の仲はとてもいいんだ。1カ月前にもシークフリート&ロイがショーを見に来てくれて、その後、一緒に食事をしたし、デイビッド (カッパーフィールド) とも、ゴルフをしたことがあるよ。

大全: 週 5日間のショーを続けるのには、かなりの集中力と体力が必要だと思うんですが、その秘訣は?
LB: モンテカルロでのショーは8年目、ラスベガスでマジックを始めてからはもう 21年になる。週 5日は大変だって? 昔は毎日やっていたんだよ。「フォーリー・バジェール」 に出ていた頃さ。週7日、毎日2回公演を2年間続けた。1日も休みなしでね。今思えば、若かったからできたんだろうね。その頃に比べれば、週 5日なんて平気。秘訣はないよ。ただやるのみ (Just Do It!) だね。

大全: 毎日、どんなスケジュールで活動しているんですか。
LB: 夜が遅いから朝は 10時半から 12時の間に起きるね。そのあとテレビのニュースを見て、コーヒーを飲んで、電話で仕事の打ち合わせをしたりしてプールでくつろぐ。週に 3、4回だけど、トレッドミルでランニング。スリムな体型を維持するために、これだけは続けているんだ。マジシャンにとって体は大切な道具だからね。劇場にはショーの2時間前には入るようにしている。1回しかショーがないときは、終了後、リハーサルなど、ショーのリニューアルの準備もする。2回ショーがあるときは、そのまま家に帰って寝るだけだね。

大全: 大の寿司好きということですが、一番好きなネタは?
LB: ホタテかな。それから、マグロ、ハマチも好きだね。寿司は日本に行って食べて以来、やみつきになったよ。週に1度は食べてるね。なんでも好き、苦手なのはウニだけ。
大全: そう来るだろうと思って、今日はランスが食べられそうもないグロテスクなものもオーダーしておきました (笑)。ハマチのカマの塩焼き、それにアンキモ。
LB: 何それ?
大全: ハマチの頭、それと海のフォアグラ。
LB: ハマチカマ? おいしいね、これ僕だけの分? それともみんなで一皿?
(ハマチカマはみんなで一皿だったはずだが、ランスがほとんど食べてしまった。アンキモも珍妙な顔をしながらも口に運んでいた)

大全: 最後にまじめな質問もしないといけませんね。モンテカルロとの契約は 2009年までと聞いていますが、その後の予定は?
LB: まだわからないけれど、田舎 (ケンタッキー州ルイビル市) に帰って、農場でのんびり暮らしたいな (注:ランスは故郷、ルイビル市に広い農場を所有している)。馬に乗ったり、牛を追いかけたりしてね。9月のバケーションでも、その農場に行く予定だよ。農場でくつろぐのが僕にとって最高に幸せなひとときなんだ。

大全: 日本での公演予定は?
LB: 去年はゴールデンウィークに日本に行って、東京、名古屋、大阪の3ヶ所でショーをやったけど、次の予定はまだ決まっていない。またぜひ行きたいと思っているよ。

大全: 最後に、日本のファンに一言。
LB: ラスベガスにぜひ来てください。僕のショーだけじゃなくて、「合法化された賭博」 っていう、とっても楽しい遊びがキミを待ってるよ (笑)

 ときに真剣に、ときにジョークをまじえつつ、南部なまりがかすかに残る独特の口調で、とつとつと語ったランス。まじめで飾らない人柄が、彼が口にする一言一言、一挙手一投足から、しっかり伝わってきたインタビューだった。富と名声を手にしつつも、パーティー三昧の毎日とも、派手なライフスタイルとも無縁な彼。ひたすら観客を楽しませることだけを考え、ステージに上る一瞬にすべてを傾けているのだろう。現れてはすぐに姿を消すマジシャンが多いなか、21年もの長い間、彼がベガスで活躍を続けているのも、そんなひたむきな努力によるものなのだろう。素顔のマスターマジシャンは、「マジック界の貴公子」 という異名からは想像できないほど、気さくでフレンドリーだった。そして彼は、我々はもちろん、寿司店のウエイトレスたちに1人ずつ 「美味しかったよ。ありがとう」 と声をかけると、黒のコルベットで闇に消えていった。


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