週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2011年 05月 04日号
利用するなら今しかない! さよならサハラ、59年の歴史に幕
 1952年創業の老舗カジノホテル・サハラ (写真右、クリックで拡大、5月3日撮影) が 5月16日をもって 59年の歴史に幕を閉じることになった。
 宿泊施設のみならず、すべての営業を打ち切るとのことなので、小額の賭金で楽しめることで人気だった 「1ドル・ブラックジャック」 (写真右下)も、豊富な展示物でカーレース・ファンから注目されていた 「NASCAR CAFE」 (写真 3枚目) での食事も、来週末までがラストチャンスということになる。なお、このホテルの看板アトラクションだった超高速の絶叫ローラーコースター 「Speed The Ride」 は、一足先に昨日閉鎖されてしまった。

 今回の出来事は非常に寂しい。90年代から老舗カジノホテルは次々と姿を消したが、それらはすべて新しく生まれ変わるためのものだった。
 たとえばマリーナ、デューンズ、ハシエンダ、サンズ、デザートインは、それぞれ MGMグランド、ベラージオ、マンダレイベイ、ベネチアン、ウィンといった今日のラスベガスを代表する大型高級ホテルに生まれ変わり、それに続くフロンティア、スターダストの消滅も、リーマンショック以降の不景気でその後の建設計画こそ頓挫あるいは中断になってしまったが、あくまでも新たな計画に基づく前向きの爆破解体だった。
 ところが今回のサハラは具体的な計画がまったくないままの閉鎖というから、これまでとは話がまったく異なる。このまま営業を続けていても採算が取れず、だからといって巨額を投じて建て替えるほどの市場環境にはない、というのが閉鎖の理由らしい。

 ここ数年、客室需要に対して供給が多すぎることが問題視されていたにもかかわらず、ヴィダラ、アリア、マンダリンオリエンタル、コスモポリタンなどの新設ホテルが次々とオープンしたため、サハラの苦戦は当然の成り行きと言えなくもない。
 一泊 25ドル前後という極限に近い価格設定で新設ホテルに対抗したものの客室が埋まらず、一昨年から自身の客室供給量を減らすために部分的な閉館も試みたが、それでも知名度の相対的な低下や老朽化が目立つ老舗ホテルにとっては、この厳しい市場環境に打ち勝つことはできなかった。
 新たに建て替えての再出発も現実的でないことは、前述のフロンティアやスターダストの現状を見れば明らかで、今回の結論はやむを得ない選択肢だったにちがいない。

 ちなみに現在ストリップ地区には、このサハラと同じような価格設定で苦戦を強いられているホテルがいくつかある。インペリアルパレス、サーカスサーカス、ストラトスフィア、フーターズ、リビエラなどだ。(右の写真はサハラの正面玄関前)
 インペリアルとサーカスは巨大ホテルグループの中で運営されているので体力があり、ストラトスフィアもラスベガスで一番高いタワーという目玉商品を持っているので集客においてサハラよりは有利な条件にある。フーターズもサイズ的に小さいため消耗戦に対する体力は多少ありそうだ。
 そういう意味ではサハラの次に閉鎖の危機に直面しそうなのはリビエラではないか。すでにフーターズもリビエラも資金的なトラブルや債務不履行騒動を起こしているので、今回のサハラのあとを追う形でリビエラが閉鎖を発表してもだれも驚かないだろう。

 話が他のホテルに行ってしまったが、現在のサハラがどのような状況にあるのか、実際に体験宿泊してみた。
 気のせいかカジノやレストランなどには哀愁が漂っていたが、まだ十分に使えるといった感じで、閉鎖はもったいないという印象を受けた。
 客室内のコンディションも、調度品の老朽化を気にしなければ決して悪くはない。純白のベッドカバーなどはきちんと清潔に保たれており、テーブルやタンスに歴史は染み付いていても、リネンに汚れは染み付いていない。

 カード型ルームキーは、これまた純白で、ホテル名も何も入っていない完全な無地。常識的には見かけない変則的なものだが、これはご愛嬌といったところか。たぶん、在庫がなくなってしまったが、今さらホテル名を印刷したキーを作る気などないということだろう。(写真はルームキーの裏と表)
 すでに閉鎖されている館内ショップなどがあるためか、廊下やエレベーター内の宣伝広告が無造作に取り外され、そのまま放置されているところも、あまり見慣れない光景だ。

 ということで、見苦しい部分が多少散見されるかもしれないが、滞在において特に支障はないはずだ。あと何日も残されていないが、この時期にラスベガス訪問を計画しているリピーターは、過去の繁栄を偲びながら宿泊し、サハラの最後を見送るというのも悪くないだろう。
 ちなみに宿泊料金はこのホテルの公式サイトで平日35ドル前後、日本語エクスペディアで 2200円前後。それに12%のホテル税、さらに 6ドルのリゾートフィーがチェックイン時に必要となる。(リゾートフィーに関しては、バックナンバー703号に掲載)

 なお、館内の劇場で開催されてきた人気マジシャン・リックトーマスのナイトショーは、会場を別のホテルに移して継続されるとのことなので、ファンにとってはひとまず安心だ。
 といっても、新たな移転先は経営の継続が心配される前述のリビエラ。とりあえず 7月1日をめどに公演再開することになっているが、またすぐに移転という事態にならないことを祈りたい。
 もうひとつ気になるモノレールのサハラ駅については、利用者の激減が予想されるが、今まで通り引き続き利用可能とのこと。ただ、そのモノレールを運行している第三セクターの経営状況が極度に悪化してきているため、今回のサハラの閉鎖とは関係なく、今後の運行を危ぶむ声もある。

 ホテル市場の需給バランスが改善したら営業再開もあり得るとの楽観論もあることから、爆破解体の話はまだ持ち上がっていないが、営業再開は現実的にはむずかしいというのが業界関係者の一致した見方のようで、近い将来さら地にして売却するのではないかとの噂もある。
 いずれにせよ、営業中のサハラを見ることができるのは来週がラストチャンス。思い入れがある者はぜひ足を運んでみるとよいだろう。最近の大型高級ホテルでは味わうことができない、59年の歴史の重みというものを感じ取ることができるはずだ。


バックナンバーリストへもどる