週刊ラスベガスニュース バックナンバー   2001年08月29日号
"クジラ保護法"、立法化へ向けて大きく前進
 ラスベガスでホエール (クジラ) は神様だ。数に限りがあるその貴重な存在は、海から遠いラスベガスでも手厚く保護されている。
 しかしクジラはラスベガスが好きではないようで、海があろうがなかろうが、ヨーロッパやオーストラリアの方が住みやすいという。

 8月 27日、関係者らによって一年以上続けられてきたロビー活動 "Save the Whales" (クジラを救え!) がやっと実を結び、"クジラ保護法" の骨子が明らかになった。ちなみにラスベガスで "ホエール" といえば超高額のハイローラー (大金を賭けるギャンブラー) のことだ。

 ラスベガスの各カジノホテルのホエールたちに対する "保護" は半端ではない。ディナーやナイトショーなどは言うに及ばず、リムジンでの空港送迎 (写真右上) やスイートルームの無料提供、さらには小型専用ジェット機での送迎やファーストクラス航空券の進呈まで、ありとあらゆるサービスを無料で提供している。それでもホエールたちはラスベガスよりもヨーロッパやオーストラリアのカジノの方がいいという。
 理由はプライバシーの問題だ。ホエールたちが本当に欲しいのは無料ディナーでもナイトショーチケットでもなくプライバシーだという。

 彼らの多くは芸能人であったり政治家であったり著名な実業家であったりする。ただでさえマスコミの標的になりやすい彼らがラスベガスで大金を賭けていようものならすぐにフォーカスされてしまう。フォーカスが廃刊になろうがカジノ内が撮影禁止であろうが、パパラッチたちが著名人のゴシップを追い続けるのは世の常で、結果的に逃げ場を必要とするホエールたちは密室でギャンブルを楽しむことができるモナコやオーストラリアへ行ってしまう。

 じつはラスベガスではネバダ州の法律で、「いかなるカジノも万人に開放されていなければならない」 ことになっており、いわゆる個室カジノと言われる "Private Gaming Salon" は禁止されている。これは、不正の温床となりやすい密室ギャンブルに断固反対の立場を取ってきたネバダ州が作った立派な法律で、ラスベガスが世界に誇るべきフェアプレー精神の象徴と言ってもよいだろう。
 したがって現在ラスベガスではどこのカジノにも "ハイリミットセクション" と呼ばれる高額ギャンブラー用のセクションは存在していても、そこは万人に開放されており誰もがアクセスできるようになっている。つまり "ホエールウォッチング" は誰もが自由にできるというわけだ。
 しかし皮肉なことにこのフェアプレーを目指す法律の存在がホエールたちをラスベガスから遠ざける結果となってしまっている。

 そこで客を他の都市に奪われたくないカジノ関係者や地元選出の政治家らはこの一年 "Save the Whales" を合言葉にホエールの流出対策を検討してきた。ようするにフェアプレー精神の踏襲も重要だが、ラスベガス経済が停滞してしまっては元も子もないというわけだ。
 そして関係者の努力が実り、ついにこのたび当局も重い腰を上げることになった。 "クジラ保護法" とも言うべき "Private Gaming Salon 解禁" のための立法化を前提としたタタキ台が発表されたのである。以下がその内容だ。

 個室カジノを開帳したいカジノホテルは事前に当局に申請し許可を得なければならない。

 あらかじめ許可を得ているカジノは、1プレイに $20,000 以上 (スロットマシンの場合は $500 以上) を賭けることができる者に対してのみ個室カジノを提供できる。

 個室カジノの現場には監視カメラを設置し、ネバダ州 Gaming Control Board の事務所でその映像を任意にチェックできるような体制を整えておかなければならない。

 プレーヤーに個室カジノを使用する資格があるかどうかの審査基準は財力でのみ判断しなければならず、人種、国籍、職業、年齢、性別などで判断してはならない。

 プレーヤーの財力を確認するための審査基準は流動的なものではなく、あらかじめ決められた客観的なものでなければならない。

 カジノ側がプレーヤーに対して個室カジノの利用を拒否することになった場合、その都度その理由をネバダ州 Gaming Control Board に報告しなければならない。

 プレーヤーは個室カジノに家族などを同伴して入場することは可能だが、同伴者で一緒にプレーすることが許されるのは最高3人までで、また同伴者プレーヤーの賭け金は最低 $500 とする。

 個室カジノは客室内に開帳してはならず、また客室内から公共の場所 (ホテルの廊下など) を通過せずに直接アクセスできる位置関係にあってはならない。

 これまでのフェアプレーに対する哲学を最大限尊重しながら作られたこの法案はなかなかよくできているといってよいだろう。立法化までには多少の曲折があるかもしれないが、廃案になってしまうことはないだろう、というのが関係者の一致した見方だ。
 なお、9月 25日に再度カジノ関係者らを交えた公聴会が開かれ最終的な意見調整がなされることになっており、$20,000 という数字も含めた上記条件は多少変わる可能性がある。

 これで野放し状態だった "ホエールウォッチング" を嫌ってラスベガスを避けていたクジラたちがラスベガスに戻ってくる可能性が出てきた。美川憲一やハマコーがこの層に該当するのかどうか知らないが、日本でもこのニュースを朗報とする者が少なからずいることだろう。
 なお、個室カジノが解禁されたとしても今回の法案は "一張り 2万ドル" というプレーを一般大衆に見せたいプレーヤーの希望を奪うものではないので、そういう者は従来通りのハイリミットセクションや雑踏の中でプレーすればよい。個室でひっそりプレーするか、ギャラリーに囲まれながらプレーするか、それはあなたの自由というわけだ。


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